感謝故に

こ

の家、実は窃盗団のボスと、５歳になるその息子の家である。



盗品の取引を前に、自宅の宝石ケースで一時的に保管していたのだが、５歳の息子がやらかしたのだった。



取引の前日、宝石の確認をしていたボスが気づく。

一番高価な宝石をはじめ、いくつかの石がなくなっているのだ。



たまにいたずらをする息子に、ボスが尋ねる。



「おい息子、この箱に入れてあった綺麗な石はどうした？」



「せんせえの人形にくっつけてあげたぁ」



よりによって息子は一番価値のある宝石を、紙ねんどの人形にくっつけて、大好きな先生にプレゼントしてしまったのだった。



「バカヤロウがぁぁぁぁッ！この箱の中身は触るなって言ってただろうが！」



「だってせんせいがぼくをほめてくれたんだもん！！」



褒めてくれてのがうれしくて、感謝故にあげちゃった、ということだった。



仕方なく窃盗団は、幼稚園に忍び込んで宝石をガラス玉にすり替えるという手間をかけたそうだ。