空回る喜び

こ

の日の為にカメコの孫であるモハメドが開発した、リアルタイムWEBカメラディスプレイグラス（メガネ型のディスプレイ）。



式場に配置された人型汎用ロボットと連動し、ロボット側に搭載されたカメラの映像を、ディスプレイグラス側に３Ｄ映像として投影し、まるでその場にいるかのように周囲の画像を見られるのだ。



ほぼ寝たきりのカメコおばあちゃんは、遠く離れた孫のモハメドの結婚式場にいくことは出来ないが、その場を見ることが出来た。



自分たちの顔が見やすいようにロボットのカメラ近づくモハメド。



「あ、モハメド…」



３Ｄ映像でよりリアルに近づいてきたようにみえた。



思わず抱きしめようと両腕を伸ばす。



空を切った。



カメコの様子を収めるカメラの映像が、会場でリアルタイムに流されていた。



「ああ、そうか。ばーちゃるりありてぇってのだったね。」



『バーちゃん、休み取れたらそっちいくから、そんときぎゅっとしてや。約束な。』



「ええんよ。こんなに間近で見られるだけ、バーちゃん幸せもんよ」



『おばあちゃん、モハメドさんの妻になりました、サキです！』



「まっためんこい（かわいい）子だこと！モハメドのことよろしくお願いしますよ」



『はい！私もぎゅっとしてくれますか？』



「もちろんだよ…」



心はつながる。



どんな形であれ、顔を見て声を交わせば。



＊結婚式に遠隔出席していたおばあちゃんが、映像と知りながらつい孫たちに手を伸ばしてしまった。

腕は空を切り、その場にいないことは悔やまれるがそれでもリアルな映像で式場の雰囲気を味わえたことに感極まっている。