時は遡り、まだ暑い夏の昼下がりのことである。
事務所では助手のレタス子がひとり留守番をしていた——。
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チリン...チリン...
「いやー風鈴はいいですねぇ。風鈴と蚊取り線香があればもう夏のレタス子は無敵ですよ」
ガチャ
「.......ささ。どうぞこちらへ。ちょっと散らかってますがね」
「あ、キャベツさんおかえりです......?その汚らしい中年男性は何者ですか?」
「ふふん。聞いて驚くが良い。なんと依頼人を連れて帰って来たのだ」
「なんと!やればできますねぇ!でかしたキャベツです!」
男の依頼は次のようなものだった。
最近家に届くようになった”謎の紙”の正体を暴いてほしい。
「早速ですがその紙を見せてもらえますか?」
「えぇ......これなんですが」
男が差し出した紙は真っ白で、一見何もおかしなところはない。
しかしキャベツは見抜いた。
「ふむ。......これは炙り出しですね。ほのかに果汁の香りが残っている」
キャベツがそう言って紙を炙ろうとしたその時。
レタス子がそれを遮った。
不審に思ったキャベツは再度鼻を利かせる。
そして紙を依頼人に差し向けこう言った。
「すみませんが。こちらご自分で炙ってみていただけますか?」
さて、キャベツはどうしてこのような行動に出たのだろう?
【ウミガメ】
皆さまありがとでした!
恋愛要素はありありですか?
のー!ねえですよ!
あぶり出しは危険だと判断しましたか?
のー!そうじゃねえです! [良い質問]
この事件は中年男性の自作自演ですか?
のー!中年男性はほんとに困って訪ねてきたですよ。
炙ったら良いことが起きますか?
の〜?良いことってのがちょっと漠然としてるですが...
ストーカーが犯人ですか?
のー!ストーカーは出てこないです。
紙は依頼人に向けただけであり、「炙ってみて」と言ったのはするめいかですか?
のー!持ってた紙を炙らせようとしたですよ。
実際紙はあぶり出しで文字が書いてありましたか?
いぇす!そういった普通の炙り出しの紙でした! [良い質問]
果汁の正体は重要ですか?
のー!全然重要じゃねぇです! [良い質問]
ドリアンの果樹で書かれていたので、加熱と共に臭いが爆発的に広がりますか?
の〜。果汁の正体は関係ないですよ。
紙からは果汁以外の匂いもしましたか?
のー!紙からは果汁の匂いしかしなかったです! [良い質問]
依頼者がライターやマッチを持っているかを確認したかったのですか?
いぇす!!さあどうして! [良い質問]
部屋にガスが充満してますか?
の〜。焼きキャベツになっちまうですよ。
キャベツの行動は事件解決のためですか?
いぇす!もちろん事件解決のためです!腐っても探偵です!
レタス子は嫌煙家ですか?
いぇす!煙草は吸わないですよ。 [良い質問]
11 依頼者が喫煙者かどうかを見極めようとしていますか?
のー!そうじゃねぇです!
もらいタバコをしようとしていますか?
のー!キャベツさんも煙草吸わないですよ。 [良い質問]
紙に書いてある内容は関係ありますか?
のー!!まったく関係ないですねこれが。 [良い質問]
タバコを吸うなら自分が、吸わないならレタス子が依頼を担当しますか?
の〜。そういうことじゃないですよ。
キャベツもレタス子も非喫煙者でありマッチやライターを持っていなかったので、依頼者が喫煙者であれば自分のマッチやライターを使って炙り出しをしてくれると思いましたか? [編集済]
いぇす!さすが天啓のQQSさんです!お見事です! [正解][良い質問]
【以下、ストーリー】
私の名は天啓のキャベツ。しがない探偵だ。
最近不思議と思い出すことがある。
今となっては昔のことだが、ある夏の日に起きた事件のことだ——。
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バッシャバッシャ!
プールは涼しくて良い。
私は屋上に作成したプールの経営権を主張し、今では探偵業との二足の草鞋を履きこなし多忙を極めた。
名探偵に悩みの種は尽きない......。
「あのぅ......」
「なんだ?水着なら一着200円で貸し出す」
「いえ、探偵さんですよね?あの、お仕事の依頼なんです......」
ガチャ
「.......ささ。どうぞこちらへ。ちょっと散らかってますがね」
「あ、キャベツさんおかえりです......?その汚らしい中年男性は何者ですか?」
「ふふん。聞いて驚くが良い。なんと依頼人を連れて帰って来たのだ」
「なんと!やればできますねぇ!でかしたキャベツです!」
依頼人の男性曰く、最近仕事を辞めてからというもの謎の白紙が家に届くようになったと——。
「で、その紙の正体を暴いてほしいと?」
「はい......」
「じゃあ早速ですがその紙を見せてもらえますか?」
「えぇ......これなんですが」
それは一見何の変哲もないただの白紙だったが、私にはピンときた。
「キャベツさん。これ、果汁みたいな良い匂いがしてるですね。炙り出しじゃねえですかね」
「何?ふむ。......これは炙り出しですね。ほのかに果汁の香りが残っている」
私は早速その白紙に火をつけようとしたのだが、レタス子がそれを遮った。
「なんだレタス子」
「......」
レタス子は無言で首を横に振り続けている。
静かなレタス子ほど不気味なものはない。
不審に思った私は今一度鼻を利かせると......仄かに煙たい。
「レタス子よ」
「なんですかキャベツさん」
「蚊取り線香を使ったんだろう」
「えぇ、使ったですよキャベツさん」
「マッチ、確かあと一本残ってたよな」
「それは今となっては昔の話。もう残ってねえですよ。キャベツさん」
レタス子は蚊取り線香が大好きだ。
そして私が出かける前、事務所にあったマッチの残りは一本だった。
誰も煙草も吸わないしライターも持っていない。
この事務所にガスコンロはないし他に火の元になるものはない。
そして無言で首を横に振り続けるレタス子——。
ついに天啓を得たり。
「すみませんが。こちらご自分で炙ってみていただけますか?」
「え、えぇ!?」
「いやね、どうやらこの事務所に火をつけるものがないようでして。あ、ライターとか持ってませんか?」
「いや、私も何も持ってないので......」
「......」
「......」
長い沈黙の後、依頼人の男はこう言った。
「あ、じゃあ家でやってみますね。ありがとうございました」
ガチャ......バタン......
「......レタス子よ」
「なんですかキャベツさん」
「何が書いてあったのか、気になるな」
「気になるですね。キャベツさん」
かくして難事件は幕を閉じた。
〜数日後〜
「あー暇ですね。ほんと仕事がない探偵事務所ですよ。毎日何やってるですかキャベツさん」
「私は多忙を極めているのだ。お前のような小娘にはわからんだろうがな」
「暇つぶしのキャベツさんですね。結局プールも維持費が払えないから撤去されちまいましたし」
「まあプールはまた作ればいいさ」
「あ、そういえばこの物語もこれが最終回だそうですよ」
「なに!?それよりレタス子よ。そういう発言は避けなさい」
「そういう発言とはなんですか?」
「そういうメッタなことは言うもんじゃありません!」
「......」
「......これは”滅多なこと”と”メタなこと”とをかけた天啓的ユーモアで」
「あー暇ですね。ほんと仕事がない探偵事務所ですよ。毎日何やってるですかキャベツさん」
夏も終わりに近づいたのか、最近は涼しい日が続いている。
この日は束の間の休息とでも言うべき、ゆったりとした時間を過ごしていた。
「そういえばキャベツさん」
「どうしたレタス子」
「こないだの炙り出しって結局何が書かれてたんでしょうね」
「あぁあれか。あれなら依頼人から手紙が届いたぞ」
「!!それ早く言うですよ!さあ教えるです!」
「どうやら彼も仕事を辞めて多忙を極めているようでな。何でもゲームを管理する仕事に従事していたそうだがそれを辞めてからというものああいった手紙が届くようになったそうだ」
「いや手紙の内容はどうでもいいですよ。炙り出しに何て書いてあったか聞いてるですよ!」
「ああ、えーとたしか......」
『
サンキュー、グッバイ、また会おう。
』
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最近も私は忙しい日々を送っている。
あれから一年は経つだろうか。
だが何故かあの事件だけは忘れられないでいる。
不思議と自分と無関係のこととは思えないと言うか——。
コンコン......ガチャ
「あのぅ、すみません」
「ん?あぁ。あんたはあの時の......」
さよならが永遠とは限らない。
諸君。サンキュー。グッバイ。また会おう。
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