身ぐるみ全部置いてきな

「すみませーん、水崎さん、聞こえてます？」



チャイムを鳴らし、待ってもなかなか出てこなかったので、強めにドアを叩く田中。



隣に越してきた水崎さんの部屋から、やたらとガションガションという音や、ダンサブルな音楽、妙にハキハキした「ワン・ツー・ワン・ツー」というカウントの声がしてくる。



エクササイズマシンの音だろう。



壁の薄いアパートだ。

筒抜けだ。



水崎さんが引っ越してきてからほぼ毎晩、聞こえてくる。



このままだと寝不足になりかねない。



思い切って田中は文句を言うことにした。



「ハーイ、ちょっと待って下さいね～」



中から女性の声が聞こえた。



どたばたしながらドアに近づいてくる音がする。



ガチャっ。



「お待たせしましたぁ～。あっ」



何か液体がバチャッと掛かった。



「あああ！ごめんなさい！わ、私、筋肉フェチで自分の筋肉も鍛えようと！晩御飯の代わりにプロテイン牛乳を飲みながら運動してて！」



「…それは良いけど、もう少し静かにしていただけます？」



「はい！ごめんなさい！気をつけます！お洋服洗います！」



「え、ちょ、ま」



パンツ一丁にされたカメオ。



あわてて水崎の部屋の玄関に上がりドアを閉めた。



「そ、それくらい自分で洗いますから！」



「まあ、見事なシックスパック！┏(┏＾p＾)┓」



＊ＦＡ条件：ドアを開けた瞬間に事故で飲み物をぶっ掛けられた。

それを洗うといって勢いよく服をひん剥かれた。