猫の解剖が好きな大学教授。莫大な富を得たのに落ち込んだ表情をした実業家。無一文の天才詐欺師。三人は空っぽの棺桶の前で泣いている。いったいなぜ?
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長らくお待たせしました! 第三六回【正解を創りだすウミガメ】開催です。
この問題には解説を用意しておりません。皆さんからの質問がストーリーを作っていきます。
詳しくは、以下の手順・ルールをご確認ください。
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①要素募集フェーズ
要素はhttp://sui-hei.net/mondai/show/23700で決めた通りです。
①一夜で大金持ちになります
②ミスコンで優勝します
③薬草をすりつぶします
④なぞなぞのオチにブチギレます
⑤黒板は固かったです
⑥マッサージ機でリラックスします
⑦100番を狙っているのは田中です
⑧無欲が重要です
⑨手を伸ばしても届かないです
⑩悲報を探す旅に出ます
⑪吐血したふりをしていたので、リアル吐血させます
⑫猫はお手をします
⑬何かから逃げ出します
⑭10歳JSは悟りました
⑮くれぐれも注意します
②投稿フェーズ
【期間】~6月6日23:59
解説投稿フェーズでは、要素に合致するストーリーを考え、質問欄に書き込んでください。
ぶっ飛んだネタ設定・胸が締め付けられるシリアス設定など、お好きなようにお創りください。
この段階が終わったら『投票フェーズ』に移ります。
※説明の至らない部分については、過去の「正解を創りだす」をご覧ください。魅力のある先例が色々とありますので、ぜひ!
なお、質問がございましたら http://sui-hei.net/secret/show/正解を創りだす に行くと答えが返ってくるかもしれません。
③投票フェーズ
【期間】アンケートボックス完成後~6月10日 0:00
『投票フェーズ』では、『投稿フェーズ(②)』の回答の中からお好みのもの、そして最も難しいと思った要素を1つずつ選んでアンケートボックスに投票してください。
今回も、以下2賞があります。
見事『シェチュ王』になられた方には、次回の【正解を創りだすウミガメ】を出題していただきます。
■最も好きな解説
これで決まるのは→『シェチュ王』
■最も組み込むのが難しかった要素(投稿してない人は、難しそうな要素)に投票
これで決まるのは→『最難関要素賞』
※投票が最終的に同数だった場合:先着順に番号を1から振り分け、乱数で抽選します。
質問欄の文字数制限は全角300文字です。一度投稿し、そのあとから編集すること文字制限の壁を超えることが可能です。なお、オススメの方法としては(良質は太字になるため)タイトル・回答を分けて投稿することですが、もちろんそれに従わずとも構いません。
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それでは、第三八回【正解を創りだすウミガメ】、開催いたします。皆さんの解説を心待ちにしております。
【新・形式】
遠い日のコタエ [編集済]
切なげなタイトル! [良い質問]
猫の解剖が好きな大学教授は、猫の脳を異様に活性化させる事に成功した。猫はマッサージ機の使い方が分かったのである。猫はマッサージ機でリラックスした。その時、 「はい、お手!」 飼い主が手を伸ばした。しかし、マッサージ機でリラックスして、道楽をした猫には手を伸ばしても届かない。実に怠慢だ。更に、猫は喋った。 「黒板は黒板でも、固い黒板はなあに?」 「――そんなの、黒板に決まっているでしょうが!!」 なぞなぞのオチにブチギレた飼い主の怖さに猫は吐血したふりをしていた。 「何しとんじゃ!」 猫は飼い主によって腸を殴られ、吐血させらた。 [編集済]
飼い主怖い……
それを見た10歳JSは悟った。そして、現実から逃げ出した。10歳JSは悲報を探す旅に出た。そうしなければ、欲が出て、あの猫の様に、堕落してしまう。無欲が重要と、その時から10歳JSは思うようになった。 しかし、10歳JSはやってしまった。成長した彼女は莫大な富を得た実業家となった。彼女はいつも落ち込んだ顔をしていた。 いきさつは、ミスコンにエントリーしてしまった気晴らしに、薬草をすりつぶしていたら、優勝日と薬草の爆発的なヒットが重なって、一夜で大金持ちになった感じだ。 彼女は今でも思い出す。あの、十年以上にも及ぶ旅の思い出を…… [編集済]
くずちーJSだよぉ~♪
そんなある日、一本の電話が彼女にかかってきた。
「力を貸してほしい」
それは、猫の解剖が好きな大学教授だった。どうやら、あの例の猫が死んでしまったらしい。
「棺桶が必要なんだ」
どうやら、埋葬するには、棺桶が必要らしい。そこで、365年に一度の大福引大会に応募して欲しいというのだ。応募といっても、簡単ではない。一億円は請求されるらしい。
「狙うは100番だ。しかしくれぐれも注意しろ。100番を狙っているのは田中だ。何をするか分からない。」
「何ですって!」
あの、あの田中が狙っている。勝ち目は、ほぼ無しに――
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大福大会に見えたからくずちーきっと疲れてる
「諦めるのはまだ早いぞ」 そこにいるのは、かつて、旅を共にしてきた天才詐欺師だった。 「どこから入って来た」 「うるさいな、それより、手伝ってやろうか?」 「それはだめだ。いくらお前でも――」 「バーカ。俺は、お前のためなら何でもできるんだよ」 ――俺は、お前が好きだ。だから、お前のためなら何でもできる。 たった一つ、無欲ではいられなかった事。 過去の旅での言葉がフラッシュバックする。 「あっありがとう」 つい、心が揺らいでしまった。 この気持ちは何だろう。心強い。それに、温かい。満ち足りたような気持ち。ああ、これが私の答えだ。誰かに頼っても、無欲じゃなくても、大切なものがあれば、頑張れる。 「どういたしまして。あ~あ。これで俺も無一文だ。だから、――養ってくれよ」 「……」 「やっぱり、駄目か?それはそれでお前らしいな」 詐欺師は爽快な笑い声を響かせる。また、旅の記憶がフラッシュバックする。 ――私は今、なんて答えればいいのかな? 彼からの告白を受けたとき、自分が出した言葉を思い出す。 分からなかったんだ。 知らなかったんだ。 人の愛し方も、愛され方も。 その時に残った後悔は、今でも消えない。 「――いいよ、俺も本当に養ってくれるとは思っていなかった。ああ、でも安心してくれ、協力はするか――」 「そんな寂しい事言わないでよ!」 「えっ」 「そんなにかっこよくなって、好きになれないわけないでしょ!」 愛し方が分かんなくても、愛され方も分かんないけど、 もう、手放したくない。 「大好きだよ……ずっと、一緒にいて」 それが、私の今までのコタエだ。 猫の解剖が好きな大学教授。莫大な富を得たのに(いつものことだが)落ち込んだ表情をした実業家。無一文の天才詐欺師。三人は空っぽの棺桶の前で泣いていた。互いをたたえ、喜び、そして泣いていた。 [編集済]
詐欺師……(`;ω;´)
タイトル「足りないもの」 [編集済]
私に足りないものは計画性でした [良い質問]
獣医学部教授である男の元に、1通の手紙が届いた。
『息子を返して欲しかったら100と書かれた物を用意しろ。田中』⑦
「ちょっと待て」
男は額に手を当て、考えた。
「100と書かれた物?だと?」
そもそも、一体これはどの田中から来た手紙なのだ?
自分の知っている田中なのか、そうでないのかすら見当がつかない。
「情報が足りないな。さて、どうしたものか……」
男は、十数年前に別れた妻にメールしてみることにした。
男の息子は彼女の息子である。
男の息子でなかったとしても、彼女の息子である。
彼女の元に同じ手紙が届いているかどうかは定かでないが、少なくとも自分だけが手紙に踊らされるのは理不尽であると男は考えた。
それに……
『田中』は彼女の知り合いかもしれない、とも思った。
「なにせ彼女の今の苗字は『中田』だからな。類が友を呼んでいるハズだ。」
[編集済]
その理屈はおかしい
女は、瀟洒な部屋で、リラックスできるハーブティーを飲みながら、マッサージ機で体を揉みほぐしているところだったが、メール受信音を立てたスマホを片手で操作し、首をひねった。⑥
婚姻の事実を隠してミスコンに応募したときから、夫とは別れることに決めていた。
見事優勝して得た莫大な賞金を元手に事業を起こし、資金を増やし、今や立派な実業家である。①②
離婚も成立し、邪魔者からは逃げ切れたと思っていた。⑬
男が引き取ると言い張った息子とも一切交流はない。
それが男の望みだったから。
なぜ今さらこんなメールが?
添付ファイルの『手紙の写真』を見て、女はさらに顔をしかめた。
田中という名に心当たりなどない。
いや……むしろあり過ぎる!
交友範囲の広い女の周囲に田中が何人いるだろうか?
50人、いや、100人……
その時、女の思考が、ある1人の田中にロックオンした。
「100……田中……まさか……」
[編集済]
田中多すぎ!
「なんで俺がこんなことを……」
男は、アヤシゲなハーブを乳鉢ですりつぶしつつ、ぶつくさ言っていた。③
「しょうがないじゃない。利き手がこんなだもの。大丈夫、合法だから。」
女は包帯が巻かれて白くなった手を軽く振る。
左手の方は、足りないカルシウムを補給するべく、口に煮干しを運んでいる。
煮干しにつられて、研究室で飼っているキジ猫が寄ってきた。
ちんまり女の前に座り、右前足をあげる。
「はいはい、お手ね」
猫がお手をしているのか、女がお手をさせられているのか、ハッキリ言ってよくわからない。⑫
しかし女は意に介した風もなく、袋の中の煮干しをひとつかみ猫に与えた。
「その田中は、一体なぜ100番のコレクションなんかしてんの?」
男が尋ねると、女は苦り切った顔で答えた。
「噂によれば100点コンプレックスのなれの果てらしいわ。」
田中の正体は、とある超有名企業の社長の御曹司だと女は言う。
名声のある人物に「100」を要求し、100と書いてある何かが提供されれば満足する……ハズだったが、最近病が重くなったのか、本気で人質をとるようになり、それなりにレアなモノを差し出さないと 五体満足では返さないという噂になっている。
「噂なのよ。あくまでも、ね。」
女は、10cmにも満たない程度の、大小2枚のプレートをテーブルに置いた。
それぞれに細いチェーンがついている。
「これは、あの子が生まれたときにもらったものなの。」
見ると、双方に、息子の生まれた病院名と生まれた年、そして「100」という刻印がある。
小さい方が新生児用で、大きい方が母親用。
赤ちゃんの取り違え防止のための合い札なのだ。
「つまりこれは、あの病院であの年100番目に生まれた子どもという意味?」
「そういうことね」
記念品程度の価値しかないのは明白だが、それでも唯一無二ではある。レア度は高い。
「とりあえずこれであの子を返してもらえるかどうか、犯人に連絡を取ってみるわ。」
「くれぐれも気をつけてな。固いのは黒板だけじゃないんだから無闇に殴るなよ。手が何本あっても足りなくなるぞ。」⑮⑤
男はそう言って、実験室の隅にある割れた黒板を見やった。
[編集済]
100って確かにいいものですよねえ
息子は天才的な詐欺師だった。
ただし、「才能を発揮するのに必要な何か」が足りないらしかった。
海の見えるレストランでウミガメのスープを飲んだが、無一文だったので食い逃げした。
見事成功したと思ったら、隣のテーブルにいた田中にバレていたらしい。
店からだいぶ離れたところで捕まり、脅されて監禁されていた。
吐血したフリなど造作もなかったはずなのになぜバレただろう?と考えていたら、田中がうそぶいた。
「お前が騙す天才なら、こっちは見破る天才でね。」
すなわち天敵か。一番イヤなタイプである。
こんなヤツに長時間ひっつかれたら耐えられないと思っていたら、案の定、昨日はマジで吐血した。
憎らしいことに、田中は本物の吐血であることまで見抜いた。
「ふーん、胃潰瘍? ボクと一緒にいるのがストレスになったの? ピロリ菌の除菌はちゃんとしとこうね?」⑪
監禁仲間がひとりいた。
彼女は小学5年生。本物の女子(J)小学生(S)である。
全教科のテストで毎回100点を取り、それを田中に差し出していたらしいが、今回ついにペケがついた。
「何よ!『なぞなぞのオチ』って!あんなテスト出すなんて信じらんないっ!」④
少々水平思考の必要な出題に、ロジカルな彼女はついていけなかったようだ。
100点コンプリートを逃した彼女は、契約不履行とされて田中に監禁されることになったらしい。
教師も罪なことをしたものだ。
「いつかは破綻すると思うべきだったのね。いつまでも満点続けられるほど、人間完璧ではいられないものなんだわ。」
あっという間に怒りを冷まし、悟ったように彼女は言う。⑭
「無欲であることが大切なのよ。欲があると実力が発揮できないもの。」⑧
……無欲な小学生なんて気持ち悪いだけだ。子供らしさが足りないよ。
そう息子は思ったが、口には出さなかった。
[編集済]
契約不履行w ツボにハマりました
男と女は山小屋の前にいた。
交渉が成立し、100番のプレートを受け取った田中から、息子がここにいると知らされたからだ。
「早く行ってやれよって言われたんだろ?」
男は女に確認した。
「生きてるんだろうな?」
「さあ?」
女は険しい表情を崩さない。
小屋の一番奥に、白木の細長い箱が置いてある。
「まさか……」
男は駆け寄った。
思った通り、それは棺桶だった。
ぴったりと閉じられた蓋を開けた。
……そこには変わり果てた姿の息子がいた。
男の口から嗚咽が漏れ、涙がひとしずくこぼれた。
「おい……冗談だろ? オレは人間を解剖する趣味はないんだぞ?」
「ふざけんなバカ親父! ってか、やっぱり解剖は趣味だったのかっ!」
猫の着ぐるみを着せられて棺桶に納められていた息子は、身もだえし、ずるずると棺桶から抜け出して床に降りた。
「無事だったのか! 良かった! 一応解剖道具一式は持ってきていたけど、やはりヒトの血で汚すのは」
「ふざけんなふざけんな! このド変態!」
「オレは開くのは得意だが閉じるのが苦手なんだ。しかも猫専門だから臨床はあきらめた。」
「それ、今するべき話なのかよっ! デリカシーが足りなすぎるんだよ!」
叫びつつ、息子は自分の母親の差し出したお茶とおにぎりをむさぼり食い、喉につまらせ咳き込んで涙を浮かべた。
男と息子の大騒ぎが終わると、疲れ切った顔をした女は言った。
「街に戻りましょう。」
その時、女が泣いていた本当の理由に、2人の男たちは気づいていなかった。
(問題文)
[編集済]
www 無茶苦茶だw
数週間後、遠い町で10歳の少女の遺体が発見された。
遺体の第一発見者は少女の実の母親だが、現在行方がわからない。
田中は、殺人・死体遺棄などの容疑で指名手配された。
被害少女の苗字が『中田』だったので、男は、元妻が去り際に言った「悲報を探しに行く」という言葉の意味に初めて気づいた。⑩
なぜ自分に協力的だったのか、その理由も。
メスが1本足りない解剖道具のセットを見て、男は考える。
女はまだ、旅の途中なのだろうか?
もう、手を伸ばしても届くまい。⑨
【了】
[編集済]
ふぇぇ……一気にバッドエンドだよぉ……
タイトル「詐欺師と猫」
感動作の予感~ [正解][良い質問]
1 少女は息をするように人を騙した。少女は天性の詐欺師だった。 面白いように騙される周りの人間を見ながら、少女は次第に冷めた感情を抱くようになった。人間は簡単に騙される。それならば、きっと自分だって誰かに騙されているのだろう。信じる者は馬鹿をみる。自分自身すら信じられない少女が、他人を信じることなど出来はしなかった。齢十歳にして当時まだ小学生だった少女は悟った(⑭)。世界は嘘で満ちている。 [編集済]
まさかのJS詐欺師被り><
しかし、ある時、少女はどうしても騙せない存在に出会った。少女が何を言っても、きょとんとした愛らしい瞳で見上げるだけ。追い払っても付いてくる。美味しそうな餌をちらつかせても媚びたりしない。決して騙すことのできない相手。初めての状況に少女は戸惑った。
万策尽きた少女は、とりあえず手を差し出してみた。すると、彼は「にゃあ」と可愛らしく鳴いてお手をした(⑫)。彼は猫だった。
成長してからも、少女は相変わらず嘘をつき続けた。巧みな話術で人を操って一晩で財をなし、翌日には自分が騙されて全てを失った。騙し騙されの毎日。駆け引きだらけの人間関係。
そんな彼女でも、言葉の通じない彼の前では素直でいられた。彼女は彼をミケと呼び、彼に語りかけることを習慣とするようになった。疲れた時は彼の肉球を揉む。すると彼は、極上のマッサージ機でマッサージされたかのようにリラックス(⑥)して気持ち良さそうに目を細めるのだ。その感触が、その姿が、凝り固まった彼女の心を解してくれた。
気づけばミケとは長い付き合いになっていたが、彼は詐欺師の猫ではなかった。彼はいつも、気まぐれに現れては去ってゆく。詐欺師の下を訪れる日が続いたかと思えば、気づいたときには一週間も姿を見ないことはざらにあった。彼女はそんな関係が気に入っていた。
全てが狂いだしたのは、ある男との出会いがきっかけだった。
その日、詐欺師はアパートへの帰り道を急いでいた。仕事に失敗し、早く帰って飲みたい気分だった。家を空けていた期間、しばらく会っていなかった小さな友人のことも気になっていた。ぼろぼろのアパートが見えてきたところで、詐欺師は立ち止まった。久しぶりに見たミケは、見慣れない男に頭を撫でられていた。
「素晴らしい猫ですね」
詐欺師に気づいた男は、開口一番そう言った。
「あなたの猫ですか」
自身を実業家だというその男は田中と名乗った。詐欺師の返事を待たずに、彼は続けた。
「私に猫を預けてみませんか。」
猫の品評会があるのだ、と彼は言った。
それは猫のミスコンのようなもので、猫の美しさや芸を競う大会だという。
見た目からして胡散臭い男は、話す内容も嘘臭かった。そもそも、田中が本名かどうかすら怪しい。
爽やかすぎる笑顔を浮かべて、実業家は言葉を紡いだ。
「その猫は大変に美しい。きっと優勝できるでしょう。どうです?私に掛けてみませんか」
「生憎ですが、お断りします。この子は私の猫じゃないもので」
「それは残念です」
そう言いながら、実業家はミケを撫でた。口では諦めたような素振りを装う実業家の言葉が真意でないことなど、詐欺師はとうに見抜いていた。ミケを見る彼の目は、どんよりと濁り隠しきれない欲にまみれていた。
しかし、そんなことよりも詐欺師が気になったのは、ミケの態度だった。誰にも媚びず、寄りかからない孤高の存在だったはずの猫。そんな彼が、実業家に撫でられ、拒まないどころか気持ち良さそうに頬をすり寄せている。認めたくはなかったが、ミケは明らかに実業家になついていた。
「では、失礼いたします」
そんな彼の様子を満足そうに眺めていた実業家は、最後にミケをひと撫でして去っていった。その背中を見送るミケが名残惜しそうであったことに、詐欺師を言いようもない不安を覚えた。
その日を境にミケは姿を見せなくなった。
[編集済]
詐欺師ちゃん可愛い
2 教授は猫を愛していた。彼は愛した猫が死んだとき、誰よりも悲しんだ。猫の死骸から片時も離れることを拒んだ。まして埋葬など到底出来なかった。そのうちに、命のない猫の抜け殻は腐敗していった。教授は悲しくて悲しくて泣きながら、腐敗を食い止めようと猫の身体にメスを入れた。そこには、教授が今まで知らなかった猫のすべてがあった。見えなかったところ、触れられなかったところ。それらが余すところなく教授の前に晒された。解剖すれば愛しいものの全てが分かる。いつしか、彼は解剖を愛するようになり、解剖するために猫を愛するようになった。解剖は彼の美学となった。 美しい猫、珍しい猫。教授は世界中のありとあらゆる猫の悲報を探して旅をした(⑩)。そのうちに、彼は解剖のために自ら猫を殺すようになった。 そんな彼が、ミケに出会った。彼にとってミケは奇跡だった。美しい毛並み、上品な佇まい。そして何より、ミケは……。 [編集済]
ミケ……
3
少年の話をしよう。
少年は富を愛していた。幼い頃から、世界で最も影響力のある100人の中でもトップの人物になり、優雅で贅沢に溢れた生活を送ることを夢に見ていた。
やがて彼は大人になり、より多くの富を手にいれるために事業を起こした。しかし、彼には事業の才能がなかった。才能あふれる者との力量の差を見せつけられるにつれ、彼の目標は次第に降下していった。100人中100番目でも良いと考えるようになり(⑦)、ついには、ただ金持ちになることを目指すようになった。
そこで、彼は手っ取り早く富を手にいれることにした。
彼には事業の才能はなかったが、それに勝るとも劣らない才能があった。どんな動物も、本能的に彼になつかずにはいられない。彼にかかれば、どんな大型獣もたちまちおとなしくなり服従してしまう。彼の有する才能。それは、動物を虜にしてしまう天賦の才だった。彼は動物にとって麻薬のような存在だった。
初めのうち、少年は動物に好かれることを純粋に喜んだ。差し伸べた手に頬をすり寄せてくる無垢な動物達に心を和ませた。しかし、目にする全ての動物達が皆一様になつきひれ伏す様は、少年のまともな感覚を少しずつ狂わせていった。いつしか少年は、まるで自分が世界中の動物達を支配しているような気持ちになっていた。
大人になり、正攻法では富を得られないと気づいた少年は、この能力を活かした邪道な方法に頼ることにした。すなわち、動物を利用した空き巣、強盗、その他いろいろ。動物を使って犯す犯罪はどれも現実離れしており、決して露見することはなかった。実業家の計画は全て面白いほどにうまくいった。
その様な折、実業家は教授からこの話を持ちかけられたのだった。
―― 猫の品評会をしたいのだが、そこには是非美しいあの猫を加えたい。どうだろう、君のその素晴らしい才能で彼を私の元に届けてくれんかね。
誰にも話したことのない彼の能力を教授は知っていた。そして、その言葉は同時に、過去に実業家が犯した数々の犯罪をも、教授が知っていることを意味していた。
自分は今脅迫されているのだ、そう実業家は感じた。頬に冷たい汗が伝う。実業家に選択の余地はなかった。
それでも、実業家は事態をそれほど重く見てはいなかった。教授は狂おしいほどに猫を求めていた。しかし、それ以外のことには無関心だった。それはつまり、実業家が猫の連れ出しに成功しさえすれば、教授により実業家の地位が脅かされることはないことを意味していた。彼の能力をもってすれば、猫一匹を連れ出すことなど容易かった。それに、成功報酬は1000万円。実業家にとっても悪くない話だった。
しかし、彼にとっての想定外がふたつあった。
ひとつめは、猫がなかなか実業家になつかなかったことだ。律儀に主不在のアパートに日参するくせに、実業家が足しげく毎日通ってみても空気のように無視をする。いくら愛想よく接しても、こちらを一顧だにすることもない。そうこうするうちに、予定は大幅に狂わされ、邪魔者が帰ってきてしまった。あと少し、猫が服従の意を示すのが遅れるようならば、実業家は他の動物を使い詐欺師に危害を加えなければならないところだった。そうならなくて本当に良かった。さすがに、裏の世界に顔の利く詐欺師に手荒な真似をすることは避けたかった。
もうひとつの想定外は、猫自身の身体的特徴にあった。すなわち。
「なんということだ。こいつは三毛猫のオスじゃないか」
稀少種とされる三毛猫のオスは、売れば3000万円はくだらない。実業家は、せっかく手に入れた財産(①)を手放さなければならないことを不満に思った。
[編集済]
ラテシン名物三毛猫の♂や~
それでも、翌日実業家は教授にミケを引き渡した。なんといっても、猫を渡さなければこの身が破滅してしまう。実業家としては、それだけは絶対に避けたかった。
ミケを受け取った教授は恍惚の笑みを浮かべた。
「ああ、なんと素晴らしい。これこそ私の求めていた猫だ」
実業家が帰った後、教授は猫が動けないよう拘束具のついた棺桶に閉じ込めた。猫は観念したのか、動くことなくじっと空中を見つめていた。そんな猫を、ゆっくりと舐めるように見ながら、教授は吐息を漏らす。
「おめでとう。品評会などするまでもなく、君の優勝だよ」(②)
品評会と言えば聞こえは良いが、それは結局のところ、教授がひとりで主宰する、解剖に値する猫の品定め会だった。
その日から、教授は猫の解剖に向けて準備を進めていった。解剖をする以上、外傷を伴う殺害方法は避けたかった。かといって、普通の毒を使えば体内に毒が残る。そのような猫を解剖することは、教授の美学に反していた。
そこで、完璧な姿のまま猫の時を止めるべく、教授はいつもある特殊な毒を使っていた。それは、口にした者を死に至らしめた後で、跡形もなく消滅する性質をもっており、解剖を目的とする殺害に用いるには最適な毒物だった。もっとも、この毒はなぜか注射や器具を使った経口によっては効果を発揮せず、殺害対象者の自発的な経口を要した。教授は解剖のために猫を殺害するとき、この毒をいつも餌に毒を混ぜて猫に与えていた。毒は無味無臭であったため、餌に混ぜれば大抵の猫は毒を含んだ餌を進んで口にした。
教授はミケに対しても、同様に毒を与えた。しかし、彼は決して毒の入った餌を口にしようとしなかった。このままでは、ミケが衰弱死するのは必然だった。それはいけない。それでは彼の美しさが失われてしまう。
教授は、自分の自宅の研究室に、ふたりの人間を呼び寄せた。
「猫に毒を飲ませてほしい」
教授は、呼びつけた二人に対してそう言った。
どうあっても毒を飲もうとしない猫。そんな彼に毒を飲ませることが可能なのは、動物を虜にすることのできる実業家と、猫がなついている詐欺師だけだと教授は考えた。もちろん、教授は二人に『頼んでいる』つもりなどさらさらなかった。教授はふたりの後ろ暗い過去を知っていた。それは、猫一匹を殺すに十分値するだけの弱みであると、彼は確信していた。
呼びつけられた二人は、必死に思考を巡らしているようだった。それはそうだろう。なんといっても、自分の一生が掛かっている。
まず、最初に口を開いたのは実業家だった。
「私にやらせてください」
実業家は、呼びつけられ踏み入れた室内で、美しい猫を目にし、気づいてしまっていた。猫は自分に服従などしていなかった。棺桶に入れられ、手足を固定されたその猫はまっすぐに詐欺師だけを見ていた。
(あの時、猫が俺に服従したのは、いや、服従したふりをしたのは)
すべては詐欺師のため。実業家が詐欺師に危害を加えないようにするための、命懸けのお芝居。猫と詐欺師の間の絆は本物だ。そのことに、詐欺師自身が気づいていないはずがない。詐欺師にとって猫は、身を挺して自分を守った愛おしい存在。
それならば、今詐欺師に猫が渡れば、間違いなく詐欺師は猫を逃がすだろう。その時、教授の怒りの矛先はどこへ向く。
(そんな最悪の状況で、もし、俺の能力不足が露見すれば、俺はどうなる)
きっと、教授は怒り狂い実業家の罪を暴露するだろう。実業家の頭の中に『破滅』の二文字が浮かんだ。
しかし、と、実業家は思考を続ける。しかし、詐欺師が教授の手の内にいる今ならば。詐欺師が教授に人質に取られている今ならば、猫は素直に毒を飲むのではないか。そのためにも、猫と詐欺師を引き離すことが必要だった。
「私にやらせてください。ただし、条件があります。私と猫をふたりきりにしてください」
[編集済]
ほほう
「私の条件も同様です。」
詐欺師も倣うように言った。
少し考えてから、教授は言った。
「良いだろう」
教授は二人の目の前で薬草をすりつぶし(③)水に溶いた。
「これは毒だ」
それから、透明の小さな瓶を示した。中で液体が揺れていた。
「これが唯一の解毒剤。毒が身体にまわりきるまで一時間。それまでにこの解毒剤を飲まなければ死ぬ」
実業家も詐欺師も、教授の言葉が脅しなどでないことはすぐに分かった。
2つのグラスを教壇に置いて、教授は言った。
「私に命を預けるだけの覚悟はあるかね」
静かな室内に時計の音だけが響く。猫は相も変わらずじっと詐欺師を見つめていた。
不意に実業家が動いた。彼はコップをとると、口元に持っていった。そして、コップの淵に口をつけると同時に、教授の目を盗みガラスの欠片を頬張った。ガラスは彼の口腔内を傷つけ、みるみるうちに彼の口を血でいっぱいにした。咳き込むふりをしながら、実業家は手に持っていたコップを落とした。薄く色づいた液体が床に広がった。
教授は、実業家を冷めた目で見た。
「ひとつ、忠告しておこう。その毒は神経に作用するものでね。軽い吐血ぐらいではおさまらない代物なのだよ。小細工は通用しない」
それを聞いていた詐欺師は、静かにコップに口づけた。
「それじゃあ次は私の番ですね」
言って、詐欺師は躊躇いもなくコップの中身を飲み干した。瞬間、彼女は手にしていたコップを落とした。粗い呼吸に突如の発汗。傍から見ていても、彼女の体温が異常なまでに上昇してゆくのが分かる。震えが止まらない様子の彼女は、尋常でない汗を流しながら言った。
「これで信じていただけましたか」
言い終わらないうちに、詐欺師の口から血が溢れた。ごぼり、と音を立てて吐き出されたそれは、実業家が吐き出したものよりも格段に大量だった(⑪)。
その様子に、教授は目を見張った。震え、汗、そして吐血。そのすべてが本物だった。芝居などでは長年毒を使い続けてきた教授をごまかすことはできない。彼女は間違いなく毒を飲んでいた。
―― 彼女は毒を飲んだ。
それは、教授にとって想定外のありえない行為だった。
―― 彼女は毒を飲んだ。なぜ?
答えの出ない方程式は、教授の思考に綻びを生じさせた。
「分かった」
あまりのことに、かすれた声で教授は言った。
「君を信じよう」
そう言って、教授は詐欺師と猫をふたりにすることを許可した。教授の自宅の中で唯一窓がはめ殺しになっている部屋に、詐欺師は毒物と棺桶を持たされ通された。
実業家とふたりだけになった研究室で、教授はまだ考えていた。彼女は毒を飲んだ。なぜ?
答えのでない問いは不気味であったが、教授はひとまず待つことにした。
彼女は間違いなく毒を飲んだ。そして、解毒剤は教授しか持っていない。ならば、彼女は必ずここに戻って来るはずだ。その手に、猫の死体を抱いて。
途中式は分からなくとも、解だけは明確だった。誰だって命は惜しい。それならば、彼女は逃げることなどあり得ないはずだった。
[編集済]
教授はサイコパス。世界の理
しかし、詐欺師は戻っては来なかった。そしてそのまま一時間が過ぎた。
教授は実業家を連れて詐欺師を通した部屋に駆けつけた。勢いよくドアを開く。
中には誰もいなかった。はめ殺しの窓は割れていた。
すべてを悟った(④)教授は力任せに黒板を殴り付けた。手にしていた解毒剤入りの瓶は、固い黒板(⑤)にぶつかり割れた。液体がこぼれ落ちる。
――なぜ彼女は毒を飲んだのだろう。それは、彼女が誰よりも彼を愛していたから。
問いの答えはとてもシンプル。それは、出来の悪いなぞなぞとも呼べないただの事実。
果たして、教授の自宅からそう遠くはない場所で、詐欺師は見つかった。息も絶え絶えな様子の彼女は、誰がどう見てもすでに手遅れだった。彼女は、大事そうに小さな棺桶を抱えていた。
実業家と教授は我先にと棺桶を覗きこんだ。
棺桶の中は空っぽだった。
彼女は彼とともに逃げ出した。魔王の城から逃げ出した(⑬)。自分の命と引き換えに、彼を魔の手から救い出すために。欲深い実業家と自分勝手な教授に真意を悟られないよう、くれぐれも注意しながら(⑮)。自らの命を投げ出すことすら厭わない、無欲な詐欺師の勝利だった(⑧)。
猫の解剖が好きな教授は泣いた。有識者としてのプライドを傷つけられ、愛する猫を奪われたと言う、理不尽な怒りに震えて泣いた。
実業家は泣いた。悲しくて泣いた。彼は一晩で手に入れた富を一瞬にして失ったことを悔やみ、自分の身の破滅への恐怖に慄いて泣いた。
詐欺師は泣いた。彼女は薄れ行く意識の中、もう手の届かない(⑨)友の幸せを祈り泣いた。彼女はとても幸せな涙を流した。
【終】
[編集済]
詐欺師JSちゃん……
タイトル「ある子役の悲惨な一生」
ふむふむ [良い質問]
ここにある1人のごく普通の女子小学生がいた。その名前はまりむうといい、歳は10才だった。しかしながらまりむうは早くもあることを悟っていた。(14)
「私も有名になりたいなあ・・・・・そうか、子役になれば有名になれるんだ!」
そこでまりむうは少女雑誌「E-ZERIN」の広告で見た「美少女ミスコンテスト」に応募した。
選考途中では、なぞなぞで「パンはパンでも焼くパンは?」というありふれたなぞなぞに「簡単すぎる!」と内心ぶちぎれたり、「田中」と名乗るやたらダーツで100番の数字を狙っている少女に苦戦したりしたものの、見事に優勝し、普通の小学生だったまりむうは一夜にして人気者になった。(1)(2)(4)(7)
しかし、のちに彼女は「あの時、『子役になろう』と思わなければ。」と無欲でなかったことを後悔する羽目になる。(8)
まりむうは子役として、お手をする猫「魔子」が主人公のドラマ「おてっこ魔子」で飼い主役を演じたり、マッサージ機のCMに出て天使のようなリラックスした表情を見せたりして、「天才子役」としてもてはやされたものだった。(6)(12)
そんなまりむうを狙う3人の男がいた。
1人目はアザゼル。彼は東都大学の獣医学部で猫の解剖をすることで有名だったのだが、数年前に女学生にセクハラをしたため、東都大を首になり、無一文の状態になっていた。
2人目はツォン。彼は父親の経営していた会社「甘木製菓」を受け継ぎ、巨万の富を得ていた。ところが、経営能力は皆無に等しかったため、業績が下がってしまい、社員からは退任論が叫ばれていた。
そして3人目は希少種佐藤。彼は生まれつきの天才詐欺師で、これまでタレントの桜小春や大手自動車メーカーの社長浅利をだますなどの活躍をしていた。ところが、ある時ギャンブルで大負けを喫し、それからは低迷しきっており、常に自分よりも不幸な者を探しては嘲笑するという日々が続いていた。(10)
この3人がとある闇掲示板で知り合った。そして3人は金を持っており、なおかつ体力で勝つことができるまりむうを狙うことにしたのであった。
そしてさっそく、3人はまりむうの誘拐計画を立てたのであった。
もちろんまりむうもこのことに無防備だったわけではない。小学高に通学する際は100メートルごとに振り向くことを繰り返した。また「知らない人にはついていかない」ということを心掛けていた。くれぐれも注意はしていた、はずだった。(15)
ところがだ。ある日、まりむうの小学校は社会学習の一環として東都大学を訪れることになった。たまたまその日は、まりむうのスケジュールが空いておりまりむうは社会学習に参加することにした。これがまりむうにとっての運の尽きだった。
まりむうは社会学習から帰ろうとすると、アザゼルが声をかけた。
「君、忘れ物をしたよ。」
「え?」
するとアザゼルはいきなりまりむうに襲い掛かり、睡眠薬をかがせた。アザゼルとの圧倒的な体格差にまりむうは勝つことができなかった。案の定まりむうは眠ってしまった。
そのあと2人は車の中にまりむうを運んだ。そして3人は車でまりむうを運んだ。
しばらくして田舎の廃屋につくと、まりむうを起こした。
「ここはどこ?」
「ふっ、廃屋だ。これからお前の世話をするアザゼルだ。」
「俺はツォン」
「俺は希少種佐藤だ。」
「何をするの?」
「それはこれからのお楽しみだ。」
するとツォンがまりむうの服にいきなり火をつけた。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ熱い!やめて!」
「あひゃひゃひゃひゃいい気味だ。小学生からこんなに稼いでるから悪いんだ!」3人は笑った。
その日から、3人はまりむうをリンチしはじめた。3人はビンタはもちろんのこと、サンドバッグのごとくまりむうを殴ったり、まりむうの皮膚を切り取ったりした。
それでもまりむうはなかなか死ななかった。
あくる日のこと、まりむうが言った。
「お願いです。助けてください。」
そういうとまりむうは血を吐くふりをした。むろんほんとにはいたわけではない。たまたま赤色の絵の具があったため、つばと絵の具を混ぜて吐くふりをしたのだ。
むろん、そんな茶番を3人が許すはずはなかった。
「ふざけんな!どうせ絵具だろ?吐血したふりすんじゃねえよ!ほら吐け!」
「ううう・・・・・」
そして3人はさらにまりむうの腹殴り、とうとうまりむうは吐血した。(11)
まりむうが虫の息を吐きつつこういった。
「お、お願いしますから、やめてください。」
「そんなことしねーよ!」
そして3人はまりむうの足と腕を縛ろうとした。
その時、まりむうは廃屋の棚の上に古い携帯電話があるのに気付いた。
まりむうは棚の上に手を伸ばして携帯電話を取ろうとした。むろん3人はすぐに気づいた。
「何してるんだ!」そう言われてまりむうの腕を押さえた。それでもまりむうは棚の上に手を上げようとした。するとまりむうの手が急にだらんと下がってしまった
それは暴力という場からの永遠の逃避を示していた。(13)そう、まりむうは3人のリンチにより短い生涯を閉じることになってしまったのだ。
彼女の死体はかつてミスコンで優勝したとはとても思えないほど顔や体がアザや傷だらけになっていた。
慌てた3人は証拠隠滅のため、まりむうの死体をたまたま廃屋にあった固い黒板で隠すと、まりむうの死体を骨が灰になるほどまでに焼き、その灰を薬草と混ぜてすりつぶして飲むことにした。(3)(4)
ところが、運の悪い出来事があった。まりむうの死体を焼くときの煙をたまたま見てしまった老人牛削りがいたのだ。老人は怪しがって警察に通報した。
そして警察に来られてしまった3人は堪忍してまりむうを殺害したことを自供した。こうして3人は逮捕された。
それから数日がたった。まりむうの葬式が行われた。もちろん棺の中は空だった。葬式後、まりむうの母であるまぴばゆが3人にこんな手紙を送った。
「私の娘はこれから将来の活躍を期待されていました。突然のことでいまだに娘の死を受け入れることができません。そしてあなたたち3人を許すことができません。」
そしてまりむうの母は自分の娘を突然失った悲しみを知らせるため、空の棺の写真を一緒に送った。それを見た3人は自分の罪に泣くのであった。(終)
[編集済]
なるほど……空の棺桶をこう使いましたか……上手いですね
くずはらは,①集計日を間違えた,②まだ解説を書いていない,③まだ回答していない,という3つの重罪を犯しました.これにつきましては,
①土下座
②部屋に書く!
③結構早めに回答する!
を目標にします…….
さてそれでは結果発表です! 放送席!
『………………ザザ……』
ノイズがすごいですね。
もう一度行きましょう。
放送席―!
『……でいいのよね?』
うん? 雲行きが怪しいぞ?
『……要……素は⑦……が優勝……で…………いいのよね?』
まって! ちょっと今重要な情報が聞こえてきたんですけど!
『それで優勝が……また同数…………なるほど、揚羽さんとまりむうさんが残って……揚羽さんが優勝したと……』
放送席ィ!
『はーい♪ こちら放送席放送席。スタジオにお送りしまーす♪』
うん、ほんなら頼むわ……
要素票は?
『ドゥルルルル・ダンッ! ⑦番でーす♪ takatsukiさんおめでとうございます!』
おめでとう……悪夢だ……これは悪夢なんだ……スタジオの観客の目が痛い……
優勝は?
『ドゥルルルル・ダンッ! 揚羽さんでーす♪ おめでとうございますぅ!』
………………
………………
プロデューサーさん、この番組って……
はい、放送できませんか。
わかりました。
帰ってスピリタスイッキします。
ありがとうございました。
(やたら多くてすみません)[編集済] [05日23時00分]
「世の中ね、顔かお金かなのよ」という回文がある。まったくその通りだと、私は思う。
自分の苗字を、私は知らない。知る必要も、ないと思う。八才の冬、私はドラム缶の中で目を覚ました。それまでの記憶を、すべてなくして。背負っていたランドセルの『ステップUP算数 2』には「2ねん4くみ みれい」と書かれていた。美玲という漢字は適当に当てたものだ。玲瓏かつ美しい。薄汚れた私とは真逆の名前だと自嘲する。それから二年、詐欺をした。詐欺をするときの名前は「田中アキ」だったけど、自分でなぜこの名前に決めたのか分からない。ただ、美玲という名前を汚したくなかったのかも知れなかった。
何人騙しただろうか。大掛かりな詐欺もやった。犯罪であるから武勇伝として語ることは出来ないが、マフィアの麻薬取引の現場から二億円を奪い取ったこともある。私は電話越しに、いくらでも声を変えることが出来た。
――すごいわね、将来は声優さんかしら?
淡い記憶が呼び起こされる。霞がかかって見えない黒髪の女が、私に向かって微笑みかけている場面だ。この声は、懐かしくて、だから嫌いだ。
大家を騙して借りているアパートで、私は困窮している。とはいえ、それはあることへの準備をしているからだ。新しい家族。偽装でもいい。家族と、もう一度生活を……。この薄汚い生活から逃げたかった。それには二人の男女の生活を買う必要があった。絶対に離婚せず、常に私を愛する演技をする、新しい家族。手を伸ばしても届かない、昔の家族に、別れを告げるべく。
そして今日、私は新しい家族を得る。
2
「学生諸君には以上のことに注意していただきたい。すなわち、」
そういうと三崎真澄は板書を始めた。硬い黒板に、カツカツカツとチョークを叩きつけるように。後ろでは学生がスマートフォンを弄っているのだろう。もしくは他の科目の勉強をしているのかもしれない。そんなことは、真澄にとって、至極どうでも良かった。食うことに困らないならば、なんだって良かったのである。
『猫の解剖』というテキストを片手に持ち、読み上げる。この本だけは、真澄が愛着を持っていた。それは、妹がプレゼントしてくれたものだったからだ。生物学の良著を本屋の店員に聞き、四〇〇〇円もするのに、誕生日に買ってくれた。お小遣い半年分の、プレゼント。三ヶ月後、警察から結が死んでいたと報告があった。真澄が二八才で、結は一二才だった。それからは何もかもがどうでも良くなった。結のように無垢で良い子が、どうして死ななくてはならなかったのだろう? 頑張って生きていっても、報われない結末が待っているのかもしれない。人生とは悲報を待ち受けるためだけに存在し、最後に自分の悲報を提供するだけの旅なのではないだろうか。そして真澄は生きている。悲報を探すだけの人生を、ずっと。
妹への未練が、真澄に決意させたのだろう。この子と家族になりませんか? と女が言ったとき、真澄は頷いた。その顔写真は信じられないほど結に似ていたのだ。
3
青年実業家――というのが黒宮忍の肩書きらしい。週刊誌や新聞では、真っ白な歯を見せて微笑んでいる忍の姿がある。スーツを着こなして、いかにもデキる大人といった風格を漂わせている。
『月刊エコノミクス』には、様々な有名人の自己紹介欄のプロフィールとして「父の仕事・母の仕事」があったが、忍のときだけ、その欄はなかった。要するに、黒宮忍は捨て子である。今どきありえないでしょう、本当に橋の下に捨てるなんて。と、忍は笑う。まったく、最初で最後の最高のネタを与えてくれたものだ。問題は、ブラックすぎて、相手が笑うことができないということだが。
幸せか? と問われたとき、忍ははてと首を傾げる。……頭の中では。
しかし、それを表に出すことなく、にこやかに笑い、幸せですよ、と微笑む。
幸せとは何なのだろう? 金持ちになった今でも、そんなことは分からなかった。孤児院では虐められており、「家族」というものの存在を――貧しくても与えられるはずの存在を――高級車でも別荘でも何でも買えるほどの忍は、知ることがなかった。だからかもしれない。胡散臭い女に、家族は要りませんか? と言われたとき、疑いつつも「欲しいです」と言ってしまったのは。
そして忍は手に入れた。家族、というものを。一つ、いや、二つ。大きな問題を孕んでいたが。
4
「信じられない……あのクソ業者……ありえない……家族ってものを知らないの……?」
「あいにく、私も家族を知りませんけどね」
忍は微笑む。
「パパは黙っていて」
「パパですか。悪くないですね」
「いいのかい? 私がお母さんで」
「あなたがお母さんなことは問題ないの。問題はお母さんが二人いること」
「……まさしくその通り。忍さん、性別確認されなかったのか?」
「ええ、されませんでした。たしかにスーツもネクタイもしていますけど、まさか、ねえ」
「訴えてやる……」
なおもブツブツという美玲に、二人が苦笑する。
「まさか。そんなことをしたら三人まとめて人生が破綻してしまう」
「その通りですよ。弁護士も呼べません。これはすごい詐欺ですねえ。悪意はなかったのでしょうが」
「詐欺? ……私を詐欺るなんて一〇〇年早いわ! 今度アイツらを破産させてやるんだから……
……あんた、結構胡散臭い笑いをするのね」
美玲の辛辣な物言いに、忍は大仰に笑ってみせた。「あいにく、生まれつきなんです」
「パパは家族がいないんだっけ?」
真澄の茶化すような声を、美玲が睨めつけた。「いるでしょ。……建前上は」
「おやおや、うちのレディはなかなか気が強い」
忍は臆することもなく家庭事情に踏み込んでくる真澄に、少し引き気味になっていたが、
「……まあ、家族はいませんでしたね」と答えた。「ママはどうなんです?」
「ママは四人家族だったよ」
「おや、過去形ですか」
「ちょうどうちのレディに似た娘が死んで、三人に。本物のパパは宗教に入れ込んでしまったよ」
「家族が居るのも大変ですねえ」
そういって二人は美玲を見る。美玲は二人を睨みつけると、キッチンへ向かっていった。
「あんたたちには、ご飯を作ってもらったり、洗濯をしてもらったり、……それから、掃除をしてもらったりするわ」
「召使いみたいですね」と忍は言った。「どうせならメイドを雇いましょうか?」
「何言ってんのよあんた。ふつーの家族っていうのは、ママが家事をしてパパが働くものでしょ? メイドなんて雇う必要はないわ」
「じゃあ、パパの私は働けばいいんですね?」
「もちろん。家事もしてもらうけど」
「はい?」
「それは当然でしょ。イクメンっていうのも最近流行っているみたいだから。よろしくね」
「……確かにうちの娘は、なかなかワガママですね」
「……だろう?」
5
「ピクニックに行かないかい?」
「嫌よ。今日はゴロゴロしたい気分なの」
「せっかくパパとママが計画を立てたのに、うちのレディはまったく……」
「家族っていうのは難しいですね」
「まったくもってその通りだね」
「そんなこと言わずに。美味しいアイスクリームも買ってあげよう。さつまいも味だ」
「ふうん? ……そんなものに釣られたわけじゃないけど、可哀想だから行ってあげるわ」
「……案外、簡単かもしれませんね」
「……まったくもってその通りだね」
「そこ、聞こえているわよ。そんないうんだったら行ってあげないから」
「すまないね、それじゃあ行こうか」
真澄は運転手をやっていた。
件の車はそこまで高級というわけでもなく、むしろ車としては安い部類だ。
「古い車の臭いって嫌いなの。消臭剤の臭いがしつこいから」
「わからなくもないよ」
「シートをクリーニングに出せば良いのでは?」
「金持ちならね」
「一回乗るたびにクリーニングしてもらいたいくらいね」
「それでは車が傷んでしまう」
「冗談よ。あんた冗談も通じないの?」
「………………」
真澄は助手席に座っている忍に、大袈裟に腕を広げてみせた。
「危ないです! ブレーキ! ブレーキ!」
「悪い運転手ね。次のパーキングで交代してちょうだい」
「かしこまりました、お嬢様」
「だ・か・ら・ぁ! ちゃんと前を見なさい!」
しばらくして。
「暇ね」
「暇ですね」
「ラジオでも点けてみたらどうだろう?」
「そうね、パパ、点けて」
「わかりました」
『それでは、クイズです……』
「いい感じじゃない。教授? 当ててみてちょうだい」
「専門分野じゃなかったら当てられないよ。それに准教授だ」
「そんな違いは知らないわ」
「やれやれ……まあ、善処しよう」
『サギはサギでも無害なサギは何でしょう?』
「これは簡単ね、教授が出るまでもないわ。オークション詐欺よ。被害額が少ない詐欺だし」
「そういうことじゃないんじゃないかな? 答えは鷺だと思うよ、鳥の」
「……冗談よ」
「君は真顔で嘘を吐くのが得意だね」
「演技は好きなの」
「おや、嘘だということは認めるのかい?」
「詭弁ね」
『答えは「鷺」でした』
「こんなのクイズとして認められるはずがないわ」
美玲の言葉に、忍がくすりと笑った。
「どうしてですか?」
「考えてみなさい。鳥の鷺で無害な鷺とは何でしょう、とも取れるわ、この問題文は。だったらクイズとして成立しないじゃない。これこそ詐欺よ!」
「……オークション詐欺っていっていたからには、少なくとも君には通じていたみたいだけどね」
「うるさい!」
「Goodスープ認定」はスープ全体の質の評価として良いものだった場合に押してください。(進行は評価に含まれません)
ブックマークシステムと基本構造は同じですが、ブックマークは「基準が自由」なのに対しGoodは「基準が決められている」と認識してください。