【正解を創りだす】そして友もいなくなるか？【ウミガメ】

参加しますか？ [編集済]

ロイコクロリディウムは重要ですか？

サナダムシは美味しいですか？

ハリガネムシを換金しますか？

寄生蜂がドブに浮いていますか？ [編集済]

さぎょうは関係ありますか？

間に失礼しますか？

残り物は服だけでしたか？

唐揚げの中身が空っぽでしたか？

早々に退席しますか？

密輸に成功しますか？

鹿せんべいは重要ですか？

民衆の抵抗は無視できますか？

リチャードの息子は既に死んでいますか？

雨降ってジが固まりますか？

酩酊しているキャラはいますか？

夢遊病は関係ありますか？

抽選結果は発想をもって変わりますか？

炊飯器の中にご飯があることを忘れていましたか？

送りバントでホームに帰りますか？

忖度しますか？

上半身薄着の人は登場しますか？

逆立ちは重要ですか？

深刻なフォーラーネグレリア不足に悩まされますか？

「吝嗇」という字が読めませんか？

タロットカードは重要ですか？

足跡が消えていましたか？

チョコレートが溶けていましたか？

腕時計のところだけ日焼けしませんでしたか？

見せかけだけの平和に希望はありませんか？

自信ありに青ざめますか？

全身タイツはおしゃれに入りますか？

夜中に突然激痛で目覚めましたか？

落とし穴をほりましたか？

見返り美人図、君に決めましたか？

誤字を見つけましたか？

清純派女優だからですか？

口封じにアップルパイをねじ込みますか？

なめくじに活路を見出しましたか？

空を飛ぶにはクラクションが足りませんか？

大詰めに火を灯しますか？

未亡人はピアノの調律師ですか？

真っ赤なバラを裂きましたか？

液体窒素は重要ですか？

暑い日にはカーテンレールに限りますか？

バードストライクをバンドの名前だと思っていますか？

タバコが湿気っていましたか？

人間の体はタイムトラベルに耐えられるようには出来ていませんか？

マサチューセッツ州は言いづらいですか？

大根には味が染みていますか？

ゴールテープは干ぴょうでしたか？

リチャードは背が低いですか？

人工知能には勝てませんでしたか？

延滞料金がえぐいですか？

腕相撲でらせん骨折になりましたか？

かにばりますか？

ぬか漬けは絶対にコーヒーに合いませんか？

オリーブオイルが品切れでしたか？

頬っぺたで落ちましたか？

「日常の崩壊、崩壊している日常」

「ふむ…糠漬けか…どうやら日本からの密輸に成功した(4)らしいな…。」リチャードはそう呟き、一つをフォークで刺すと、それを口に運んだ。
「食糧不足のこの時代にしてはなかなかいい味じゃないか…だが…ぬか漬けは絶対にコーヒーに合わないな…(15)」そう言うと、リチャードは粉末型改良フォーラーネグレリアを飲み込んだ。

2984年。ゴールテープに干瓢が使われていた(14)くらい豊かだった30世紀前半と打って変わって、人類は慢性的な食糧不足に悩まされていた。そこで注目されたのが進化したサナダムシであった。2984年のサナダムシは非常に栄養価が高く、培養しやすくなっていたので、各国上層部は「サナダムシは美味しい(2)」というキャッチフレーズと共に広めようとした。 [編集済]

…が、お世辞にも味はとても食えたものではない。そこで、開発されたのが改良型フォーラーネグレリアだ。本来のフォーラーネグレリアは味や匂いを麻痺させ、頭痛や吐き気などを起こすアメーバだが、この改良型は副作用をなくし、味の麻痺だけを残したものだ。ヨーロッパを始め、アメリカやアジアにもフォーラーネグレリアとサナダムシは広がっていった。ただ、アフリカは気候が合わなかったのか深刻なフォーラーネグレリア不足に悩まされていた。(8)

リチャードはそんなアフリカへの食料の密輸を行う企業の幹部である。配達員からの叩き上げで、若い頃には口封じのために賄賂としてアップルパイ(この時代では極めて高級品である)を港の警備員の懐にねじ込んだり(11)、ライバル業者からの暗殺者を返り討ちにするために落とし穴を掘ったりもした。(10)また、リチャードの息子もライバル業者から狙撃されて亡くなっている。(5) [編集済]

ある日リチャードは元同僚の家へと向かった。リチャードが玄関でベルを押すと、同僚の妻だったアリスが迎えてくれた。彼女はピアノの調律師で(12)、一年前に夫を亡くしている。リチャードは様子を見にきたのだ。

「…あの人が亡くなってから一年ですか」 「…忖度します(7)」 暗い話も多かったが、多くの事を話し、ゆっくりと午後の一時を過ごした。ただ、彼女の出したコーヒーが偽造品らしく、とても飲めたものではなかったのでリチャードはこっそりと冷凍フォーラーネグレリア(裏のコネで手に入れた試作品である)を口に運んだ。 「あ…炊飯器の中にご飯があることを忘れていましたわ(6)…食べていきません？」 彼女はそういうと台所へ向かっていった。 リチャードはこれ以上変なものを食わされたくなかったので、早々に退席(3)することにした。

その日の夜、リチャードは突然激痛で目が覚めた(9)。どうやら、昼間に飲んだフォーラーネグレリアが、液体窒素(13)によって変性を起こしたらしく、頭痛の副作用が復活したらしい。病院へ送られ、一命を取り留めたリチャードだったが、これ以降、フォーラーネグレリアを口にすることができなくなった。 [編集済]

といっても、リチャードは食料をサナダムシに頼らなくていいほど儲けていたので、あまり生活に困ることはなかった。 ある日のこと、下層部からの報告書を見ていたリチャードはコーヒーを吹き出した。砂糖と塩を入れ間違えたのである。慌ててフォーラーネグレリアを探すリチャードだが、はたと動きを止め、自分がもう飲めないことに気がついた。そして、フォーラーネグレリアなしでは食べられないサナダムシについても考えたのである。アフリカの人々はそんな物を食べているのか…？リチャードは急に自分が贅沢をしていることを罪深く思った。

突然鳴り出した電話。慌ててリチャードは電話を取り、部下の報告を待った。が、聞こえてきたのは思いもよらない話だった。 アフリカへの支援基金を募っているという。サナダムシをフォーラーネグレリアなしで食わせるのは酷すぎないか、せめてフォーラーネグレリアを購入するだけの資金を分けてやろうという話だった。吝嗇家のリチャードだが、この日は少し変わっていた。 「…参加します(1)」 fin [編集済]

「交差する因果」

ある日。リチャード家のリビングにて。

「……しょっぱっっっ！！おい！マイク(リチャード家・息子)！」
「なんだい、父さん」
「お前俺のコーヒーに砂糖と間違って塩入れただろ！」
「……あ、いっけね、ごめん、でもそんなにしょっぱい？ちょっと飲ませて。
(ゴクリ)
うん、そんなに不味くないよ、こういう飲み物だと思えばむしろ美味い、野菜に合いそうだね」
「お前正気か……？」
「あ、これでぬか床作ってぬか漬け作るとかどう？結構イケそう」
「もう好きにしろ……絶対コーヒーとぬか漬けなんて合わないだろうけどな(15)」

数ヶ月後
「父さん、出来たよ、コーヒーぬか漬け、ちょっと食べてみてよ」
「仕方ないな……うぇっ！？不味っっ！！こんなの食うくらいならサナダムシの方がよっぽど美味いぜ！？(2)」
「そんなに？どれどれ……うぇぇぇぇ不味……」
「ほら見ろ、だから言ったんだ」
「うぅ、失敗か……」

その夜。

ダニエル(リチャード家・父)は突然の異常な頭痛で目を覚ました。(9)ダニエルの異変に気付いたアニー(リチャード家・母)はすぐに彼を病院に連れて行ったが、その後、病院で死亡が確認された。

医者「体内でフォーラーネグレリアが繁殖していたようです」
アニー「何ですかそれは？」
医者「致死性の頭痛を引き起こす細菌ですよ、旦那さんは最近何か変なものでも食べましたか？」

ーーー変なもの。

ーーーコーヒーのぬか漬けか。

ーーーだとしたら

ーーーマイクも危ない

「ごめんなさい先生っ！また後で！」
そう叫ぶとアニーは医者との面談を早々に退席し(2)マイクの待つ家へと急いだ。しかしーーー

アニーが家に帰るとマイクは既に死んでいた(5)。

まさかコーヒーのぬか漬けがこんなことを引き起こすなんて……アニーは絶望に打ちひしがれていた。すると突然、どこからかネチョネチョ、ネチョネチョと音がしてきた。アニーは音の出所を探し、そしてコーヒーのぬか床に辿り着いた。

ーーーまさか、フォーラーネグレリアがこの中に大量に……！？

ピアノの調律師であるアニー(12)の鍛え上げられた耳が、大量のアメーバの動きを捉えたのだ。

「と、とりあえず警察？取り合ってくれるかしら、でもこのままにしておくよりは……」

絶望の中警察に電話をかけるアニーの耳には、炊飯器にご飯を忘れている(6)ことを知らせる間抜けな電子音とフォーラーネグレリアのネチョネチョ音がいつまでも響いていた。

科捜研による捜査の結果、コーヒーのぬか漬けにはフォーラーネグレリアを爆発的に繁殖させる効能があることが判明した。この事件を受け、すぐに政府はすぐにコーヒーのぬか漬けを法規制し、一切の製造、所持、輸出入を全世界で原則禁止した。

悲惨な事件を巻き起こしたフォーラーネグレリア。しかしこの細菌を常食する民族があった。その名もラテ族。彼らは液体窒素で(13)フォーラーネグレリアを無毒化出来ることを知っており、無毒化したフォーラーネグレリアを食物に感染させて食べる、という奇妙な食生活をしていた。今やフォーラーネグレリアは彼らにとって生活必需品であった。
そんなラテ族は、近年の化学薬品の蔓延による深刻なフォーラーネグレリア不足に悩まされていた。(8)

何とかしてフォーラーネグレリアを補充しなくては……

「と、とりあえず警察？取り合ってくれるかしら、でもこのままにしておくよりは……」

絶望の中警察に電話をかけるアニーの耳には、炊飯器にご飯を忘れている(6)ことを知らせる間抜けな電子音とフォーラーネグレリアのネチョネチョ音がいつまでも響いていた。

科捜研による捜査の結果、コーヒーのぬか漬けにはフォーラーネグレリアを爆発的に繁殖させる効能があることが判明した。この事件を受け、すぐに政府はすぐにコーヒーのぬか漬けを法規制し、一切の製造、所持、輸出入を全世界で原則禁止した。

悲惨な事件を巻き起こしたフォーラーネグレリア。しかしこの細菌を常食する民族があった。その名もラテ族。彼らは液体窒素で(13)フォーラーネグレリアを無毒化出来ることを知っており、無毒化したフォーラーネグレリアを食物に感染させて食べる、という奇妙な食生活をしていた。今やフォーラーネグレリアは彼らにとって生活必需品であった。
そんなラテ族は、近年の化学薬品の蔓延による深刻なフォーラーネグレリア不足に悩まされていた。(8)

何とかしてフォーラーネグレリアを補充しなくては……

そんな彼らの耳に突如、コーヒーぬか漬け事件のニュースが舞い込んだ。
フォーラーネグレリアの大量増殖。彼らにとってこんなに素晴らしい話はない。
しかし彼らにはコーヒー製造の技術もぬか漬けの知識もなかった。そこでラテ族の男、カメオが立ち上がった。
「僕が何とかしてコーヒーぬか漬けを輸入してくるよ」
「待て！危険すぎる！コーヒーぬか漬けの輸出は世界中で禁止されているんだぞ！もしバレたら……」
「ラテ族のことわざにもあるだろう？『口封じにはアップルパイでも捻じ込め』(11)って。目的を達するには高級なアップルパイを捻じ込む程のリスクは負わないとね、じゃあ行ってくるよ」

村の為を思ったカメオの集中力と行動力は凄まじかった。カメオはコーヒーぬか漬け事件のあったウミガメ国に渡った。そして、コーヒーぬか漬けが負の遺産として世界で唯一保存されているぬか漬け博物館の下に巨大な落とし穴を掘ることで(10)建物を陥没しやすくしておき、ぬか漬け博物館ツアーに参加(1)して、仕掛けておいた爆弾を発破して建物を陥没させたパニックに乗じてコーヒーぬか漬けを盗み出した。

しかし問題はこの後、出国審査である。
ここで止められてはカメオの努力も水の泡となる。

税関。カメオにとっての最大の難関であるこの地で、2つの因果は交差した。
フォーラーネグレリアの大量増殖を聴力で見抜いたアニーはその能力を買われ、細菌兵器対策として税関職員として働き始めていたのだ。
しかも、因果とは不思議なものでカメオはアニーの担当する出国審査室に通されたのである。


アニー「この瓶は何？」
カメオ「なぁに、ただのぬか漬けですよ、妻が好きでね」
アニー「そう、だったら別に構わないけど……」

その時。

ネチョネチョ、ネチョネチョ

突如アニーの耳に悪魔の音が響いた。

アニー「！？……あなた、まさかその瓶、コーヒーのぬか漬けじゃないでしょうね！？」
カメオ「なっ！？そ、そんなわけ……」
アニー「はぁ……またこの音を聞く羽目になるなんて……実は私ね、昔コーヒーのぬか漬けで家族を無くしているのよ」

カメオ「！？まさかあなたはコーヒーぬか漬け事件の……！？」
アニー「えぇ、そうよ……フォーラーネグレリアの音はもう聞きたくない……」
カメオ「……職員さん、これは余談なんですがね」
アニー「……なに？」
カメオ「私の住む村ではフォーラーネグレリアは必需品なんです。ですがそのフォーラーネグレリアが今不足していて……僕が村の希望なんです。あなたが僕をここで止めれば……」
アニー「……」
カメオ「またフォーラーネグレリアが原因で人が死にます、僕の村の人々が。何故とは言いませんし、僕が持っているのはもちろんコーヒーのぬか漬けじゃないですがね」

アニー「……忖度するわ(7)」
カメオ「えっ？」
アニー「私は何も見てない。早く通りなさい」
カメオ「あ、ありがとうございますっ！！！」
アニー「あなたたち、自分達でフォーラーネグレリア作れないの？」
カメオ「？……はい」
アニー「夫の遺産が残ってるわ、これを元手にしてフォーラーネグレリア製造技術を確立しなさい。私にあの音を2度と聞かせない為にね」
カメオ「……なぜそこまで？」
アニー「なに、ほんの気まぐれよ、早く行きなさい」
こうしてカメオはコーヒーのぬか漬けの密輸に成功した(3)。カメオは村の特産品であるかんぴょうで作ったゴールテープで賞賛、歓迎された。(14)

アニーの募金によりフォーラーネグレリア製造技術を確立したラテ族は特例国際法によってフォーラーネグレリア製造を許可され、幸せな生活を送った。

募金をした理由をアニーはのちにこう語る。

「『口封じにはアップルパイを捻じ込め』って言うじゃない？私の為の満足のために他人にアップルパイ食べさせてあげただけのことよ。私は吝嗇家だからね、自分の利益の為にしか動かないわよ」

(fin)

「ケチな男は未来に何を見るか？」

「残念ながら我々では手の施しようがありません」
「そんな……そんな、それじゃクリストファーは！！」
目の前の息子、愛しい息子。
クリストファーの命は散りかけようとしている。
手術には大金が必要だ。けれど、そんな大金すぐに手に入るわけはない。

リチャードはその日から変わった。
息子の前では以前と変わらない優しい父親。
けれども裏では密輸に手を染め、忖度を受け（要素⑦）、悪事に手を染めた。
周りからはケチと揶揄され、それでも彼の思いは揺らがなかった。

そんなある日、息子の嫁であるピアノの調律師のジェニファーが儲け話を持ってきた。
彼女もクリストファーを助けるために必死なのだ。

『大食いサバイバル』
妨害、乱闘なんでもありの大食い大会。
その優勝賞金は1億ゴールド。これだけあれば息子を助けることができる。
リチャードは迷わず参加を決意した。（要素①）

当然、準備は事欠かないない。彼が用意したのはスーツケース。その中には液体窒素で冷凍保存された殺人バクテリア。（要素⑬）
ばれなければ何をやってもいい。彼の心には悪魔が宿っていた。

そんなリチャードの夢枕に悪魔が舞い降りたのは自然な成り行きなのだろう。
突然の激痛に目を覚ました（要素⑨）リチャードが目にしたのは赤い目をした美青年。
彼は悪魔だと名乗り、リチャードに契約を持ち掛けた。
『お前の過去の一日の記憶と引き換えに、時間を1分間分巻き戻すことができる』
記憶など安いものだと、リチャードは二つ返事で契約に乗る。これで準備は整った。


大会予選。
炊飯器の中にご飯があることを忘れるという痛恨のミスを犯すものの（要素⑥）
悪魔の能力を使いミスを帳消しにしたリチャードは無事決勝に進出。
代償は一年前、クリストファーとショッピングモールに遊びに行った日の記憶だった。
息子との記憶がなくなるのは辛いがリチャードにはそれを憂慮する余裕などなかった。

「お父様、これを」
「ああ、クリストファーのことは任せておけ」
ジェニファーからスーツケースを受け取る。
勝利は目の前だ。


「さあ、今年も始まりました。大食いサバイバル決勝戦！ 優勝賞金は1億ゴールド！」
大会が幕を開ける。
ルールは簡単、会場内にある食べ物ブース。
そこで食べた物の総量を競うのだ。

妨害、乱闘なんでもありの大会であるが、当然武器の持ち込みは禁止されている。
けれども密輸で培った技術により、リチャードは殺人バクテリアを会場内に持ち込むことに成功した。（要素④）
このバクテリア、殺傷力は極端に弱まった代わりに感染先の満腹中枢を的確に刺激するよう改良されたもの。
食べた瞬間からもう参加者は次を口には運べなくなるだろう。

リチャードは開始早々ブースに入っては早々に退席。（要素③）次々に回りバクテリアを仕込んでいく。
勘づかれたと思ったら能力を行使。目撃される前にアップルパイを口にねじ込み口をふさいでいく。（要素⑪）

「・・・・・・足りない」
当然持ち込める量には限度がある。
すべての料理に仕込む前にバクテリアはそこをついてしまった。（要素⑧）
これではうまく機能しないかもしれない。

でも、止まるわけにはいかなかった。
準備段階でかけておいた自己暗示によりサナダムシをおいしく平らげ、（要素②）
コーヒー片手に絶対に合わないであろう糠漬けも喰らいつくした。（要素⑮）
そして、大詰め。バクテリアの脅威を運よく回避した他の参加者を躱しながら
ゴールテープの干ぴょうに食らいつこうとした、その時。（要素⑭）

――ドスン

視界が揺らぐ。
気付いた時にはリチャードは他の者が掘ったであろう落とし穴の中に落ちていた。（要素⑩）
これが、最後。負けるわけにはいかない！


「巻き戻れ！！」
もう何度目だろう。すでに能力行使に抵抗感はなくなっていた。
一分前、落とし穴に落ちる前に戻ったリチャードは素早く落とし穴を回避。
見事、最初に干ぴょうに口をつけた！


「結果発表」
表彰台に上がるリチャード。これで息子は・・・・・・

けれどもその報せは最後に届いた。
「リチャード選手が一着にゴールインしましたが、コーヒーに砂糖ではなく塩を入れて飲んでいたことが発覚しました。
これはルール規定により失格となります、よって優勝者は2位の……」
自己暗示により味覚を操作していたことが仇となった。
けれどもまだだ。まだ、やり直せる。

「悪魔！　決勝開始前に巻き戻してくれ！」
「？ それだと2年分の記憶がなくなることになるぞ？」
「構うものか。さあ、早く！」
「了解した」


～～～～～～～～～～～～～～
「さあ、今年も始まりました。大食いサバイバル決勝戦！ 優勝賞金は1億ゴールド！」
そこには一人の男が立っていた。
男はこれから起こるであろう事象は丸々わかっていた。
故に、男が優勝をつかむことに何の不思議もない。

けれども男は不思議に思っていた。
どうして自分は未来のことが分かるのか、
そして、どうして自分がこの大会に参加しているのか。
男の記憶は2年前から今日まで丸々なくなっていた。
悪魔との契約も、息子の病気のこともその期間に知りえたことはすべて忘れてしまっていた。

男は優勝を手にした、賞金を手にした。
当然大規模な大会である。男のもとには取材が殺到した。
男は訳も分からないまま人々に囲まれ取材を受け続けた。
男が解放されたのは、次の年の大食い大会が開催された時のこと。
男は一年ぶりに家に帰宅した。

男が家に帰ると息子の嫁、ジェニファーが自殺していた。
そして傍らには息子クリストファーの死亡診断書。（要素⑤、⑫）
そこには聞きなれない病名が記載されていた。
そこで男は気づいたのだ。自分は息子のために大金を手にしようとしていたことに。
男は泣きはらした。



その後、男のもとには警察が訪れた。
過去に犯した犯罪が明るみに出たのだ。
もはや目的を失った男は素直に出頭した。

行き場を失った大金。
それを男は寄付することにした。
それは罪の意識故なのか、息子への贖罪なのか。それは男にもわからない。

【完】 [編集済]

思い出がいっぱいいっぱい

激痛で目が覚めた。【9】
デニーが掘った落とし穴【10】に落ちて、足首をひねったっけ。

小腹がすいていたので冷蔵庫へ向かう。
冷蔵庫の中身はほとんど空っぽだった。アイスコーヒーとぬか漬けくらいか。
寝るのに中途半端な時間なので、コーヒーを眠気覚ましに飲むことにした。
さすがに糠漬けは合わない【15】。代わりに砂糖を多めに入れて、朝まで我慢だ。
「……博士？」
振り向くと家政婦の海子がいた。

「どうしたんですか？　こんな時間に」
「ああ。冷蔵庫を見たんだがぬか漬けくらいしかなくってね」
「……ああ、すみません。炊飯器にご飯入れっぱなしでした【6】」
「おいおい、気を付けてくれよ」
「ごめんなさい。明日、お好きなものをお作りしますね。何がいいですか？」
「うーん、好きなものねぇ」
いきなり言われても思いつかない。食べ物、食べ物……
悩んでいると、昔食べたアップルパイを思い出した。
いたずらを黙っててほしいと言われ、デニーに強引に突っ込まれたっけ。【11】
「アップルパイがいいな。朝からなんだけど」
気が付いたらそう口にしていた。
「……」
案の定、海子はあきれていた。あんぐりと口を開けている。
「先生……」
顔色を変えず彼女は言った。
「サナダムシが美味しい【2】って本当ですか？」
私は飲んでいたコーヒーを吹いた。

「は？　何言ってるんだきみは？　ふざけてるのか？」
「自慢してたじゃないですか。寄食パーティーにただで参加した【1】って。
　輸入禁止の虫を食べて【4】意外といけたって」
「何の話だそれ！？　そんなもの食べるわけないだろう」
「私の前の仕事覚えてます？　調律師だったこと」
「え？　あ、うん。旦那さん亡くなって【12】できなくなったって、え？」
「……デニーがおみやげのかんぴょうをゴールテープに使ってた【14】のは？」
「や、そりゃもちろん覚えてるけど。ていうかあれは忘れようがないしな。
　……なあ、海子、いきなりどうしたんだ？」
「……先生、今日は機嫌がいいですね」
「さっきから何なんだ？　変な質問ばっかり」
呆れつつも何故か怒る気になれなかった。
海子の顔は穏やかだった。少しうれしそうに笑っているようにも見える。
どちらにしろ、今の会話の流れにはそぐわない。
何を考えているのかさっぱりだった。【7】

どうにも手持ち無沙汰になって、残っていたコーヒーを一気に飲み干す。
「――っぶっふお！！」
飲み干したそれを、私は即座に吐き出した。
「まず！！　塩かこれ！？　何でこんなものが……。
　デニーの仕業か？　全くあいつは――」

そこまで言って、私の思考は止まる。
あれ？　今まで飲んでたよな、普通に。何で何も思わなかった？
何故か動機が激しくなり、頭痛がぶり返してきた。
――ぶり返した？　
「先生！！」
慌てて海子が私に駆け寄ってきた。
「……私は」

そうだ、私は頭痛で目が覚めた。
足は平気だ。そもそもデニーが落とし穴を掘ったのはずっと昔の話だ。
何でそんな――
ずっと昔……デニーは……
「先生、大丈夫ですか！？　もう休んだ方が――」

「海子、君は誰だ？」

家政婦じゃない。家政婦がデニーを知ってるはずがない。
「デニーはもう死んでる。【5】10歳になる前だ。もうずっと前だ。
　家政婦が知ってるはずがない。
　――いや、そうじゃない。そんなことじゃない。


　どうして、私はわからないんだ？」


「何でわからないんだ？
　コーヒーに塩が入ってたのも、頭が痛くて起きたのも、
　デニーが死んでることも、君が誰かわからないのも何でなんだ？
　何で今までわからないことに気づかなかったんだ？」

「ええ。私は家政婦じゃありませんよ。」
海子の声は相変わらず穏やかだった。
「大体、あなたが家政婦なんて雇うはずがないじゃないですか。
昔っからケチだったのに」
「ケチ？　私が昔から？　」
「ええ。昔から。
　デニーがかんぴょうでテープを切った時、私は隣で縄跳びしてました。
　ピアノの腕を褒められたけど、結局挫折して。でもあなたに慰めてもらって調律師を目指しました。
　せっかく作ったアップルパイをあなたとデニーに食べられて。
　誕生日パーティだったのにすぐ部屋にこもってました【3】」
「……」
何故忘れていたのだろう。そうだ、この子がいたのだ。
私の家には、妻と、デニーと、


「お父さん」
娘がいたのだ。


「私に、何が起こっているんだ？」
自分の中の異変が何なのか、うっすらとわかり始めていた。
娘のことすら忘れていた自分。息子が死んだことを忘れていた自分。
「治療法が確立されていない、脳の病気です。
　フォーラーネグレリアの変種が抗体になる可能性があるそうですが、
　液体窒素の中くらいしか保存できないため、研究が進まないそうです【8】」
「今私が安定しているのは、本当にたまたまってことか……」
死に対する絶望は湧かなかった。感情すら病により失われているのだろうか。

「理解できるんですね」
海子はまた微笑んだ。今度は目に涙を浮かべて。
「さすがお父さんです。世界一の理学博士です」
「あいにく覚えていないんだ。どんな研究してたか。
　ケチだったこともね」
記憶はいつまでもつのだろう。いつまで考えていられるのだろう。
「私はどうすればいい？　お前のことをまた忘れるのか？
　あんなふうにまたお前を扱うのか？」
海子は私の手を取って、ゆっくりと首を振った。
「何も気にしなくていいんです。
　思い出してくれた。それだけで十分。それだけで奇跡です。」
「海子、でも私は……」
何か残したい。一秒でも多く。何かできることはないだろうか。
「ああ、そうだ――」

残された時間を使って、私は手紙を書くことにした。
死んだら検体として使ってもらうこと。
家と土地は娘に、資産の半分を貧しい国の子供たちに寄付すること。【問題文】
それから、家族へのメッセージを。
天国にいる妻と息子へ、もうすぐ会いに行くことを。
それから、ずっとそばにいてくれた娘との思い出を。
覚えていることを書けるだけ書いて、それから、最後に「ありがとう」と結んだ。

それから、海子に付き添われ、私は再びベッドに入った。
意識が薄れる。きっと最後だ。目蓋――重い。
海子がずっと――手握って――
ありが――

【完】
[編集済]