グッバイ、マイパートナー

彼女は、技術室の掃除をしていた。

真面目な彼女は、隅々まで掃除しようと心がけていた。

その心がけが、彼女の大切な相棒を失ってしまうとは露知らず。



彼女は、いつものように技術室に置いてある器具の奥までも、雑巾で丁寧に拭いていた。

その時、器具に突っ込んでいる右手に違和感、というよりも痛みを感じた。

痛みはどんどん激しさを増していく。



ガシュ……ガシュ……

骨が削れる音。血肉が弾ける音。

ガシュ……ガシュ……

音というよりは、振動に近いかもしれない。

手首を伝う生温さ。強くなる鉄の匂い。



痛みと混乱で、彼女は動く事ができなかった。

そんな彼女の異変と、血の匂いに気付いた友人たちが、彼女の右手を器具から引き抜いた。

……引き抜いた筈の彼女の右手は、なかった。



今まで数々の難問の答えを書き綴ってきた彼女の相棒は、もう何処にもいなかった。



彼女は右腕ならぬ右手を失ってしまったなど、色々なショックで塞ぎ込んでしまい、家に引きこもりっきりになってしまった。

それ以来、彼女の姿を見た者は、誰もいない。