誰もがそこにいた

この世界の中心に住む人食いは、大きかった。

大人の身長ほどもある、ウロのような目、そこから漏れる息だけでコンクリートのビルをなぎ倒す鼻、そしてまるで干上がった湖のような巨大な口を持っており、それらを備えた巨大な顔は、高層ビルの上階並みの高さで動いていた。

人食い退治にやって来た住人達は怯んだが、勇敢に立ち向かった。その巨躯目がけて、ミサイルや、鋭い槍を投げた。

ところが、攻撃が人食いに気づかれてしまった。人食いは、住人達を大きな手で鷲掴みにすると、そのレッドカーペットのような舌で住人達を巻き取り、一飲みにしてしまう。

そして、飲み込まれた住人達は、そこに、奇妙な世界が広がるのを見た。空はグロテスクな赤色をしていて、そこら中に根元からポッキリ折れた高層ビルや、不発のまま薄ピンクの地面に突き刺さったミサイルがあり、廃材で作った掘っ建て小屋に、少し前に人食いに食べられて行方不明になっていたはずの住人達が暮らしていた。彼らは、食べられてはいたものの、人食いのあまりの躰の大きさゆえに、消化されずに生き延びていたのだ。

そうして、人食いに飲み込まれた住人達は、とりあえず生き延びられた安堵と、これからの一生を赤い空の下で過ごさねばならない絶望を胸に抱えて、呆然と立ち尽くすのだった。