夜を彩っていたイルミネーションは植物の蔓のようだ。ビルには埃が積もり長い間、放置されていたことを感じさせる。
――『立ちされ頭を見つけろ』
中性的で抱擁力のある声だった。心地良さげに耳を澄ます。けれど声はもうしなかったので、少女は唇をとがらせた。
《ルール》
1.質問の指示に従って少女は動きます。少女が疑問に答えることはありません。
2.基本は早い者勝ちです。指示が被った場合は最初の人の指示が反映されます。
3.解答には少女の行動の結果が反映されます。
4.それでは短めですが、よろしくお願いします。
【新・形式】
目の前を見渡して何があるか伝えてください。
少女は辺りを見渡した。少女がいるのは並木道だ。灰色の空に対応するようなコンクリートのビルは、崩壊しているものばかり。 [編集済]
持ち物を教えてください
彼女は灰色のシャツとスカートを身につけている。元の色はすっかりと忘れてしまっていた。持ち物といえるようなものは、何もなかった。
声に聞き覚えがないかよーく思い出してください。
あの声は誰のものだろうか。少なくとも自分のものではない。少女は他の人間の声を聞いたことがなかった。 [良い質問]
自分自身が五体満足かどうか、確認してください。
彼女は手をぎゅっと握りしめた。軽く辺りを走ってみる。振り子のように揺れる両腕が心地良い。このまま、どこまでも走り続けていられるような気がした。
周囲にロボットもしくはその残骸がないか、確認してください。
彼女は走りながら何かないかと探してみた。あるのは木々のみだ。彼女は元の場所へもどると、一息ついた。
木々に生きている感じはあるか、触ってたしかめてください。
少女は木に寄りかかって座ることにした。いつもと同じ態勢で座ると、いつもと同じ感覚が返ってくる。安心して少女は眠くなった。
ここは現実世界ですか?
少女はうとうとしている。
とりあえず自分の頭を叩いてください。
少女は頭をコツンと叩く。……痛い。少女は涙目になる。
あとほおをつねってください。
少女は頬をつねってみる。固まった土が取れて、白い肌が覗いた。
食糧の確保のため、崩壊したビルの中に入って、飲食店を探してみてください
少女は建物の中に入った。銀色に光る金属の箱はわずかに見られるものの、開くことはない。少女はいつも通り、植物を土から抜いて食べることにした。
周りに人間もしくは動物がいないか、聞き耳して確かめてください。
少女は自分と同じ存在を見たことがなかった。彼女が知っているのは動くことのない風景だけである。
よーく…自分の事を思い出してみてください
少女は自分を疑ってみた。この世界で唯一動ける自分とは、どういったものなのだろう。しかし答えは返ってこない。あるのは自分は自分であるという自我だけだ。
9 取れた土について、可能な限り分析して報告してください。
これは土に寝転んだから付いた土だ。痒くなるから今度、川で洗うことを少女は決めた。
9より、固まった土はからだじゅうについているのですか?全身像が写りそうな鏡か窓ガラスをさがして土がついている部分とそうでない部分を教えてください。
少女は川に映る自分の姿を見た。くまなく汚れているが、服に守られた部分は別だ。彼女はついでに水浴びをすることにした。
一等古い記憶を話してください
少女はふと考える。いつから自分は存在していただろうか。自分はこの姿のまま、ここにいた。最初から汚れた姿で。それは兎も角、今はあの声の指示を実行することが重要だろう。
「おーい」って叫んでみてください。
「おーい」彼女は久しぶりに声を出してみた。自分の声というものはいつ聞いても不思議だ。自分はいつからこんなものを取得していたのだろう? こんな風に知らないことを勝手にできるようになったらいいのに、と少女は思った。 [編集済]
一度目を閉じて、この街のかつての姿を想像してみてください
この街も、自分と同じように汚れたのだろうか。きれいな姿を思い浮かべようとしても、少女にはできなかった。
どちらの道から来たのか思い返してください。
少女は並木通から川へきた。彼女は道筋を思い浮かべると、きちんと帰れることを確認して頷いた。
「頭」についてなにか思うところがあれば教えてください。
こうべ――こうべとは頭のことだろうと少女は思う。でもそれをどう見つけろというのか? [編集済] [良い質問]
あなたの頭はちゃんと首から胴体につながっているかはっきり答えてください。
少女は川を再び覗き見る。首を触ってみても、胴を触ってみても、いつもどおり、きちんと繋がっている。自分は何をしているのだろう――少女は座り込んだ。
聞いた声の内容を、一音ずつ引き延ばしながら発音してみてください。
「たー、ちー、さー、れー、こー、うー、べー、をー、みー、つー、けー、ろー」少女は初めて聞いた声の主の姿を思い浮かべながら、楽しげに発音した。 [良い質問]
一度、その場所から立ち去ってみてください
彼女は並木道に戻った。さて何をしようかと、彼女は足をぶらりと揺らした。
立って、髑髏を探してください。 [編集済]
そうだ、墓地! 髑髏が埋まっているのなんて墓地しかないじゃないか。少女は墓地へ行くことにした。少女は卒塔婆の前で屈みこむと、うきうきと掘り出した。 [編集済] [良い質問]
『神戸』という都市の文字が周囲にないか調べてください。
彼女は文字が読めない。神様も文字くらい読めるようにしてくれればよかったのに、と少女はいじけた。
もし遠くに妙な形のした塔が見えたなら、そこに行ってみてください(神戸タワー) [編集済]
彼女はまだ墓に留まることにした。あの声の正体を知りたかったからだ。 [編集済]
必死に手で墓石の下を掘る。地面は泥濘んでいて掘り進めるのは簡単だ。深さはあるので多少は時間が経ったが。少女は満足そうに髑髏を天に掲げた。
――『自分を見つめなおすことだ』
またあの声だ。少女は「誰なの?」と問いかけようとした。しかし声は続かない。
少女は髑髏を手に包むと、再び歩き出した。[編集済]
墓地を掘り返す前に手を合わせてお墓の下の人を慮って一礼してください。
「……ありがとうございました?」少女は一礼した。
さっきまでの自分と何か変わったところがあれば教えてください。
少女は上機嫌に小川へ行って、自分を見つめなおした。……特に変わった様子は見られないけれど、と少女は思う。あの声は何を思ったのだろう? [良い質問]
掘りだしてしまったなら、振り返って26と同様のことをしてください。
「……ありがとうございました?」少女は再度一礼した。
小川に行って、自分の姿を見つめてみてください
少女は上機嫌に小川へ行き、自分を見つめなおした。特に変わった様子は見られない。あの声は何を言っているのだろう? [良い質問]
では、なにか思い出したことがあれば教えてください。 [編集済]
少女は目を瞑むって回想する……自分はこの姿のまま、ここにいた。最初から汚れた姿で。それから今まで、同じ生活をしてきた。特に変わったことは見られない。
掘り返した髑髏を見つめなおしてみてください。
少女は髑髏を見つめた。 [良い質問]
自分の事を再度、思い出してみてください
少女は髑髏を見つめるのに必死だった。
21 思い浮かべた声の主の姿を、言葉で表現してください。
少女が思い浮かべたのは偶像だった。声から作り上げた、自分と同じような姿の、声の主。 [編集済]
――『そう、自分だよ』
髑髏はそう云った。
――『自分が求めているのは、きみの魂だ』
少女は自分の心臓に腕をやった。
「魂をあげたらどうなるの?」
――『君は死ぬ』
死というものが何なのかは解らなかった。でもきっと良くないことなのだろうと思った。
――『君に、30、時間をあげよう。自分に魂をくれたらなら、死後の安寧をきみにあげることを約束する。自分の他にも、きみに約束を求める声があるかもしれないが……そのときは、したがわないほうがいいと思うがね』[編集済]
髑髏に対して、なぜ少女の魂が欲しいのか、聞いてみてください。
あれから髑髏は動かない。時間がくるまで何も喋らないのだろうか。少女は寂しくなって、辺りに座り込んだ。 [編集済]
今聞いた髑髏の声に聞き覚えがあるか、考えてみてください。
少女は今までに自分以外の声を聞いたことがなかった。声を持つのはこの世に自分と髑髏の二人きりなのだろうか……。
立って、先ほど探した髑髏とは別の髑髏を探してみてください。
少女は墓地へ向か合った。いくつか髑髏を手にし掲げるものの、声を発するものは一つもない。少女は『死』というきっと良くないものを想像して、身を震わせた。
また川へ行って自分を水に映してみてください。そして自分がどういう姿をしているかを教えてください。
彼女は墓から川へ向かう。今日は幾度と無く川へ向かっているが『死』という言葉を聞いた後では、何となくすべてが新しく思える。少女は改めて自分の姿を水に映した。付いていた土は、先程の水浴びのおかげですっかりなくなっている。空の光が反射するせいで、真っ白な肌が見辛かった。すっかりと色が変り、灰色になった服とズボン。少女は濡れてしまったそれらを、軽く撫でた。
30より どんな生活をしてきたのか思い出してください。
土の上に寝、木に寄りかかる生活に未視感が生じる。少女は植物の根を齧る。いつも通りの味。それが何となく愛おしかった。
木に登ってみてください。
少女は木に登った。窪みに指を引っ掛け、二の腕に力を入れる。一つの動作は非常に力がいるものだったが、少女はすらすらと、ピアニストがピアノを弾くかのように自然に終える。木に登ると灰色の街が見渡せる。別段変わったことはないが、胸が締め付けられるこの気持ちは何なのだろうかと少女は思った。 [編集済]
街を探索してみましょう
少女は歩き出した。柔らかい土壌をしっかりと踏みながら。少女は寂れた公園の滑り台が好きだった。朽ちて砕けそうな鉄の階段を、ゆっくりと登り、滑る。こうしていると胸の支えがなくなるような気がするのだ。しばらくそうして遊んで、今度は廃ビルに立ち寄った。中は土でいっぱいだ。少女は咳き込むと、廃ビルから立ち去った。 [編集済]
公園の他に好きな場所に行こうか 無かったらイルミネーションのところに行ってね [編集済]
少女はイルミネーションというものがどういう働きをするのか解らない。ただ名前だけを知っている。軽く触ると崩れて、イルミネーションの残骸が手に付いた。それを眺めていると少女は、何だか殘念な気分になった。
喋っていた髑髏が埋まっていたお墓の、墓石と卒塔婆に書かれている内容を、ここにそのまま書き写してください。
卒塔婆は黒ずんでいて、文字があるかどうかも怪しい。墓石には、家之墓、と刻まれている。家、という文字より前は風化していた。少女は読めない文字の前で、退屈そうにうろついていた。 [編集済]
ところであなた、お名前は?名前をおしえてください。
少女に名はない。名前とは上の者が下の者に付けるもの。又、人間は少女ただ一人。この世界にたった一人の少女には、私は私、という定義だけで十分なのである。
家族のことを思い出してください。
少女に家族は居ない。アダムが神の息吹と土から生まれたように、少女は世界にぽつんと現れた。家族という言葉を知ってはいても家族なんて存在しない。
23より 髑髏が墓地にあるのをなぜ知っていたのかおしえてください。 [編集済]
墓地。屍体が眠る場所。永遠の安寧を得る場所。今までは必要がなかったので掘り出さなかったが、今回は必要があった。だから掘り出したのだ。墓地に髑髏があるのは知識の中にあった。
なんでもいいので、頭に浮かんだことを声を出して言ってみてください。 [編集済]
「……死ぬのは、怖い、かも」少女は身体を竦めた。
喋っていた髑髏が埋まっていた墓を完全に掘り返し、骨を人間の体の形に並べてみて、自分の体型と比較してみてください。
「……ありがとうございます?」少女は墓地を漁るのに慣れてきている。すべて掘り出してみて驚いた。骨を組立てたら自分の身長を越えていたからだ。肉が付いたら身長がどのくらいになるのだろう。
死にたくないと思うのなら、絶対に髑髏に魂を渡さないでください。
少女は悩んでいる。髑髏の声。あれが唯一、寂しさを紛らわせてくれたものだからだ。 [良い質問]
48 大丈夫です!これからはKUZUHARAというやつが、いつでもあなたの相手をしてくれます!
少女は悩み疲れてうたた寝をしている。 [良い質問]
ドクロを粉砕しましょう 死ななくてすみますよ
パキン、と髑髏が割れた。 [良い質問]
――『諦めなさい。他の者と契約を結ばぬままなら、君は残り13時間で死ぬ』
契約……契約……誰と結べば良いというのか。
救いを差し出す声は聞こえぬままだというのに。
/人◕ ‿‿ ◕人\<僕と契約して魔法少女になってよ!
少女は髑髏の言葉を考えている。 [良い質問]
51 /人◕ ‿‿ ◕人\<僕と契約して魔法少女になってくれたら、なんでも一つ、君の願いを叶えてあげよう。こんなところで死ぬことなんてないんだよ!
少女は髑髏の言葉を考えている。
――『私の声が聞こえたら、ぽんぽこぺ〜んと叫んでください』
「……!! ぽんぽこぺ~ん!!」少女は叫ぶようにしていった。 [良い質問]
『私は神……少女よ……自らの魂を無駄にするでない……』 [編集済]
「か、神様!? わかった。あの髑髏のいうことは聞かない……でも、誰かと契約しないと、私は死んじゃう……」少女は続けて二人の声が聞こえたことに驚いた。でも、神様も意地悪だ。ずっと前から声をかけてくれれば良かったのに。少女は唇を尖らせた。 [編集済] [良い質問]
『……ここにいるぽんぽこぺ~んと契約し……魔法少女になるのじゃ……』
「魔法少女……? が何かは分からないけど、契約したら私はどうなるの? 痛いのは嫌だから、たとえ神様のお願いでもちゃんと訊かないと」少女は契約という単語に懐疑的だった。あの髑髏だって優しげな声をしていたが、あんなことをいうのだ。神とて何をいい出すのか、わかったものではない。 [編集済] [良い質問]
『こんばんは。ぽんぽこぺ〜んです。すみません。なかなかあなたへの話しかけ方がわからなくて、時間がかかってしまいました。ぜひ私と契約して魔法少女になってください!魔法少女になったら、親切な魔法使いさんと一緒に旅をすることになるのです。世界各地でいろいろな美味しい料理を紹介してもらえますよ!!』 [編集済]
世界に亀裂が入った。 [正解][良い質問]
楽園で堕落した人間たちは、林檎の甘みに味をしめ、核戦争を引き起こした。あとはよくある話だ。人類は滅亡した。それだけの話。
それから数千年が経ち、少女はぽつりとこの世界に辿り着いた。
あのとき。髑髏に魂を捧げたあのとき、髑髏は死後の安寧を約束した。
【安寧:無事で安らかな様】[編集済]
しかし、逆に言えば、死後の世界に誰も居なければ、軋轢など生じない。
死んだ人々も都市も蘇えり、天国も地獄も空っぽになった。
賑わう世界を、少女はただ一人、天で見る。
望んでいた光景を、手に届くことのない光景を、羨ましげに見つめながら。【BAD END 1 復興する都市】[編集済]
魔法使いと契約を結んだ少女は――
魔法使い。
何とも胡散臭い称号だけれど、それを言えばその弟子というか何というか、魔法少女になってしまったからには自分を否定することにもなってしまう。
親切な魔法使い。
聞いたときは嫌な予感がしたけれど、神様が勧める人だし嘘はないだろう――と思って契約を結んだ。今になって考えてみれば嘘はなくとも隠し事はあったのかもしれない。
まあ、会ってみれば普通の人だ。案ずるより産むが易しの言葉通り、事はスムーズに行われた。市井の人間には戸籍やら何やら決まり事が多いらしいけれど、魔法使いは縛られない存在だ。魔法使いに決まり事はない。
約束通り、料理をたくさん紹介してもらった。牛、カニ、豚が特に最近のお気に入りだ。あと一つはどうしても名前を教えてもらえなかったけれど。まあ、変なものは食べさせられてはいない……はず……。その辺は正直あんまり自信がなかったけれど、自由ではあっても孤独ではない生活に、私はようやく慣れてきた。
風がさらりと流れた。
あなたが立ち止まっているときに風や何かの匂いをふと感じたときは、魔法使いが通ったあとかも知れない。
今は文字だって読める。もし何かあったら――何かあったら、私宛に手紙を綴って欲しい。その手紙を掲げてくれたなら、風が吹くだろう。それが、私が手紙を読んだしるしだ。文字が汚くて恥ずかしいから返信はしないけれど、おまじないを掛けさせてもらおう。
内容は秘密。魔法使いに秘密は付き物だから。
『――』
私を呼ぶ声がする。
名残惜しいけれど、また今度。
今度は私が、あなたの幸せを祈ります。
【TRUE END ∞ 優しい魔の手】
[編集済] [06日00時22分]
「Goodスープ認定」はスープ全体の質の評価として良いものだった場合に押してください。(進行は評価に含まれません)
ブックマークシステムと基本構造は同じですが、ブックマークは「基準が自由」なのに対しGoodは「基準が決められている」と認識してください。