嘘　第二幕

Ａ．

虐めによる自殺。



少年は耐えていた。

幼稚園、小・中学の12年間、耐え続けてきた。

「●●ちゃんは病気なの。伝染るといけないから仲良くしてはダメよ」



少年は軽い自閉症だった。

ほとんど普通の生活には問題無かった。

馬鹿な親達の無知と無恥が引き起こしたイジメだった。



少年はひたすらに堪えた。

家でも、学校でも、笑いつづけた。



時に振るわれる暴力も、体育や休み時間での自分の不注意と、嘘をつきつづけた。



「何にも無いよ、大丈夫。楽しくやってるよ」



くだらない嘘を鵜呑みにする奴らに屈するようで、何が何でも親や教師には知られないようにした。



(心配かけてたまるか。)



結果、擦り減った神経。いびつにこびりついた笑顔。



少年は限界だった。



そんな状態で、卒業式の前日を迎える。



いつもよりも強く殴られた。

何度も、何度も、何度も。

そしてイジメの主犯格が言い放つ。

「お前、いつも笑いやがって気味が悪いんだよ！」



もう、イジメの当初の理由など、有って無いも同じだと、少年は悟った。



突き付けるとどめの一言。

「死んじまえ！二度と会いたくねぇ！」



少年の中でナニカが弾けた。

「うん、わかった」



主犯格によると、この時少年は口元に血を滲ませながら、今までにない渾身の笑顔を見せたそうだ。

すべての枷が外れた少年は、心からの笑顔で応えたのだろう。





翌早朝、少年は教室で首を括った。



今まで書き溜めた日記…12年に渡る全てを残して。



日記の最後のページはこう締め括られていたそうだ。



「今まで嘘をついてきてごめんなさい。



これ以上、お母さんにもお父さんにも、先生にも、××君(主犯格)達にも、そして自分にも笑顔という嘘はもうつきたくない。

もうつけないです。



嘘つきだった僕を許して下さい。



さようなら。」



気付けなかった担任は、教師を辞めた。

そして担任は少年の両親とともに戦いを始めたそうだ。



少年の日記を剣にして。



※これは一部を除きフィクションです。