お客様は死神です。

下に簡易解説があります。



動物園ラテラルパークの目玉は象のカメコである。

カメコは演技が上手い。

玉のり、鼻を使ってのお手、バク転など多彩な芸を持っている。

そんな彼らの住む国は戦争になった。

初戦は勝利に勝利を重ねていたのだが、いつの間にか敗退を続けるようになっていた。

そして、遂に本土が敵国の重爆によって爆撃されるにまでなっていた。



危険な猛獣の檻が爆撃によって壊れ、それらが脱走することを危惧していた軍部から、猛獣の殺処分命令がくる。

爆撃により興奮した象が外に出たら、嘗てこのラテラルパークに来た近辺の客が踏み潰される恐れがある。

園長のカメオは苦渋の決断の末にカメコに毒入りの餌を与え、殺す事とした。



しかし、食べないのだ。象は鼻が効く。それで毒入りの餌が分かるのだ。

とうとう、餌を与えずに餓死させることになった。日に日に痩せ衰えていくカメコ。そして、餌をやらなくなってからどれぐらい経ったか。活気の無くなった動物園。カメコの檻の前をふとカメオが通った。カメコの姿は見る影も無かった。思わずカメオはカメコを見ていた。すると、カメコはバク転を見せつけたのだ。

カメオはその姿に思わず涙を流した。彼は堪らず宿舎に駈けもどり、配給食を持って来た。カメコに食べさせる為だ。







しかし、カメオが戻って来た時、カメコは既に死んでいた。胃の中は空っぽであった。



それから暫くして、戦争はカメオの国の敗戦によって幕を閉じた。

ラテラルパークの片隅には、カメコの墓がある。







簡易解説

カメコは動物園の象である。

爆撃により、潰された檻から逃げたカメコがよく来ていた客である近隣の住民に被害を及ぼす可能性があるから。