サンド・イン・トゥ・ザ・ポケット

・

ＦＡ条件：投手カメオは体調不良ながらもほぼ完璧な投球でライバルウミタのチームに点をやらずに勝利した。

その前日鼻をかんだティッシュをゴミ箱にロングレンジで投げ入れる事に成功していた事を思い出したウミタは、フラグたってた！と油断していた事に後悔して甲子園の砂を持ち帰った。



－－－－－



「やばい、喉痛い。鼻もぐずってきた。…ヘクション！」



ウミガメ高校のエースピッチャーであるカメオは、その幼馴染でラテラル学園付属の四番バッターにしてキャッチャーのウミタと話していた。



明日、甲子園の決勝で二人は相対する予定だ。



偶然同じホテルだったため、互いの監督に許可をもらってロビーで談笑していたのだが、カメオは思いっきりくしゃみをした。



「明日の決勝大丈夫かよw」



「んー、大丈夫だろ。ヘクション！」



備え付けのティッシュを取って鼻をかむカメオ。



「ひさしぶりだってのに、しまらねぇなｗ」



ウミタが突っ込んだが、ははっと爽やかに笑った。



少し離れた、プラントのそばにゴミ箱を見つけたカメオは立ち上がらずに腕を振った。



ふわりと入る。



「ナイスー。って、アレくらい歩いていけｗ」



「ですよねーｗ」



その１６時間後、ウミタは甲子園のバッターボックスでくず折れていた。



3打数0安打。



それどころかチーム全体でのヒット数がたったの3本。



大敗を喫した。



「俺が、俺がアイツの調子を見極められなかったから…！」



そう、快調の兆候はあったのだ。



夕べ、談笑していた時にゴミ箱にあざやかに投げ入れたティッシュ。



「体調不良なんかどうでもいいくらい、アイツの投球は…万全だったんだ！！くそ！！うわあああああああああっ！！！」



カメオは地面を叩き、動けなくなった。



少しして、地面の砂を握り、ポケットに入れた。



「コレは、俺の挫折の証だ。…プロに入れたら、あいつに必ずリベンジしてやるんだ。」