私はミーナ・ライトティです。
紅茶をどうぞ。クロスグリのジャムも、むっ開かない、んー、えいっ! ……『開けゴマ』! やった! 開いた! どうぞ紅茶に入れてください。
それで、今回相談したいのは、師匠が遺した瓶のことなんです。
ついこの間、私の魔法の師匠マイ・スターシショは亡くなりました。ずっとそのままにしておく訳にもいかないので、師匠が魔法研究や魔法道具の発明に使っていたアトリエを片付けているところのですが、アトリエの机の上に、見覚えのない瓶が置いてあったんです。
師匠はイタズラ好きで、前からよく変なものの瓶詰めを作ってました。パッチンガムの剥製や、蓋を開けた瞬間作動するヒキガエル発生装置、飲むと笑いが止まらなくなる薬、全身の節々が軋み出す毒の霧、賢者の石の佃煮……。これまでは師匠が管理していたから良かったんですけど、これからは私が管理しなきゃなりません。
過去師匠が作った瓶の中身は全部、本人から聞いているので大丈夫ですが、机の上の瓶だけは中身が分からないままで。取っておこうにも売ろうにも捨てようにも、中身が分からないとどうにもなりません。でも、これまでの瓶のことを考えると、考えなしに開けてしまうのはちょっと怖いです。
ですから、お願いします! 瓶を開けずに、瓶の中身を突き止めてください。
※問題文中に「魔法」と出てくる通り、当問題はファンタジー設定の世界観です。非現実要素の登場が前提となっておりますので、ご了承ください。
※当問題は亀夫君形式の物当て(20の扉)です。ミーナは瓶の中身を知りませんが、ミーナにYESNOで答えられない質問をすることや、アトリエを探索することができます。
「あ、アトリエはそこの扉です。鍵は開けてありますので、調査はご自由にどうぞ」
【20の扉】
こんばんは、そして初めまして。私はアイオーンという不定形生命体です。早速ですがその瓶を水に入れると浮きますか?
試してみますね。…………うーん、ガラス瓶なので普通に沈みますね。
びんの中に何かみえますか?
黒に近い濃い緑色なので、中身は見えないんです。
ミーナさん、こんばんは。ゆりりといいます、宜しくお願いします(◕ ◡ ◕*) その瓶を振ると中から音がしますか?
ゆりりさん、こんばんは。いいえ、振っても何の音もしません。
マイ・スターシショサンはどうしてなくなったんですか?
お医者様のおっしゃるには、病死だったそうです。名前は忘れましたが、ほぼ確実に死に至る恐ろしい病だと言われました。 [良い質問]
あなたはどんな魔法ができますか?
魔女の弟子なのに魔法はからきしで……2週間前にようやく「開ける魔法」を習得したばっかりで、他の魔法は何にも使えません [良い質問]
ちなみにお師匠様はどんな魔法が使えましたか?
師匠はすごいかったですよ! もう、ほとんど何でも出来たんじゃないでしょうか! さすがに、死を覆したり、時間を戻したりはできなかったみたいですけど
マイ・スターシショさんが発明した魔法研究や新魔法、魔法の道具は、書物に記したりアトリエの中に置いてあったりしますか?
魔法の道具や発明品なんかはあるのですが、書物やメモのたぐいは一切ありません。師匠はとっても頭が良くって、物覚えもものすごく良かったので、メモやノートは全然書かなかったんです。本も、いっぺん読んだら中身全部覚えちゃうから手元に置く必要ないって言ってました [良い質問]
お師匠様は一連の瓶詰めを作る際は、どこから材料を調達していたかはご存知ですか?
さあ、知りません。あ、でも、亡くなる前の2週間、師匠はアトリエに篭りっきりでした。ですから、瓶の中には、外部から調達したものを入れたとは思えません。 [良い質問]
マイ・スターシショさんは亡くなる直前何をしていたか覚えていますか?
アトリエに篭りっきりだったので、何をしていたかは分からないんです。トイレなんかもアトリエに付いていたので、出てくることはありませんでした。さすがに心配だったので、食事は差し入れてましたけど
アトリエ入りましょう。
アトリエは、中央に大きめの机が一台あり、壁は沢山の棚で埋め尽くされている。棚には、様々な形の瓶が所狭しと並べられているだけでなく、魔法道具の素材らしきハーブや鉱物も置かれている。装飾性のないシンプルな机には、実験道具と瓶だけが載っている。 [良い質問]
ミーナさんは今まで「開ける魔法」で師匠作のビンを開けたことはありますか?
開けたことはありません。ただ、師匠が瓶に掛けていた「閉ざす魔法」は、「開ける魔法」で解除して瓶を開けることができるみたいです。 [良い質問]
瓶はどんな感じですか?
まず、黒に近い緑色なので、中身は全く見えません。また、軽くも重くもなく、振っても何の音もしないので、中身を類推できる材料がほとんどない状態です。
机の上のビンをよく観察する
気密性の高い薬瓶。黒に近い濃い緑色なので、中身は見えない。ラベルは特に貼られていない。
4 病気という事はなんらかの薬を服用していた事が考えられますが、それについて何か知っていますか?
薬……ごめんなさい、私は師匠が亡くなるまで何にも気付いていなかったので、分からないんです。
師匠は、ミーナさんが「開ける魔法」を使えるようになったことを知っていましたか?
はい、「開ける魔法」が使えるようになった時、「これで安心だな」って言ってました。簡単な魔法だし、まだこれしか使えなかったのに、何が安心なんだろう…… [良い質問]
アトリエに、師匠が残した日記や帳簿などはありませんか?
それどころか、筆記用具さえも置いていません。師匠は本当に記憶力が良かったので、メモもノートも、魔道書もアトリエには置いていません。 [良い質問]
机の上に実験道具がありますが、これは何に使うものなんでしょうか?
発明品を作ったり、実験したり……でしょうか。高度な魔法知識が必要らしくて、私には触らせてくれませんでした。
師匠には使い魔などはいませんでしたか?
そういう話は聞いていません。
師匠は筆記用具も紙も使わないということは、ミーナさんには口伝?で魔法を教えていたのですか?
はい、実際に魔法を使っているところを見せてもらった後、師匠に手順を聞きながら再現する、という習い方をしていました。師匠はそうやって全部の魔法を教えてくれる気だったみたいなんですけど…… [良い質問]
「開ける魔法」は習得が容易な魔法ですか?
多分そうだと思います。師匠も、アトリエに引きこもるちょっと前「簡単だから、これだけは絶対できるようになれ」って言ってましたから。 [良い質問]
12 念のため…瓶の大きさを教えてください。
底の広さは手の平に載るくらいでしょうか。高さは中指の先から手首の長さより少し短いくらいです。
師匠さんって薬とかを魔法で作ってしまうタイプですか?
いいえ、薬を作るのには材料が必要です。ハーブや鉱物なんか、定期的に採りにに行かされていましたから。
開ける魔法ってどうやってやったか覚えてますか?
頑張ってひたすら練習しました。皆さんの世界で例えるなら、逆上がりや自転車の練習みたいな感じでしょうか。
弟子になったのはどれくらい前ですか?
2年ほど前です。あ、でも、魔法の習得が進んでいないのは師匠のせいじゃないですよ! 私の物覚えが悪いだけです。
ミーナさんは、師匠亡き後もまだまだ魔法の修行を続けるつもりですか?
一人前にはほど遠いですし、仰るとおり修行を続けたい、とは思うのですが……。師匠はいないし、師匠は何にも書き遺さなかったから、読んで勉強するって訳にもいかないし……別の魔女に弟子入りするしかないのかな [良い質問]
師匠と最後に会った時に何か言われましたか?
何か……何か言っててくれてれば、こんなに困らなかったのに。というかそもそも、もっと生きてて欲しかったのに……師匠……。もっと一緒にいたかったよおー! 教わりたいこと、まだまだいっぱいあったのに! 私が一人前の魔女になるまで、みっちり鍛えるって言ってくれたじゃないですかあー…………。すみません、取り乱しちゃいました [良い質問]
時系列からしていたずら用の瓶詰めを作ったのはミーナさんが開ける魔法を覚える前でしょうか?だとしたらミーナさんに開ける魔法を覚えさせてから作ったその瓶詰めはミーナさんに贈る為の物が中に入っているかもしれませんね。
私への贈り物……? だとしたら、嬉しいです! ところで、具体的には何を私に贈ろうとしたんでしょうか? [良い質問]
「別れも告げず、何も言わず亡くなった」「一人前になるまで鍛える」この発言を信じるなら…まだまだ師匠は貴方を鍛えるつもりがある、のかも?
なるほど! 本当ならどれだけ良いことか! ……ところで、それならどうやって私を鍛えるつもりなんでしょうか? [良い質問]
15 自分がいなくなった後のミーナさんのことを案じて開ける魔法を教えてくれたのだとすれば、師匠はミーナさんに開けさせるために最後にこのビンを作ったのではないでしょうか?
私に開けさせるため、ですか? ……でも、師匠って結構、大ピンチに陥ってもふざけたりすることがあるんですよね。師匠の最期のイタズラだったりしたら嫌なので、中身が分かるまではやっぱり開けたくないです [良い質問]
魔力を瓶につめたのでは?
「魔力」は個々人の体に宿っているもので、それを体系化して生活に役立てる技術を「魔法」と呼ぶのだと、師匠は教えてくれました。だから、それなら師匠が詰めるのは魔力ではなく……
もしかしたら…瓶開けたら、出てくるんじゃないでしょうか?師匠
いえ、遺体はお医者様と一緒に確認したので、さすがにそれはないかと……
30 魔力ではなく?なんですか?
魔法の使い方や、これまでの自分の実験の結果とか、そういうものかなって。
師匠に筆記用具や紙が必要では無いとして、ミーナさんは筆記用具や紙をお持ちですか?
はい、自分用のメモ帳を持ち歩いています。でも、師匠がそれに触れたことは一度もありませんでした。
師匠の魔法の教え方から考えて、文字・紙を使わず一番近いことができるのは映像資料かなと思います。魔法を使う様子を実演したものとやり方を再現できるよう解説したものが必要です。この世界では機械や魔法を使って映像を記録することはできますか?
多分、できるんじゃないかと思います。機械の方は分かりませんが、魔法については師匠は何でもアリでしたから。 [良い質問]
「一人前になるまで鍛える」のに「資料の一つも残さない」のは不自然。となると、その瓶には「魔法」を習得できる何か、もしくは「魔法そのもの」が入っているのかもしれませんね。
そういうことなら、開けてみようと思います……! [正解]
そう唱えると、弾けるように蓋が飛び開き、ミーナの頭の中に映像が飛び込んできた。
赤ん坊の泣きわめく声、人の腕が迫ってきて、抱き上げられて動いた視界。
それは、誰かの記憶の追体験。人生が目の前で目まぐるしく過ぎていった。
ミーナがその記憶の持ち主に気付いたのは、視界の中に自分の姿が現れた時だった。
「立派な魔女になりたいんです、弟子にしてください!」
「ほう。修行は厳しいぞ。付いてこられるかな?」
「大丈夫。あんたが一人前になるまでに何年かかっても、あたしがみっちり鍛えてやるよ」
「開ける魔法が使えるようになったのか! やったな! すごいぞ! ……これで安心だな」
そこからの映像は、アトリエの机の景色だけになった。実験道具をいじったり、ペンを持って羊皮紙に文字を書いてみたり、食事をしたり。やがて、緑の瓶に「閉ざす魔法」がかかると、机の上の景色に変化はなくなった。
「ごめんな、ミーナ。
もっと色々教えたかったし、あんたが魔法を使えるようになる度に一緒に喜びたかったし、あんたに「もう一人前だ」って太鼓判押せる日をじっくり待ちたかった。
でもあたしには、時間も、それを捻り出す知恵も足りなかった。自分の知識を全部書き移す暇さえ無いなんて。
こんな乱暴なやり方して、悪いと思ってる。でも、師匠として何かをあんたに遺したかったの。
ありがとう、とっても楽しかった」
瓶の蓋が転がる高い音で、ミーナは我に返った。
アトリエにあるものが、さっきまでとは全く違って見える。薬草や鉱物を見れば何が作れるのか分かるし、謎の瓶一つ一つに込められた想いが胸に満ちてゆく。
「皆さん、ありがとうございました!
あの瓶には、師匠の記憶が入っていたんですね。教えきれなかった知識や知恵を紙に記録する時間はなかったけれど、それでも私に遺してくれようとした師匠の想い、ちゃんと受け取れて良かったです!
お礼と言ってはなんですが、棚に並んでいる中からお好きな瓶を差し上げます。どれがいいですか?」
ミーナ・ライトティ
魔女見習い。
魔法の腕はからきし。使える魔法は、『開けゴマ!』と唱えることで閉ざされたものを開けることができる「開ける魔法」のみ。
マイ・スターシショ(故人)
魔女。頭が良く、魔法研究や新魔法・魔法道具の発明が得意。イタズラ好きで、変てこな瓶詰めを作るのが趣味だった。
記憶力に優れており、本やノートを一切残さなかった。不治の病に冒されていた。
「Goodスープ認定」はスープ全体の質の評価として良いものだった場合に押してください。(進行は評価に含まれません)
ブックマークシステムと基本構造は同じですが、ブックマークは「基準が自由」なのに対しGoodは「基準が決められている」と認識してください。