熱意のある者は認められる

私はデパートの屋上でアルバイトをしている。

週一回着ぐるみショーが行われていて、そのイベントのお手伝いが主なお仕事だ。

今日もたくさんの子供たちが来て大盛り上がりだ。



子供たちと触れ合うのは好きなんだけど、このお仕事は大変。

特にチーフの山岡さんが嫌味な人で、いつもネチネチ文句をつけてくる。

プライベートの面でもいい噂は聞かなくて、同僚の子はみんな目の敵にしている。



ショーもようやく終わり、今日もまた山岡説教タイムの始まりだ。

こってり１時間絞られたが、延長分の給料はない。

なんだか嫌になってきたなあ。



「おいおい、なにしょぼくれてんだよ。」

落ち込む私に話しかけたのは先輩のよしこさんだ。

先ほどまで一緒に怒られていた。



「落ち込むのは勝手なんだけどまだ仕事は終わってないんだよねぇ、ちょっと手伝ってよ」

「延長手当は？」

「ねえよ！・・・ジュースくらいならおごってやるから」



私が頼まれたのは干した着ぐるみの埃を叩くこと。

このぐらいなら自分でやればいいのに。



「ストレス溜まってんだろ。思いっきり叩いて吐き出しちまえ」



なるほど、よしこ先輩心配してくれてたのか。

ここはお言葉に甘えて、思いっきりやってしまおう。

何故かいつもの埃叩きではなく、鉄パイプに変わっている。

ふふ、楽しみだ。



ベンチで座った体制で置かれているトラの着ぐるみ。

私はその腹に思いっきり鉄パイプを叩きつけた。



ゴン！



今のはなかなか手応えがあった。

私は調子に乗って、何度も何度も叩きつけた。

山岡め、山岡のくせに、不倫野郎、若ハゲ！

・・・・・・・・・。



ふぅー、すっきりした。

「お、おつかれさん！はい、これポカリ」

私はよしこ先輩にジュースを渡され、そのまま帰った。

安い口止め料だな、でもまあ共犯かな。



翌週バイトに行くと、よしこチーフに軽く叱られてしまった。

ぬいぐるみを強く叩き過ぎようで、ウサギに変わっていた。

このバイトを辞められなくなったが、まあ楽しくなったからいいや。