彼はweb上で小説を発表していた頃から注目を集めていた。
当時発表した『懸想文』は文庫本にして16ページ程度の短編ながら文壇に少なからぬ衝撃を与え、国内で権威ある賞を獲得。世界中で翻訳され人気と称賛を集めている。
現在彼は某出版社から新作を発表し続けており、確実に面白い作品を次々世に送り出している、多くの人々に認められる天才作家である。
わたしも、彼なら文学史に残るだけの力量がある、と掛け値なしに思う。
だが。
最近彼の名前で発表された作品の、何作かに一作が明らかにつまらないのである。
特に『神の定石』、あれは本当に酷かった。物語の前提から破綻していて、なぜ彼があんなものを書いたのかすら理解できなかった。
そしてこの事実に、わたしは彼・イーゼ亀梨の身に危機が迫っているのではないか、と心配でならないのだ。
いや、『懸想文』が偶然で、この先『神の定石』のようなつまらない作品ばかり書いてしまうのではないか、ということを憂いているんじゃない。
では何を心配しているのだろうか？
【ウミガメ】
カニバる危機ですか？
NO:) …まだなかなかそういうネタは作れませんねえ。
つまらない作品が出るペースは一定ですか？
YESNO. ペースはあまり関係ないですが、確実につまらない作品がいくつか出る、というところでしょうか。 [良い質問]
作品のタイトルは重要ですか？ [編集済]
NO. このウミガメのスープの真相においては重要ではないです。
彼にはゴーストライターがいますか？
YESNO…とさせてください！ですがとても重要な要素！(何度も揺れてしまって申し訳ありません) [編集済] [良い質問]
危機、とは命の危機ですか？
NO…ですが事と次第によってはこの先YESになりうるのかもしれません。
別人がイーゼ亀梨の名をかたって作品を出していますか？ [編集済]
NO.別人が勝手に騙っているわけではありません。 [編集済]
この真相からすればYESともNOとも言えるかと思います。たいへん失礼いたしました。
駄作と言われる作品はイーゼ亀梨本人が執筆して、他の面白い作品は、ゴーストライターによるものですか？ [編集済]
NO!! 面白いものはすべて亀梨が書いています！ [良い質問]
編集者は関係ありますか？
YES！編集者というより出版社です！ [良い質問]
ｲｰｾﾞ亀梨は多重人格ですか？
NO.それぞれの人格が別人格の作品を否定して…みたいな展開は面白そうですが。
7より、逆に面白くない作品を、他の人が書いていますか？
YES!! ではなぜそんなことになっているのか、というのが真相です！ [良い質問]
(かぶったので編集)ストーカーは関係ありますか？ [編集済]
[編集後の質問に対して]NO.ストーカーが迫っているわけではありません。 [編集済]
問題文中の「わたし」は重要な人物ですか？
NO. 「わたし」は黒幕ではありません。
新人の作品を無名だと読んでもらえないからですか？ [編集済]
[編集後の質問に対して]ゴーストの立場から見ればYES! 解説では新人というわけではないのですが。 [編集済] [良い質問]
かぶったので… 2から、ペースは出す冊数が何かの倍数とか、何かの数字のつく冊数のときですか？ [編集済]
[編集後の質問に対して]NO. つまらない作品の共通点はつまらないこと以外にはありません。 [編集済]
イーゼ亀梨は盗作をしていますか？
NO. イーゼ亀梨の(面白い)作品は非常に独創性豊かです。
イーゼ亀梨は誰かに弱味を握られていますか？
YES!!まとめてくださいませ！ [良い質問]
つまらない作品がイーゼ亀梨の名で出版されることを、彼は良しとしていますか？
NO!! イーゼ亀梨は苦々しく思っているはずです！ [良い質問]
弱みを握っているのは、編集者ですか？
YES!! [良い質問]
イーゼ亀梨の弱みを握った何者かが、自身の作品を、イーゼ亀梨が執筆したものとして出版させていますか？
惜しい！ゴースト自体が脅しているのではないのです！ [編集済] [良い質問]
19より、脅しているのは出版社の人間で、他の無名の作家の作品を、イーゼ亀梨のものとして出版させていますか？
その通り！！まとめてくださって感謝！ [正解]
イーゼ亀梨の売れない作家がどうしても世に作品を出したいため、イーゼ亀梨の名前を騙って出版しましたか
NO.騙って勝手に出した、だと意味が異なるかと。(気づくの遅れてしまい失礼いたしました) [良い質問]
彼ほどの才能があるなら各出版社が放っておかないはずだし、彼としても選ぶ権利もあるはず。だが彼は、よりにもよって黒い噂の絶えない悪●党出版からほぼ専属契約かの如く出版を続けている。この時点でわたしはおかしいと思った。
そして『神の定石』がわたしの不安を確かなものにした。
その出来の悪さに見覚えがあった—そう、かつて新日本演芸団社からデビューしたもののあまりのつまらなさにいつの間にかフェードアウトしていた作家、メリー=K=メジャー—そいつの作品としか思えなかった。
そういえば、メリー=K=メジャーは今や悪●党出版で三文ライターをやっているらしい、と風の噂で聞いたこともあった。
つまり、わたしの心配とは。
イーゼ亀梨は、「メリー=K=メジャーの作品を自分の作品として発表することと引き換えに自分の作品を発表できる」ような契約を悪●党出版と結ばされている、としか思えないのだ。
彼ほどの才能を持った男がそんな極悪な条件を呑んでいるのだとしたら、それは悪●党出版が何か彼の弱みを握って脅している、そう推理したからだ。
一介の読者であるわたしには、彼を救う手段はないのだろうか—
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