催眠のスープ

海のよく見えるレストラン。

普段は昼食にこんなところまで来ないのだが、今日は友人と一緒ということもあって少し奮発してみた。



（それにしても、海の見えるレストラン...本家ウミガメのスープを思い出すな）



明日原は昔、ラテシンユーザーだった。

ラテシンで日夜繰り広げられるウミガメのスープを見るのが大好きで、いても立ってもいられず登録した。

問題に参加し、謎を解くのは楽しかった。



それで満足すれば良かったものを、彼は出題にまで手を出した。結果は惨敗。迷宮入りだった。

諦めず、二つ、三つ、四つと問題を作っては出題した。だが、彼は天才的に水平思考が下手だった。厚すぎるベール、足りなすぎるチャーム、こじつけが過ぎるクルー。悉く迷宮入りした。



彼はようやく気がついた。自分には出題の才能はないのだと。

そして、ラテシンをやめた。僅か7日の命だった。

今となっては良い黒歴史だ。



と、彼が回想していると友人が話し始めた。

友「なあ、ウミガメのスープって知ってる？」

明「...いや、知らない」

明日原は少しでも自分を黒歴史から遠ざけるために嘘をついた。



友「最近はまってるんだよね。ラテシンってサイト」

明「へ、へえー」

友「こういうの！お前もやってみない？」

友人がタップしたスマホの画面には、幾つかの問題。



友「こういうのって古きよきやつほど面白いんだろ！」

そう言って友人は問題一覧で「最後」のページを開く。

明（ま、待て。そこは確か迷宮入り...）

そのなかの一つを友人は選び、明日原に出題する。

友「これなんか良いんじゃない？『女は死んだ。なぜ？』」



ああ、なんという偶然か。それは昔、自分が作って迷宮入りさせたあの黒歴史...！

もはや感服するほどのチャームの無さ。幾つも考えられる別解。ほぼ存在すらしないクルー。頭を捻った痕跡すら見られない問題。

見覚えのありすぎる、見ることすら辛いスープ。



いっそ殺せ。

明日原は心から思った。



【要約】

黒歴史堀り当てられた。死にたい。