その程度の「愛」

ゲーム画面を見つめながら、青年は不快感を隠せないでいた。



ラテシンメモリアル２

これは、彼を含む多くのゲームファンに愛された恋愛ゲーム、通称「ラテメモ」の次回作に当たるゲームである。

青年が愛してやまないヒロインの再登場もあり、期待は高まった。





ところが、ゲーム画面を開いたとたん彼の期待は打ち砕かれることとなってしまったのだった。



劣化したグラフィック、違和感しか感じさせない言動。

ゲームシステムそのものの劣化も相まって、彼の不満は頂点に達した。





（やっぱり、無印をやろう。）



積みゲーの山の中から昔のソフトを見つけ出す。

青年はそのゲームを大好きだったしヒロインの彼女もお気に入りだったが、何回かクリアし終わり他のゲームにはまったころにはほとんどプレーをしていなかった。



ゲームを起動しながら、懐かしいあの子の笑顔に思いをはせる。

（久しぶりにはじめからやってみようかな…）





数分後、何も映らない画面に呆然とする彼の姿があった。

保管方法が悪かったのか保管場所に問題があったのだろうか。



そこまで古いゲームでは無く、中古のゲーム屋を探せば同じソフトを探すのは容易ではあっただろう。

しかし、彼がこれまで彼女と費やしてきた思い出の詰まったセーブデータはもう…

喪失感は彼の中で大きなショックとなっていた。



記憶の中の彼女までもがどこか遠くへと去っていくようなやるせなさを感じた。