山形刑事の妖怪退治一　～神隠しの怪～

木曽「し、知らねえ。俺が隠したんじゃねえよ！　ほんとだ！」

山形「うむ、そうだな」　……………。　「部屋の中を調べたところ、玄関にルミノール反応があった。どうやら拭き取ったらしいが………腹を刺されたにしては血痕が少ないな」

木曽「し、敷いてあったっつっても、玄関は一人立つのでいっぱいの狭いもんだし、玄関マットもなかったぜ？」　山形「うむ………特に何か敷いてはいないようだな。一応、部屋の間取りを説明しておくか」

山形「契約者は愛宕次郎、とあるな」　木曽「そ、そうだ。俺は愛宕がここに住んでいると知って、来たんだ」

木曽「う、そ、それはその………や、奴には借金があって……それで、払えなくなったんで頭にきて……」　山形「ふむ、何か隠していそうだな」

木曽「さ、刺してすぐにはっとして、逃げちまったから……」　山形「凶器についた血から判断するに、部屋から出るのも難しかっただろうな」

大家「ええ、ええ、私も普段いるわけではないんで、よくは知らないんですが、入居時の話ではご家族はいらっしゃらないと」　山形「緊急連絡先の番号にも電話してみたが、出ないようだ。いまのところよくわかっていない。木曽が隠していることを暴ければ、手掛かりになるかもしれんが……」

木曽「か、鍵？」　山形「おかしいな………ドアノブに指紋が残っていないぞ。外も、中もだ」

木曽「う、うぐ…………そ、その…………」　山形「愛宕を殺した……以外の犯罪が絡んでそうだな。部屋の中、あるいはこいつの家に他の犯罪の痕跡が残ってるかもしれんな……」

山形「大家から得られた情報では職業は個人経営の輸入業者、と名乗っていたらしい。交友関係を他の住人に聞こうと思ったんだが、どうも今住んでいるのは愛宕だけらしいな。いま市内で聞き込みをしているが、少々時間がかかりそうだな。わかり次第報告する」

木曽「そ、そんときは薄暗かったし、俺もマトモじゃなかったからはっきりとは覚えてねえが、たぶん、ポロシャツとジーンズだったと思うぜ」

山形「立地がいいわけでもなし、ぼろいし、というだけではなさそうだな。早速調べてみよう」　……………。　「ふむ、衣類程度しか見つからんな。うかつに物を置く性格ではないという事か………？　畳が一枚だけ、やけに荒く張られているな。玄関に接したものだ」

山形「ふむ……おかしいな。ルミノール反応、つまり血痕が玄関にあったわけだが、ちょうどこの畳の部分できれいに途絶えているな。この畳の張り方は素人だな。他のはきっちりと張ってあるんだが………畳の裏には特に何もなかった。畳自体はこのアパートで使用しているものだな」 [編集済]

山形「大家に許可を取って調べてみよう」　……………。　「見つかったぞ。隣の部屋だ。一枚だけ引っぺがされて、いい加減に放置されている。こちらは張りなおされていないな。ただ、この畳にはかなりの量の血痕が残っている。この部屋にはほかに血痕はないようだ」 [編集済] [良い質問]

山形「早速調べてみよう」　……………。　「かなり荒れた部屋だが、発見したぞ。シャブのパケとポンプ……覚せい剤の袋と注射器が見つかった。どうやらこいつを隠していたらしいな」 [良い質問]

木曽「そ、そんなわけはねえ！　た、確かにちょっとハイになってたけど、『一階一番奥の部屋』だったぜ！」　山形「隣の部屋もドアノブの指紋は拭き取られているな。愛宕の部屋には玄関にルミノール反応。隣の部屋には血のべったりとついた畳。どういうことだろうな」

山形「ふむ、はがされ、張り治された形跡のある畳は玄関すぐの一枚だけのようだ。入れ替えてみるとしっくりとはまった。総入れ替え、というよりは血の付いた一枚だけを隣部屋のものと交換したようだな」 [良い質問]

山形「仕切り、か………それらしいものも、痕跡も見当たらんな」

山形「調べさせてみよう」　……………。　「ふむ、見つかったぞ。駐車場にわずかだが血痕が発見された。拭き取られてはいないな」 [良い質問]

木曽「い、いや、俺一人だ。ヤクはもうねーし金はねーし、愛宕はすげなく切り捨てやがって、そんで、ふらっと包丁持って行ったんだ」　山形「嘘ではなさそうだ。そもそも共犯を買って出るような友人・知人の類はいなかったようだな」

山形「恐らく木曽は実際に愛宕の部屋、つまり一番奥の部屋で事件を起こしたのだろう。玄関に残るルミノール反応から考えてもな。畳についた血は拭き取ろうにも染みになり、しかたがなく隣の部屋のものと交換した、といったところだろう。誰がやったのかはまだわからんがな」

山形「大家に聞いてみたところ、この部屋も愛宕が契約していたようだ。確かに住人は愛宕だけだが、なんとなく大家に騙された気分だな。混乱しないように以降も事件現場を『愛宕の部屋』、血濡れの畳のあった部屋を『隣の部屋』と呼ぶことにする」

山形「他の地域と同じくらいにはあるな。もちろん大多数は信じちゃいないし、そもそも知らないやつもいる。つまり、普通だ」

山形「一応確認してみたが、愛宕名義で契約されているものはこのアパートではこの二部屋だけだった。他の部屋は未契約が長く続いているようだ。無断で使用されていた形跡もないな」

山形「うむ、窓から出入りができそうだ。………だが実際に使ったとなれば地面に足跡が残っていそうなものだが、痕跡はないな」

山形「うむ。検査結果が出たぞ。先端の状態から見て、骨には刺さっていないようだ。実際に刺さったのは半ばほど、およそ10センチといったところと推測される。ちなみに血液型はA型だった」　木曽「どこって、たぶん、その、へその上あたりだと思うぜ。あまりにもあっさり刺さっちまって、で、奴がなんかよくわからんことをぶつぶつ言いだしたんで、テンパって蹴り飛ばしたら引っこ抜けたんだ」　山形「即死でなかった可能性は高いが、しかし満足に動けたとも思えんな」

山形「うむ、報告が遅れてすまん。木曽の情報で大分調査が進んだ。愛宕次郎。36歳。AB型。個人の輸入業者を名乗っていたようだが、実際には麻薬の密輸や不法滞在者への仕事のあっせん、偽造ビザの手配などを行っていたようだ。ここはいくつかあるアジトのひとつのようだ」　木曽「うひぃっ、わ、わかったよ！　お、俺は木曽から覚せい剤を買ってたんだ。でも金もなくなっちまって、愛宕もこれ以上は負けてくれねえって、それで『朝方ならここにいるはず』だって思い出して、ここにきてやつを刺しちまったんだ！」 [良い質問]

山形「木曽は大して返り血を受けなかったようだな。蹴り飛ばした際に運よく血の当たる角度から外れたのだろう。廊下から木曽の足跡らしきルミノール反応が発見されたが、すぐに途絶えた。衣服はいくらか汚れていたがもう乾いているようだな」　※問題の不備です。

山形「うむ。愛宕の部屋、隣の部屋の畳、包丁、駐車場、廊下に残った木曽の足跡、これらは全て同じ血液だと推定された。A型だ。…………A型？　おかしいな」

木曽「さ、刺したのは確かだけど……なにせちょっとシャブでハイになってたし、『朝方』で薄暗かったもんだからよ………もし愛宕の部屋に誰か他の奴がいたってんなら……やっちまったかもしれねえ」 [編集済] [良い質問]

山形「うむ、止まっていないな。駐車場には他の駐車している車もないな。愛宕は自動車を所持しているらしいが………」

山形「愛宕の血液型は『AB型』だ。にもかかわらず現場や凶器に残っている血液型は『A型』なのだ。セキララ氏の意見が的を射ているかもしれん」

山形「今のところ不明だが、被害者が愛宕ではない別人であることははっきりしたな。愛宕に家族はいないようだ。家族以外で、愛宕本人のいない部屋の留守を守る人間、か。愛宕は確か偽造ビザなども売っていたな……」

山形「うむ……なにせ郊外で人通りもないからな。一応調べてみよう」　……………。　「見つけたぞ。近所の新聞屋がつい先日愛宕の部屋に勧誘に来たとき、出てきたのは愛宕ではなくアジア系の外国人だったらしい」

山形「恐らくある程度の時間をかけて流れ出した血の跡だろうな。被害者は刺された後この畳の上に倒れ、そのまま死んだのだろう。担架として使った形跡はないな…………む。何かの繊維が付着しているな。麻か何かだ」

山形「不法滞在者であろう外国人だ。そうそう病院には運び込まんだろう。一応裏のありそうな怪しい病院は調べてみたが、目撃証言はなかった。」

山形「ふむ、それは十分にありうるな。少し遠いが車で行ける距離に山がある。調べてみよう」　……………。　「目撃証言があった。登山客でもなさそうな男が大荷物で山に登るのを見た者がいた。その男の乗ってきたらしい車に関しての証言も、愛宕の車のものと一致した。」 [良い質問]

木曽「うん？　確かにこりゃ愛宕だ。間違いない。こいつから薬を買ってるんだからな………刺した時のことか？　顔は、正直わかんねえ。俺は愛宕を刺したもんだとばかり思ってたし、あん時は半分トんでたし、『朝方』で薄暗かったからよ。…………でも確かに、別人だったって言われりゃそうだったかもしれねえ」

山形「うむ、承知した。じきに愛宕の居場所も見つかるだろう。そして全ての謎が明かされるだろう」