はい、http://sui-hei.net/mondai/show/31546にて開催していた正解を創り出すウミガメですが、誤って解説を出してしまったため急遽投票会場を新設しました。
【投稿作品一覧】
102【ある晴れた日の結婚式で】茶飲みご隠居
104 【5月7日放送『News is Next』原稿と所感】ロゴス=バイアス
107 【escape co2】 鎧の騎士
112 「旗野折部死す」 まりむう
内容は上記URLにてご確認ください。
【投票方法】
質問欄にて最も好きな解説(タイトルorその解説の始まりの質問番号をお書きください)と最も組み込むのが難しかった要素(要素の番号(質問番号ではありません)をお書きください)を投票してください。
なお、要素募集や解説投稿に参加していない方も投票いただけます。
あとで自分の投票内容が見られるのを嫌われる方は雑談欄の「出題者にのみ表示」機能でご投票ください。
投票例
解説:??(質問番号)【???(タイトル)】
要素:要素?番
投票は5月12日(金)23:59まで!
よろしくお願いします!
【投稿作品一覧】
102【ある晴れた日の結婚式で】茶飲みご隠居
104 【5月7日放送『News is Next』原稿と所感】ロゴス=バイアス
107 【escape co2】 鎧の騎士
112 「旗野折部死す」 まりむう
内容は上記URLにてご確認ください。
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解説:??(質問番号)【???(タイトル)】
要素:要素?番
投票は5月12日(金)23:59まで!
よろしくお願いします!
17年05月08日 00:37
[滝杉こげお]
【新・形式】【闇スープ】
【新・形式】【闇スープ】
結果発表!
それでは、結果発表です!
皆様ご参加ありがとうございました!
まずは最難関要素賞です。
最難関要素は……
第四アルカ騎士団さんの「垂直に4m飛び上がります」です!!
第四アルカ騎士団さん、おめでとうございます!!
人間業では到底無理。使うのに工夫が必要とのことでした。
続きまして、最優秀作品賞です。
今回は皆様が一作ずつの投稿なのでこの賞の受賞者がシェチュ王となります。
最優秀作品賞は……
ロゴス=バイアスさんの【5月7日放送『News is Next』原稿と所感】です!!
ロゴス=バイアスさん、おめでとうございます!!
4票中3票獲得という圧倒的強さでした。
また、ロゴス=バイアスさんは次回の創りだす出題をお願い致します。
さて、第48弾の創りだすもそろそろお開きの時間となりました。
ご覧下さった方も、ご参加いただいた方も、皆様ありがとうございました。
さて、ここからは恒例の出題者解説です。
~~~~~~~~~~
【運命の許しと分かれ道】
現在13時09分。出発予定を20分ほど過ぎている。
「真悟~まだか~?」
しばらく経って「悪い、もうちょっと」と返事が来た。まあ急ぎの用じゃないしいいけどさ。服なんてこだわる必要ないと思うんだけど。
待っている間、こっちの準備も一応確認。最高級の白のボトルだ。中身酢だけど。できればこれでピクルスを作りたかった。
しっかり栓してあるし、車の中でもこぼれないだろう。OKOK。
*
少し気が重い。思ってた以上に引きずってたんだな。失恋。
お互い一目ぼれで、俺なんか眼中になかったから、諦めはついてたつもりなんだが。
いかんな。切り替えねば。
もちろん、二人が幸せそうにしているのは嬉しい。これからもずっと二人と友達でいたい。
*
真悟の車で山道を進むこと2時間。
小腹がすいたので茄子の粕漬けを食べる。うまー。
「臭い残るだろうが」と睨まれたので窓を開けた。
この匂いの良さがわからんとは。ま、悪態つけるなら俺としては一安心だ。
窓から風が入り込んで、後部座席で何かがかさかさ音を立てる。
見てみたら、小さなブーケが乗っかってた。メッセージカードに英語で文が書かれてる。
『Are you still there? Or gone?』【1】
「何でこれ英語なん?」
「……お前が英語読めないから」
なんのこっちゃ。
*
我彦邸に到着。18時からパーティがあり、折と星良さんの婚約報告もその時行われる。
あの変人もようやく二人を認める気になったか。
我彦氏は人呼んで「呪いコレクター」。屋敷は曰く付きの美術品でいっぱいだ。
3年前、我彦邸から宝石が強奪された。その犯人を捕まえたのが俺と折だ。【7】
折がうっかりぶちまけた塩で、犯人が悶え苦しんでた。全身から変な煙出して。
「白菜漬けー!!」って嘆いてたが、あのままぶつかってたら呪われてたんじゃないか、あいつ。
まあそこで絶対ぶつからないのが折だ。
あいつは変なところで運がいい。俺はこっそり「死亡フラグクラッシャー」と呼んでいる。
そして、それが縁で氏の娘である星良さんと知り合った。
*
真悟が車を停めに行ったので、先に屋敷の門をくぐった。
山ん中だけあって草ボーボー、虫がいっぱい飛んでる。
家に帰ったら即風呂だな。漬物小屋は潔癖なのだ。【2・9】
やることなくぼーっとしてたら、預かってたブーケが風にあおられて飛ばされた。ってうお~い!
必死で追いかけた先に、女の人が立っていた。長い黒髪の、人形みたいにきれいな女性。ブーケは彼女の足元だ。
「すみませーん、それ俺のです」そう俺は呼びかけた。
女性はブーケを拾うと、儚げに微笑み、
そして消えた。
え? ちょっと?【5】
*
おかしい。
ノッカーを何度鳴らしても、誰も迎えに来ない。ここまで来て氏の嫌がらせか?
「……お前、やっぱ嫌われてないか?」
「まっさかぁ。いつものサプライズじゃないの?」
あれをサプライズで片付けるか。
俺たちが初めて我彦邸を訪れた時、星良さんも氏と一緒にもてなしてくれた。
その場で折は一目ぼれ。「欲しいものがあればやろう」という氏の発言に、
「お嬢さんを下さい!!」
一足飛びどころか4メートル垂直跳び級の発言をかましやがった。【6】
星良さんの返答は、
「末永くよろしくお願いいたします!」
俺の心は崖からアイキャンフライした。
氏も似たようなものだったらしい。帰りの廊下で美術品がお祭り騒ぎみたいに飛び回っていた。どす黒い煙を出しながら。【10】
あいつじゃなきゃ死んでたろうな、あれは。
物思いにふけっていたら、扉が開く重い音がした。
出迎えてくれたのは使用人じゃない。我彦氏本人だ。
「やあ、いらっしゃい。旗野君、辻裏君」
そう言う割に目が全然笑ってない。大丈夫か今日?
氏に客間に通されたが、静かすぎるぞ。ここまで誰の姿も見ていないんだが。
氏はあれから黙ったままで、ものすごく気まずい。
折はのんきに手土産を取り出している。
「あの、我彦さん、今日、使用――」
「旗野君。君は星良を心から愛していると誓えるか?」
話聞けよ。
「はい。誓います!」お前も乗るな。
「星良のためなら、自分が不幸になっても構わないか?」
「はい。たとえ不幸になっても、星良ちゃんとなら構いません」
な、なんかかっこいいな。でも今大事なのそこじゃないよな? な?【11】
「そうか。実はね旗野君。以前君が取り返してくれた宝石なんだが、少し問題が発生してね」さっきから何言ってんだこのおっさん?
氏の手には、いつの間にかあの宝石が乗っていた。深紅の美しい石。しかし、端に大きなひび割れがある。
「君が撒いた塩で傷ついてしまってね。ほら、中身が出てきてしまう」
氏の言葉とともに、ヒビ割れから真っ赤な液体がしたたり落ちた。
辺りに広がる鉄臭さ。それはまさしく、
「血!?」
間違いなく血だ。水に色付けたとかそんなんじゃない。本物だ!【3】
「我彦さん! 何のつもりですか!」
奴は答えない。代わりに宝石からどす黒い煙が溢れ出して、部屋中に広がっていく。
何だこれ? 気も ち悪… 頭が……
「折部君! しっかりして!」
鈴を転がしたような星良さんの声。【15】俺はぱちりと目を開けた。
星良さんは折を一生懸命揺り起こしている。
「……んー。あれ? 星良ちゃん、どうしたの?」
「良かった! もう目を覚まさないかと思って……」
目覚めた折に星良さんが抱き着いた。こんな事態じゃなければ生暖かく見守るんだが。
客間は気味悪く変貌していた。造りは同じだが、材質があの宝石のような石に変わっている。窓の向こうは黒い煙だらけ。床には変な模様がかかれた魔法陣。横の壁だけヒビが入って、真白く光っていた。
「お父さんもうやめて! こんなものに手を出して、いつかきっと罰が下るわ!」
奴は無表情で俺たちを見下ろしていた。黒いローブに黒い旗。わかりやすい悪の幹部だ。
「何を言っている星良? この素晴らしい力を前にして罰だと? 偉大なる先人が残した叡智を、お前は罪だというのか?」
「そうよ、罪よ!! その力のためにどれだけの人が犠牲になったと思ってるの!」
「弱者は強者の糧となる。己の運命に負けただけだ」
おい、それってまさか俺たちのことか?
「弱虫はお父さんよ! こんなものに縋らないと生きていけないなんて!」
「愚か者め! お前こそ、この石がなければ生きていけんのだぞ! 一刻も早く直さねば、お前の病は取り返しがつかなくなる!【12】」
「!……嘘。私、嘘よ、こんなものに、そんな……」
星良さんは奴の言葉にショックを受けたらしい。呆然とその場にへたり込んだ。
「お義父さん! もう止めろよ! 星良ちゃん泣いてるだろ!」
折が奴の前に立ちふさがる。あいつがあんな怒るなんて。
「旗野君、星良のためなら不幸になっても構わないと言ったね。
ならばその命を持って、この石を直してくれないか。それで星良は幸せになれる。君の望み通りだろう?」
「ざけんな! できるわけねぇだろ!」
折が奴の胸ぐらをつかんだ。
「星良ちゃんはやめろって言ったんだ。だったらそんなもの手出ししない!
そんなもの使わなくても治す方法を見つける! 見つからなくても、最期まで俺は星良ちゃんのそばにいる!
自分の弱虫を星良ちゃんのせいにするな!!」
「黙れ、黙れ黙れ!!」
奴は折を強引に引きはがす。ふらついた折に持っていた旗を思い切り振り落とした!【8】
「折部君!!」「折!!」
殴り飛ばされ、折は倒れる。折は意識を失っているようだ。頭から血が流れている。
「私は間違っていない!!」
奴は叫ぶとぶつぶつ何か唱えだした。黒い煙が奴から拡がっていく。
これ絶対俺ら死ぬやつだろ! どうする? 何か武器は……
部屋を見回して、折が座っていたソファに、ワインのボトルが置いてあったのを見つけた。即座に掴んで奴に向かって思い切り振りかぶる!
「てめえぇぇっっ!!」
しかし、何故か割れたのはボトルの方だった。奴がしたり顔を俺に向けて、そして、
「ぎゃああああっっ!!」
どういうわけか、悲鳴を上げたのは奴だった。中の液体が奴にかかり、全身から煙が湧いている。ってこの臭い酢じゃねーか!
何故か酢で苦しんだ後、奴はばたんと倒れた。全く動かない。【14】
ビシッ。
固いものが割れる音がして振り返ると、折が倒れていたところのヒビが大きく広がっていた。床が崩れて、真っ白な裂け目に折の身体が沈む。
「折部君!!」
星良さんが咄嗟に折の腕を掴み、俺もかろうじて反対の腕と肩を掴んだ。
「折部君、目を覚まして! 私の腕掴んで!!」
呼びかけに、折がわずかに目を開ける。ぼんやりとした顔で星良さんを見て、
「……誰?」
「……え?」
一瞬、わずかに星良さんの力が緩む。
星良さんの手から折の腕がするりと抜け、俺を巻き込んで折は光の中へ落ちていく。
星良さんは、信じられない、そんな顔をしていた。
光に飲み込まれ、全部が真っ白になっていく――
*
あーびっくりしたびっくりした。
まじかよ! 幽霊なんて聞いてないぞ!
そりゃ、「呪われた一族」って噂あったけど、本当に出て来なくてもいいじゃん!
あーあ、瓶の中身空っぽだよ。思わず全部撒いちゃった。
でも効果はあったかな? 最高級ワインビネガーだし、香草も魔除けになるもの漬け込んだし。
なーんか嫌な予感したから、奮発して作って正解だった。大地よ、たんと飲むがいい。くうぅ。【4・問題文】
ったく、何で真悟こんな所にこだわるんだ? たまたまここにいたからって、ああまで思い詰めなくても――
待てよ。あいつ、もしかしてあの幽霊に憑かれてるとか? だからあんなに――
ヤバイ!! 真悟どこいった!?
*
「お~~い、真悟起きろ~」
気が付くと床に倒れていた。折が俺を見下ろしている。
ここどこだったか? 見覚えがある部屋だ。我彦邸の客間か。
……!? 客間? 戻ってきた!? 星良さんは!?
その場にいたのは折だけだ。他には誰もいない。星良さんも。
どうなってる!?
「おい、お前大丈夫か? 生きてるか!? 星良さんは!?」
「痛い痛い痛い!! 揺するなって、頭に響く!」
「あ、悪い、傷大丈夫か?」
きょとんとした顔で、折は言った。
「何で俺怪我したんだっけ?」
俺は警察に事情を説明し、そのまま病院にぶち込まれた。
怪我の治療と心のケア。要は頭おかしいと判断されたわけだ。
奴も星良さんも使用人たちも失踪扱い。宝石はどこにも見つからなかった。
俺が何を言っても誰も信じなかった。
何せ、一緒にいた折があきれて否定するのだ。それが一番堪えた。
俺が諦めて退院が許されたのが2か月前の話だ。
折は、何も覚えていなかった。
頭の怪我がもとで、部分的な記憶障害になったそうだ。
そして恐らく、あいつは二度と思い出さない。
星良さんとの思い出も、星良さんそのものも。
折の運命は、折にとって害となるものを跡形もなく排除する。
たとえそれが「彼女となら不幸になってもいい」と想う相手でさえ。
折が悲しい思いをするのを、折の運命は許さない。
1年ぶりに訪れた我彦邸は更地になっていた。
あの時の面影は全く残っていない。まっさらだ。
正直言って、そのことにどこか安心してる自分がいる。
星良さんはどうしてるだろうか。まだあの場所にいるのだろうか、それとも――
俺は、どちらを望んでいる?
「真悟ー!」折が走ってきた。あいつにしては珍しく慌てている。
「折、どうし―」
「ヤベーよここ! さっき女の幽霊出た! なんかそいつにブーケ拾ってもらったんだけどにかーって笑って消えちまったし!」
――え?
「絶対ヤベーよ!! なあ帰ろう! ほら、雨降ってきたし!」
折は無理やり俺の腕を引っ張ると、そのまま車のところまで駆け出した。
いつの間にか空は暗くなっていて、雨が勢いよく降り注ぐ。
そのおかげで、泣いていることが折にばれなかった。【13】
あいつは今日のことなどすぐ忘れてしまうだろう。俺にはそれができるだろうか?
君は、まだそこにいるのか?
【終わり】
皆様ご参加ありがとうございました!
まずは最難関要素賞です。
最難関要素は……
第四アルカ騎士団さんの「垂直に4m飛び上がります」です!!
第四アルカ騎士団さん、おめでとうございます!!
人間業では到底無理。使うのに工夫が必要とのことでした。
続きまして、最優秀作品賞です。
今回は皆様が一作ずつの投稿なのでこの賞の受賞者がシェチュ王となります。
最優秀作品賞は……
ロゴス=バイアスさんの【5月7日放送『News is Next』原稿と所感】です!!
ロゴス=バイアスさん、おめでとうございます!!
4票中3票獲得という圧倒的強さでした。
また、ロゴス=バイアスさんは次回の創りだす出題をお願い致します。
さて、第48弾の創りだすもそろそろお開きの時間となりました。
ご覧下さった方も、ご参加いただいた方も、皆様ありがとうございました。
さて、ここからは恒例の出題者解説です。
~~~~~~~~~~
【運命の許しと分かれ道】
現在13時09分。出発予定を20分ほど過ぎている。
「真悟~まだか~?」
しばらく経って「悪い、もうちょっと」と返事が来た。まあ急ぎの用じゃないしいいけどさ。服なんてこだわる必要ないと思うんだけど。
待っている間、こっちの準備も一応確認。最高級の白のボトルだ。中身酢だけど。できればこれでピクルスを作りたかった。
しっかり栓してあるし、車の中でもこぼれないだろう。OKOK。
*
少し気が重い。思ってた以上に引きずってたんだな。失恋。
お互い一目ぼれで、俺なんか眼中になかったから、諦めはついてたつもりなんだが。
いかんな。切り替えねば。
もちろん、二人が幸せそうにしているのは嬉しい。これからもずっと二人と友達でいたい。
*
真悟の車で山道を進むこと2時間。
小腹がすいたので茄子の粕漬けを食べる。うまー。
「臭い残るだろうが」と睨まれたので窓を開けた。
この匂いの良さがわからんとは。ま、悪態つけるなら俺としては一安心だ。
窓から風が入り込んで、後部座席で何かがかさかさ音を立てる。
見てみたら、小さなブーケが乗っかってた。メッセージカードに英語で文が書かれてる。
『Are you still there? Or gone?』【1】
「何でこれ英語なん?」
「……お前が英語読めないから」
なんのこっちゃ。
*
我彦邸に到着。18時からパーティがあり、折と星良さんの婚約報告もその時行われる。
あの変人もようやく二人を認める気になったか。
我彦氏は人呼んで「呪いコレクター」。屋敷は曰く付きの美術品でいっぱいだ。
3年前、我彦邸から宝石が強奪された。その犯人を捕まえたのが俺と折だ。【7】
折がうっかりぶちまけた塩で、犯人が悶え苦しんでた。全身から変な煙出して。
「白菜漬けー!!」って嘆いてたが、あのままぶつかってたら呪われてたんじゃないか、あいつ。
まあそこで絶対ぶつからないのが折だ。
あいつは変なところで運がいい。俺はこっそり「死亡フラグクラッシャー」と呼んでいる。
そして、それが縁で氏の娘である星良さんと知り合った。
*
真悟が車を停めに行ったので、先に屋敷の門をくぐった。
山ん中だけあって草ボーボー、虫がいっぱい飛んでる。
家に帰ったら即風呂だな。漬物小屋は潔癖なのだ。【2・9】
やることなくぼーっとしてたら、預かってたブーケが風にあおられて飛ばされた。ってうお~い!
必死で追いかけた先に、女の人が立っていた。長い黒髪の、人形みたいにきれいな女性。ブーケは彼女の足元だ。
「すみませーん、それ俺のです」そう俺は呼びかけた。
女性はブーケを拾うと、儚げに微笑み、
そして消えた。
え? ちょっと?【5】
*
おかしい。
ノッカーを何度鳴らしても、誰も迎えに来ない。ここまで来て氏の嫌がらせか?
「……お前、やっぱ嫌われてないか?」
「まっさかぁ。いつものサプライズじゃないの?」
あれをサプライズで片付けるか。
俺たちが初めて我彦邸を訪れた時、星良さんも氏と一緒にもてなしてくれた。
その場で折は一目ぼれ。「欲しいものがあればやろう」という氏の発言に、
「お嬢さんを下さい!!」
一足飛びどころか4メートル垂直跳び級の発言をかましやがった。【6】
星良さんの返答は、
「末永くよろしくお願いいたします!」
俺の心は崖からアイキャンフライした。
氏も似たようなものだったらしい。帰りの廊下で美術品がお祭り騒ぎみたいに飛び回っていた。どす黒い煙を出しながら。【10】
あいつじゃなきゃ死んでたろうな、あれは。
物思いにふけっていたら、扉が開く重い音がした。
出迎えてくれたのは使用人じゃない。我彦氏本人だ。
「やあ、いらっしゃい。旗野君、辻裏君」
そう言う割に目が全然笑ってない。大丈夫か今日?
氏に客間に通されたが、静かすぎるぞ。ここまで誰の姿も見ていないんだが。
氏はあれから黙ったままで、ものすごく気まずい。
折はのんきに手土産を取り出している。
「あの、我彦さん、今日、使用――」
「旗野君。君は星良を心から愛していると誓えるか?」
話聞けよ。
「はい。誓います!」お前も乗るな。
「星良のためなら、自分が不幸になっても構わないか?」
「はい。たとえ不幸になっても、星良ちゃんとなら構いません」
な、なんかかっこいいな。でも今大事なのそこじゃないよな? な?【11】
「そうか。実はね旗野君。以前君が取り返してくれた宝石なんだが、少し問題が発生してね」さっきから何言ってんだこのおっさん?
氏の手には、いつの間にかあの宝石が乗っていた。深紅の美しい石。しかし、端に大きなひび割れがある。
「君が撒いた塩で傷ついてしまってね。ほら、中身が出てきてしまう」
氏の言葉とともに、ヒビ割れから真っ赤な液体がしたたり落ちた。
辺りに広がる鉄臭さ。それはまさしく、
「血!?」
間違いなく血だ。水に色付けたとかそんなんじゃない。本物だ!【3】
「我彦さん! 何のつもりですか!」
奴は答えない。代わりに宝石からどす黒い煙が溢れ出して、部屋中に広がっていく。
何だこれ? 気も ち悪… 頭が……
「折部君! しっかりして!」
鈴を転がしたような星良さんの声。【15】俺はぱちりと目を開けた。
星良さんは折を一生懸命揺り起こしている。
「……んー。あれ? 星良ちゃん、どうしたの?」
「良かった! もう目を覚まさないかと思って……」
目覚めた折に星良さんが抱き着いた。こんな事態じゃなければ生暖かく見守るんだが。
客間は気味悪く変貌していた。造りは同じだが、材質があの宝石のような石に変わっている。窓の向こうは黒い煙だらけ。床には変な模様がかかれた魔法陣。横の壁だけヒビが入って、真白く光っていた。
「お父さんもうやめて! こんなものに手を出して、いつかきっと罰が下るわ!」
奴は無表情で俺たちを見下ろしていた。黒いローブに黒い旗。わかりやすい悪の幹部だ。
「何を言っている星良? この素晴らしい力を前にして罰だと? 偉大なる先人が残した叡智を、お前は罪だというのか?」
「そうよ、罪よ!! その力のためにどれだけの人が犠牲になったと思ってるの!」
「弱者は強者の糧となる。己の運命に負けただけだ」
おい、それってまさか俺たちのことか?
「弱虫はお父さんよ! こんなものに縋らないと生きていけないなんて!」
「愚か者め! お前こそ、この石がなければ生きていけんのだぞ! 一刻も早く直さねば、お前の病は取り返しがつかなくなる!【12】」
「!……嘘。私、嘘よ、こんなものに、そんな……」
星良さんは奴の言葉にショックを受けたらしい。呆然とその場にへたり込んだ。
「お義父さん! もう止めろよ! 星良ちゃん泣いてるだろ!」
折が奴の前に立ちふさがる。あいつがあんな怒るなんて。
「旗野君、星良のためなら不幸になっても構わないと言ったね。
ならばその命を持って、この石を直してくれないか。それで星良は幸せになれる。君の望み通りだろう?」
「ざけんな! できるわけねぇだろ!」
折が奴の胸ぐらをつかんだ。
「星良ちゃんはやめろって言ったんだ。だったらそんなもの手出ししない!
そんなもの使わなくても治す方法を見つける! 見つからなくても、最期まで俺は星良ちゃんのそばにいる!
自分の弱虫を星良ちゃんのせいにするな!!」
「黙れ、黙れ黙れ!!」
奴は折を強引に引きはがす。ふらついた折に持っていた旗を思い切り振り落とした!【8】
「折部君!!」「折!!」
殴り飛ばされ、折は倒れる。折は意識を失っているようだ。頭から血が流れている。
「私は間違っていない!!」
奴は叫ぶとぶつぶつ何か唱えだした。黒い煙が奴から拡がっていく。
これ絶対俺ら死ぬやつだろ! どうする? 何か武器は……
部屋を見回して、折が座っていたソファに、ワインのボトルが置いてあったのを見つけた。即座に掴んで奴に向かって思い切り振りかぶる!
「てめえぇぇっっ!!」
しかし、何故か割れたのはボトルの方だった。奴がしたり顔を俺に向けて、そして、
「ぎゃああああっっ!!」
どういうわけか、悲鳴を上げたのは奴だった。中の液体が奴にかかり、全身から煙が湧いている。ってこの臭い酢じゃねーか!
何故か酢で苦しんだ後、奴はばたんと倒れた。全く動かない。【14】
ビシッ。
固いものが割れる音がして振り返ると、折が倒れていたところのヒビが大きく広がっていた。床が崩れて、真っ白な裂け目に折の身体が沈む。
「折部君!!」
星良さんが咄嗟に折の腕を掴み、俺もかろうじて反対の腕と肩を掴んだ。
「折部君、目を覚まして! 私の腕掴んで!!」
呼びかけに、折がわずかに目を開ける。ぼんやりとした顔で星良さんを見て、
「……誰?」
「……え?」
一瞬、わずかに星良さんの力が緩む。
星良さんの手から折の腕がするりと抜け、俺を巻き込んで折は光の中へ落ちていく。
星良さんは、信じられない、そんな顔をしていた。
光に飲み込まれ、全部が真っ白になっていく――
*
あーびっくりしたびっくりした。
まじかよ! 幽霊なんて聞いてないぞ!
そりゃ、「呪われた一族」って噂あったけど、本当に出て来なくてもいいじゃん!
あーあ、瓶の中身空っぽだよ。思わず全部撒いちゃった。
でも効果はあったかな? 最高級ワインビネガーだし、香草も魔除けになるもの漬け込んだし。
なーんか嫌な予感したから、奮発して作って正解だった。大地よ、たんと飲むがいい。くうぅ。【4・問題文】
ったく、何で真悟こんな所にこだわるんだ? たまたまここにいたからって、ああまで思い詰めなくても――
待てよ。あいつ、もしかしてあの幽霊に憑かれてるとか? だからあんなに――
ヤバイ!! 真悟どこいった!?
*
「お~~い、真悟起きろ~」
気が付くと床に倒れていた。折が俺を見下ろしている。
ここどこだったか? 見覚えがある部屋だ。我彦邸の客間か。
……!? 客間? 戻ってきた!? 星良さんは!?
その場にいたのは折だけだ。他には誰もいない。星良さんも。
どうなってる!?
「おい、お前大丈夫か? 生きてるか!? 星良さんは!?」
「痛い痛い痛い!! 揺するなって、頭に響く!」
「あ、悪い、傷大丈夫か?」
きょとんとした顔で、折は言った。
「何で俺怪我したんだっけ?」
俺は警察に事情を説明し、そのまま病院にぶち込まれた。
怪我の治療と心のケア。要は頭おかしいと判断されたわけだ。
奴も星良さんも使用人たちも失踪扱い。宝石はどこにも見つからなかった。
俺が何を言っても誰も信じなかった。
何せ、一緒にいた折があきれて否定するのだ。それが一番堪えた。
俺が諦めて退院が許されたのが2か月前の話だ。
折は、何も覚えていなかった。
頭の怪我がもとで、部分的な記憶障害になったそうだ。
そして恐らく、あいつは二度と思い出さない。
星良さんとの思い出も、星良さんそのものも。
折の運命は、折にとって害となるものを跡形もなく排除する。
たとえそれが「彼女となら不幸になってもいい」と想う相手でさえ。
折が悲しい思いをするのを、折の運命は許さない。
1年ぶりに訪れた我彦邸は更地になっていた。
あの時の面影は全く残っていない。まっさらだ。
正直言って、そのことにどこか安心してる自分がいる。
星良さんはどうしてるだろうか。まだあの場所にいるのだろうか、それとも――
俺は、どちらを望んでいる?
「真悟ー!」折が走ってきた。あいつにしては珍しく慌てている。
「折、どうし―」
「ヤベーよここ! さっき女の幽霊出た! なんかそいつにブーケ拾ってもらったんだけどにかーって笑って消えちまったし!」
――え?
「絶対ヤベーよ!! なあ帰ろう! ほら、雨降ってきたし!」
折は無理やり俺の腕を引っ張ると、そのまま車のところまで駆け出した。
いつの間にか空は暗くなっていて、雨が勢いよく降り注ぐ。
そのおかげで、泣いていることが折にばれなかった。【13】
あいつは今日のことなどすぐ忘れてしまうだろう。俺にはそれができるだろうか?
君は、まだそこにいるのか?
【終わり】
17年05月08日 00:37
[滝杉こげお]
相談チャットです。この問題に関する事を書き込みましょう。
ロゴス=バイアス[★良質]>>多忙につきなかなか覗けず、ただいま結果を知って驚いております。皆様、ありがとうございます。アルカさん、おめでとうございます!滝杉さん、進行お疲れ様でした![14日14時54分]
生姜蜂蜜漬け>>ロゴスさん、アルカさん、おめでとうございます。要素を作ってくださった皆さま、投稿してくださった皆さま、投票してくださった皆さま、誠にありがとうございました!![13日00時26分]
滝杉こげお>>不手際があり申し訳ありませんでした。生姜蜂蜜漬けさんも解説お疲れさまでした‼ 参加していただいた皆様ありがとうございました‼[13日00時04分]
滝杉こげお>>というわけで第四アルカ騎士団さん、ロゴス=バイアスさんおめでとうございます‼ ロゴス=バイアスさんは次回正解を創り出すウミガメ開催権獲得です‼ よろしくお願いします。[13日00時03分]
滝杉こげお>>質問欄or雑談欄で出題者のみ表示にてご投票ください。[08日00時45分]
ゲストの方は発言できません、ログインまたは登録してください。
質問欄or雑談欄で出題者のみ表示にてご投票ください。
Goodスープ認定
「Goodスープ認定」はスープ全体の質の評価として良いものだった場合に押してください。(進行は評価に含まれません)
ブックマークシステムと基本構造は同じですが、ブックマークは「基準が自由」なのに対しGoodは「基準が決められている」と認識してください。
「Goodスープ認定」はスープ全体の質の評価として良いものだった場合に押してください。(進行は評価に含まれません)
ブックマークシステムと基本構造は同じですが、ブックマークは「基準が自由」なのに対しGoodは「基準が決められている」と認識してください。