背後からの息遣い

今日は私の嫌いなマラソン大会の日。

運動の苦手な私にとっては陰鬱な日ではあるが、それでも少し心に余裕がある。

何故なら、私よりもっと足の遅い「彼」がいるからだ。

彼がいる以上、私はビリにはなるまい。

心に余裕をもった私は、同じく運動の苦手な友達たちと一緒に走ろうと約束した。遅くたってみんなでいれば恥ずかしくはない。仲間がいるのなら心強い。



そんなマラソン大会も終盤、視線の彼方にはゴールが見えてきた。

その時だ、私の背後から荒い息遣いが聞こえたのは。

慌てて振り返ると、そこには「彼」がいた。

ハァハァという荒い息遣い、それでも残った体力をすべて絞り出すような猛スピードで追い上げてきている。

「彼」はこの瞬間のために、最後の力を残していたのだ。

このままでは私たちがビリになってしまう……そう思って友達たちの方を見れば、みんな我先にと最後に残った体力を絞り出し、全力疾走に入っていた。

誰だってビリにはなりたくないのだ。



「酷いよみんな！　一緒に走ろうって言ったのに！！」



私は友達の非情さに思わず声を上げると、なけなしの体力を絞り出して全力疾走を始めた。



今、マラソン大会の最後の戦い、「ビリ争い」という名のデッドヒートの幕が上がる……。





要約：

マラソン大会で後方から息を荒げながら「私」を抜き去ろうと男が迫っている。

それに気づいた周りはすでに速度を速め、「私」も抜かれまいと速度を速めた。





子供のころ、マラソン大会で「裏切り」ってありませんでした？

私は「一緒に走ろう」と言われて一緒に走り、最後の瞬間だけ全力疾走されてビリになったことがありましたｗ