東京メランコリニスタ

2XXX年

荒廃しきった東京の街で、対峙するガメヲとゴジヲ。

ナワバリとかプライドとか正義とか愛とか、そんななんやかんやを巡って繰り広げられてきた死闘は、今まさに決着の時を迎えようとしていた。



疲弊しきったゴジヲには、もう火を吐くほどの力さえ残されていなかった。かくなる上は、と足元に生えている333mの赤いタケノコをみながらゴジヲは思った。

かくなる上は、この真っ赤な鉄杭をガメヲの心臓に突き立てるしかない……！

ゴジヲは東京タワーを地面から抜き取り、さながら槍のように構えると、牙突一閃、ガメヲに向かって走り出した。



一方、ガメヲもほとんど瀕死といった状態であった。あまり多くの攻撃手段は残されていない。なにやら赤い鉄塊を構えて突進してくるゴジヲを見ながら、ガメヲは直感していた。

次の一撃で全てが決する‼︎

ガメヲは、手近にあったスカイツリーを地面から引き抜いた。その634mにも及ぶ鉄の棒を、あたかも金属バットのように構え、左足を高く上げた。一本足打法である。



決着はまさに一瞬であった。

手元で伸びるタワーに、ツリーの振りがわずかに遅れた。その一瞬の遅れをつき、ガメヲの心臓めがけて精確に放たれた東京タワーの先端は、痛快な音を立てて皮膚に沈み込んで行く。遅れて振り抜かれたスカイツリーは、勝利を確信したゴジヲの頭部を芯で捉えていた……





……

「……まだ話さないとダメ？……だから俺、その時間は映画館で『ゴジヲ vs ガメヲ the FINAL』観てたんだって。最前列でさ。さっきから言ってんじゃん。スリなんてしてないスよ」



「うむむ……たしかに半券も持っとるようだし、物盗りのためにアリバイ工作というのもなんだかなぁ……すまなかった。帰ってくれて構わないよ」