山形刑事の妖怪退治六　～化け猫の怪～

山形「うむ……持ち出した資料によると、首筋に二つ並んで、牙のような傷跡があったようだ。飼い猫…イデノというらしいな…の唾液も発見されている」

山形「いや、滑りやすくもないし、床にものを置いていたりもしないな」

山形「遺体はうつぶせだったな。手？　手は糸ノコを持っているな」 [編集済]

山形「猫の年齢はちょっと俺には分からんが、ここ何年か買っているようだな。体調は至って普通。現在は署で保護しているが、環境が変わって落ち着かない様子だが、大人しくしている」

山形「窓などもあるが、玄関を含め出入り口は全て施錠されていたらしい」

山形「うむ、一人息子がいるようだな。県外に住んでおり、飲食店を経営しているようだ」

山形「うむ、木材を切り分けていたようだ。作業台に図面もあった。日曜大工が趣味のようだ」

山形「今朝方、家の前を掃除している姿を出勤途中のサラリーマンなどに見かけられているな」

山形「いや、家賃はきちんと月々支払っていたようだ。年金と夫の遺産、若い頃の貯金等で今は悠々自適に暮らしているようだな」 [編集済]

山形「うーむ………軽く聞き込みした限り、通勤などで人の通る朝方と夜間を除いては、人通りがないようだ。監視カメラもないし、ちょっとわからんな」

山形「いや、なかったな。さすがに自殺ではない、と思うが……」

山形「うむ………現場写真を見直してみたが、受け身をとった感じではないな。その場に崩れ落ちたような倒れ方だな」

山形「うーむ……写真で見る限り、『それっぽいかも』といった感じだな。ただ、イデノの唾液が頸部から、イデノの口元から血液が検出されたので、多分そうだろうと結論が出されたのだ」

山形「そこだ。そこをはっきりさせんのに上は事故だと決めつけたのだ。一応近くには作業台もあるが、ぶつかった痕跡は資料内には見当たらないな」

※完全に寝ぼけてましたごめんなさい。9番訂正してきます。

山形「近所の人とも挨拶を交わすし、気さくでいい人だったようだな」

山形「昼ごろだと推定されている。ちょうど人通りがなく、証言もない時間帯だな」

山形「県外なんで電話で聞いてみたが、お袋が死んだんだそれどころじゃない、と切られてしまった。かなり動揺していたな」

山形「鑑識の知り合いにそれとなく尋ねてみたが、スタンガンの痕跡ではないようだ。何か刺さったような跡だし、焦げ跡もないと」

山形「大家に聞いてみたが、家の鍵は二本有り、一つは家の中で発見され、もう一つは息子が持っているそうだが確認はできていない。ただ、合鍵を勝手に作られていても確認はできないそうだ」

山形「資料によると糸のこからは血液反応は出ていないようだ。ただ、イデノの行動に関しては俺もそうにらんでいる。発見当時も遺体のそばを離れようとしなかったしな」

山形「うむ、作業台はそんなに大きなものではないな。軽量で動かしやすいタイプで、高さは腰と同じくらい。被害者の身長は160㎝。年齢からすると割に背が高いと言えるかもしれないな」

山形「資料によると、イデノは発見当時飼い主のそばに寄り添っていたそうだ。交渉してみたら快く証言してくれるそうだ。何を聞こうか？」

山形「配達物について、だな」　伊勢屋「配達は一週間ごとなんですがね、配達物は一週間分の食料ですとか、日用品が切れたらその都度買われていましたね。日曜大工の工具や釘なんかもね、ちょくちょく買われていました。時間指定は特になかったですが、いつもだいたい四時半前後に配達させていただいておりました」

伊勢屋「ええ、ええ、私は鍋島のおばあちゃんには随分良くしてもらってまして、もう息子のように。猫好きだったのもあるんでしょうねえ、親父が大工だったのもあるんですかねえ。いつも配達のときにお茶も入れてもらって、ご贔屓にして頂いておりました」

山形「いや、写真で見る限りもう少し太い傷跡だな。俺にはとても猫の牙とも思えんな」

山形「棚でも作ろうとしていたのか、作業台の上には板が置いてあるな。握っていた糸のこで切断しようとしていたようだ。近くには他の工具もまとめておいてあったな」

山形「県外に住んでいて確認できんな。電話だとすぐ切られてしまうし。ただ、自動車で十分往復できる距離ではあるな」

山形「うむ、特に見られないな。検視でもそのことは述べているが、上は早く処理したいせいか無視しているな」

山形「写真を見ただけだが、そこまで鋭い感じではないな。資料によると錐も工具の中にあったようだが、血液反応などは出ていないようだな」

山形「ふーむ、そんな知り合いのいるお前さんもどうかと思うが、しかし突起物の付いた鈍器による撲殺、というのはあり得るかもしれんな」

山形「おっと、そうだった。大家も鍵を持っており、合鍵を作られていない限り全部で三つだな」

山形「うむ、俺もそこに疑問を抱いている。31のように何らかの鈍器で殴りつけた可能性はあるだろう。それによって頸部骨折、倒れ伏したとみているのだが……」

山形「丁度後ろから吸血鬼でも噛みついたような感じだな。背後から何らかの鈍器で殴りつけたらちょうどこのあたりになるだろう」

伊勢屋「いえいえ、目も耳もよくって、御年の割にぴんしゃんしてましてね、工具なんかの重いものもね、まとめてよいしょの一声で持ち上げちゃうんですから、ええ、元気そのものですよ」

山形「うむ、ないな。上層部が転倒死で片付けようとしているのは、他にこれと言った痕跡が見つからなかったからだ。まあ最近事件が多いんで、早く片付けたいのだ。犯行の痕跡が見つからず、猫の痕跡は残っている。撲殺だという主張では勝てんのだ」

山形「あまり連絡を取り合っている風でもなかったですねえ、あまり話題にも上りませんし。『あれ（息子さん）もあんたくらいしっかりしてたらねえ』とは仰ってましたが」

山形「うーむ、資料には特に書いていないな。保護しているイデノを確認に行ったが、特に何もついていないな」

山形「棚のようなものだな。たぶん本棚だろう。材木を切り分ける段階だな」

山形「特に変わったものはないな。食料品、洗剤、カーディガンも購入しているな」

山形「一軒家だな。それほど大きくはないが、趣味のいい家だ」

山形「釘、釘か。そこまで鋭い感じではないな。釘の頭の方で付けた傷ならありそうだ。傷跡はきれいに二つ並んでいるが、どうしてこのような形になったのだろうな」

山形「でしょうかと聞かれても断言はできんが……傷跡の間隔はそんなに広くない。鎹で殴るというのも想像しづらいな……」

山形「いや、まだ本当に切り分けている段階で、釘などが打ち込まれていたりはしないな」

山形「うーむ、俺は日曜大工には詳しくないが、何やらいろいろと置いてあるな。例えばどんな工具だ？」

山形「ふむ、釘抜き釘抜き………資料に記載されているな。ただこれからは血液反応も出ていないらしく、犯行に使われたものではなさそうだ。しかし釘抜きか、確かにその類で殴られれば……」

山形「む、そうだ、ネイルハンマーとかいうやつだな。ええと………………おかしいぞ！　釘の類は確かにあるのに、金槌の類が見当たらん。もしこの家に金槌の類がネイルハンマー一本で、そしてそれが犯行に使われたとすれば、消えた理由として十分だ」

山形「先ほどの釘抜きはいわゆるバールとして扱っている。まとメモにあるように、切り傷は切った刺したというより裂けたといった感じだ。出血自体も少なく、傷は浅い」

伊勢屋「ええ、ええ、勿論。私も愛用してるメーカーのものでしてね、力を籠めなくても振りやすくて、いいデザインですよねえ」

伊勢屋「工具を集め始めた最初のころにね、お買い上げいただきまして。もちろん私がお届けしました。私が愛用しているのと同じものなので、よく覚えていますよ」

山形「工具箱には鍋島光子の指紋だけだな。まとめておいてあるとはいえ工具がバラで置かれているから、実際に使っているのかは不明だな」

山形「うむ、ドアノブか……うん？　おかしいな。ドアノブには大家と伊勢屋の指紋しかないな。住人である鍋島光子の指紋がないぞ。どうやら本来あるものまで拭き取ってしまったようだな」

山形「ネイルハンマーさえ奴さんの所で見つかれば詰みだが、現段階では推測に過ぎんからな。令状もないから無理に調べられん。すでに捨てちまってるかもしれん。………とはいえ動機的にも一番怪しいのは息子だろうな」

山形「木屑木屑………うむ、資料によればゴミ箱からは発見されているが、床に関しては言及されていないな。恐らくこれも犯人が片づけたのだろうな」

山形「給油所は何か所かあるな。途中一度は寄るだろう。とはいえ、目撃証言があっても決定的な証拠にはならんな。まさかバカ正直にここに来たとは言わんだろうし。その時間帯このあたりは人通りがなく、犯人の姿を見たのは被害者と、居合わせた猫のイデノ位だ」

山形「資料によると、そのようなものは残っていないようだな。俺自身肉球をいじりながら確認したが間違いない。………………ふう。さて、堪能したところで調査に戻るか。っと、その前に埃取りを使っておくか」

山形「なるほど。必要ないところまで指紋を消しすぎたり、少し抜けているようだ。事件からまだ時間がたっていないし、着替えていなければまだ………それに車のシートも調べれば……」

山形「うむ、鑑識の立会いの下でブラッシングして調べてもらった。鍋島光子のものでも伊勢屋半左エ門のものでもない髪の毛が発見された」

山形「伊勢屋が鍋島光子から聞いた話によればまずほとんど帰ってきていないらしい」