ウミガメのスープ　ZERO

或る女の日記より抜粋

「

○月○日

今日、乗っていた船が遭難してしまった。

今は、救命ボートの上でこの日記を書いている。

折角の家族旅行だったのに・・夫と息子が無事だったのがなによりだ。



○月○日

運よく無人島に流れ着いた。

食料が心配だが、きっと大丈夫。神様が助けてくれる。

漂着したのは、私と夫と息子、夫の友人の四人だ。



○月○日

まだ助けが来ない。



○月○日

食料があとわずかだ。

息子の体調が悪化していくので心配だ。



○月○日

息子が死んだ。

息子は浜辺に埋めた。

夫の体調も悪化していく、心配だ。



○月○日

夫の友人がウミガメのスープを作ってくれた。

とても美味しかった。

なんでも、浜辺にウミガメがいたので捕まえて料理したらしい。



○月○日

あのウミガメのスープは、息子のスープだった。

夫の友人が浜辺を掘り返したらしい。

あの男が正しい事は分かる、でも、息子を美味しいと思ってしまった自分が許せない。。



○月○日

もう生きていたくない。

幸い、夫はこの事をまだ知らない。

私もスープにしてもらおう。

愛する息子よ、ママももうすぐ行くからね。

」











数年後、あるレストランで夫はウミガメのスープを飲み、友人宅を訪れ、この日記を渡された後に自殺する事になる。