別れの時

立ち止ったままの男が女とまた会えたのは、男が動く歩道に乗っていたからだ。

以下、本文の回りくどい表現の背景である。





男と女は新婚夫婦、今日は海外への新婚旅行当日です。



ある国際空港のチェックインロビーへ向かう動く歩道の途中のこと。

この先に何か興味を引かれるものがあることを知ったのでしょう、

じっとしていられない性格である彼女は、彼と自分の荷物を置き去りに、どんどん前へ進んで行ってしまいます。

彼もそれを追いかけようとしますが、2人分の大荷物を持って歩いてる側の列を進むことが出来るはずもなく、

気になったものはかなり先にあるんだろうなと、彼は人混みに飲まれていく彼女を見送り、立ち止りました。



彼女に心底惚れている男は、常日頃抱いている愛情や今彼女が目の前にいない寂しさなどを心に渦巻かせながら願います。

僕のことは二の次でいいから、彼女にとっては最高の新婚旅行になりますように、と。



一方、動く歩道の終点に着いた彼女。

彼ほどではないにしても彼のことを想う彼女は、もし動く歩道の終点で自分が見当たらなかったら彼は慌てるだろうなと、苦笑しながら考えます。

そして彼女は、目的の遂行もそこそこに、動く歩道の終点近くでそのまま彼を待つことにしました。



とってもお似合いな夫婦の、ある一幕でした。



※類似する状況（電車で旅行・エスカレータでの話等）も正解とします。