ギャップに悩む今夜

私はクリスマスが好きではない。

恋人と過ごすのは日本人だけだ！とか、どうせ企業の戦略にのせられてるだけとか、言いたいことは山ほどある。

結局のところ、嫌いな理由は一つだけ。



クリスマスはみんなが幸せだ。



この大前提が大っ嫌いなのだ。



そうさ、どうせ私は不幸せな人間なんだ。

なんだってこう街はこんなにも輝いているのか。

私はうつむくしかないじゃないか。

精一杯身を縮めて、可哀想だと思われない様に。



常連のコンビニにすら入りにくい。

でも弁当が50円引きなのは嬉しかった。

こんなことにしか喜べない最悪な日なんだ。



……なんか悔しい。

このまま家で引きこもって現実逃避は悔しいぞ！！

よっしゃ、いっちょお一人様遊びするか！



威勢は良かったが、私は小心者。

ヒトカラも考えたが、人からの目線が気になり断念。



それならと行き着いた先がブックOフ。

在庫処分の安売り文庫本を思いっきり衝動買いしてやる！！



恐らくこの店でただ一人カゴを持って、そのカゴを両手持ちするほど本を詰め込んでいった。

その光景がよほど面白かったのだろう。

クスクスと笑い声が、すぐ隣から聞こえてきた。



「まるでサンタさんみたいですね。こんにちわ」

「……おう。元気か伊藤」



こういう時に一番会いたくない人。

初恋の人だった。

大人になると都合のいい期待よりも、大切な思い出を守る方が大事になってしまう。

こいつに今の私の惨めなところ、見られたくない。



「久しぶりだな。それじゃ私は用があるのでこれで」

「いやいやいやいや、待ってくださいよ。嘘でしょそれ。どうせ家に帰って本を読みつつ現実逃避でしょ」



鋭いな。さすが私が見込んだやつだ。



「……なんだよ。恥ずかしいから帰らせろよ」

「いいじゃないですかー、サンタさんっぽくて。私にもプレゼントくださいよ」

「んー？じゃあ、ほれ」

「何ですか。弁当？」

「ファミMで50円引きだった。私の今日唯一の幸せをくれてやる」

「おいこら待て、待て。せめて文庫本よこせ」

「やーだよwていうかお前も地味になったなー」

「うるせえwお前人のこと言えねぇだろw」



きっかけというものはよくわからんもので、なんなんだろな。

話す前はもう昔の人で、大切で、触れるのも怖かったんだが。



一瞬にして崩壊するんだなw

期待外れだったが、好きになった。

いやあ、想像してたのはもっと清楚でオシャレな子だったんだがなぁ。



「その黒ぶち眼鏡はねーわw」

「なんだと。ちょっとカチンときました。どうせ暇なら今夜はとことん付き合ってくださいよ」

「いいだろう。寂しいお前のために、今日は私の大切な時間を使って、一晩中お相手してあげよう。カンシャシロ！」

「カンシャシマスヨー(￣▽￣)」



お互い喧嘩しているつもりだったんだが。

チクショウ、周りの客がニヤニヤしてやがる。

分かったよ、認める認める。

今最高にハッピーだよ。



「お客様。他のお客様に迷惑ですよ(⌒▽⌒)ニヤニヤ」

「「スイマセンしたー！」」



さてとこれから先のことを話すつもりはない。

自慢になるだろうし、恐らく冷めた目で見られるだろうしな。



だがこれだけは言いたい。

クリスマスは特別な日だ。

それは恋人同士に限らず、家族同士にも限らず。

そこで座っている知らないおっさんも悪人も。

みんながみんなで幸せを祈る日だ。



祈るだけじゃない。

外を照らす照明も、やかましい音楽も、たっかいケーキも。

みんながハッピーになれるように用意されたものだ。



もしかしたら、貴方はそれを拒むかもしれない。

ギャップについていけず、縮こまってしまうかも。



そういう貴方にこそ幸せが必要なはずだ。



だから私は書くよ。準備はいいかい？



「届けーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。この思いいいいいいいいいい。大好きな貴方へーーーーーーーーー！幸せになれええええええええええい」



最後ふざけました。ごめんなさい。

でも皆さんが本当に好きです。

だからこの思いが少しでも届けばいいなと思うふわなのでした(*'-'*)