幾千のボール

ドーム球場では雪が降らない……そう思っていた時期が私にもありました。



ここはとあるドーム球場。

積雪量の多いこの地域で野球をするには、ドームが欠かせない存在となっている。



しかし人間は雪を甘く見ていたのかもしれない。



その日はとにかく天候が悪かった。

前日から降り続く大雪により、ここ十年で一番の積雪量を記録する。

だがその国全土が期待していた優勝決定戦が行われる予定だったため、中止にすることが出来なかった。



そしてプレイボール。

凍るような寒さではあったのだが、スタンドの観客の熱気が凄まじく、順調に試合は進んでいった。



だが悲劇が起こってしまう。



打球はセンターフライ。

一人の選手が合図して、ミットを上に掲げる。

そこであることに気付いた。



ドームがへこんでいたのだ。



そして白いボールをとろうとした次の瞬間！

大量の白い物が上から落ちてきたのだ！！



混乱した彼はボールを落としてしまう。

しまった！そう思った瞬間彼は大量の雪に覆われてしまった。



乗っかった大量の雪の重さによってドームが崩壊し、そこから重さ100kgの雪が降り注いだのだ。

彼は病院に運ばれたのだが、首の骨を折るなどの原因で心停止、還らぬ人となった。



プロ野球協会はこの件について、「大変遺憾である。せめて最後のキャッチに成功していれば、このチームの優勝は決定だったのに」

とコメントした。

(2022.1.16 ファフー通信)