帰国があと3日遅ければ良かったのになぁ。

私が人肉の虜になったのは、20年前のあの事故からだ。



ハワイ旅行を終えた私たちを乗せた飛行機が太平洋に墜落し、私たちは、いわゆる無人島に運良く流れ着いたのだった。



マンガでよく見るような光景だ。

「すぐに救助が来るだろう」と高をくくっていた私達だったが、現実はそう上手くはいかなかった。



・・・

1日後。

運良く持っていたお菓子などで、空腹を凌いだ。



3日後。

みんなで貝を拾い、それを食べた。

量は少ないが、ギリギリ食いつなげるかもしれないという希望が、この頃はあった。



1週間後。

なんとか生きてはいたが、みんな、精神的に参っているようだった。



1ヶ月後。

ヤシの実を取ろうとしたカメヒコが、木から落ちて死んだ。



次の日。

カメヒコの体を砂浜で焼き、みんなで分けて食べた。

元サッカー部だったからか、足の肉付きが良く、足を貰った私は少し得した気分だった。



その2週間後。

ずっと体調不良だったカメミが飢えて死んだ。

死体はみんなで分けて食べた。私には腕が回ってきたが、女性特有の柔肌が非常に美味だった。



その更に2週間後。

カメジロウが飢えて死んだ。当然ながら体は焼いて食べた。

同時に、カメオの容体がここ数日で非常に悪化していた。

うつろな目で、この無人島で何度も読み返したはずの小説をめくっている。



栄養失調で、ガリガリに痩せ細った彼の姿。

その時の私たちは、彼の死体の「どこが一番実入りがいいか」しか、考えられなかった。



（・・・そろそろ、頃合いかな。）



と思った次の日。

大きな漁船が我々を見つけたらしく、私たちはおよそ3ヶ月ぶりに日本へ帰国することが出来たのだった。





私たちはすぐに入院することになり、カメオも一命を取り留めたらしい。













・・・しかし私は、20年経った今でも、あの日々を思い出して、こう思うんだ。















あーあ、



帰国があと3日遅ければ良かったのになぁ。









※答え

カメオはガリガリに痩せ細っており、

みんなで分けて食べるとしたら、頭の中身が一番食いでがありそうだったから。