復活の『F』！！

☆解説が無駄に長いです。結果だけ知りたい方は一番下のまとめをどうぞ！☆





僕には学生からの夢があった。

中学・高校と仲間を集めてバンドに明け暮れていた僕は、本当はミュージシャンになりたかった。



しかし、進路指導の先生には「もっと現実を見ろ」と言われ、

親には「もっと金になる仕事をしろ」と言われ、

友達からはただ、笑われるだけだった。



そしていつだったか僕は、自分がとても価値のないものを追いかけているのだと悟った。





そして月日は流れ



僕は暴力団【海亀組】の組員になった。



僕は当時、現状に対して、おおよそ満足していた。

借金の取り立てなど仕事は非常に現実的であり、なにより金になり、僕を馬鹿にし笑う者は誰もいなくなった。



昔の夢とは随分かけ離れた場所に来てしまったが、まあいいじゃないか、そう自分に言い聞かせていた。







そんなある日、僕は彼に出会った。



最初に彼に会ったのは、駅前の寂れた商店街の片隅だったと思う。

僕より一回りは年上に見える彼はアコースティックギターを手に、凛然と音楽を奏でていた。



僕は演奏だけでなく、そんな彼の姿を美しいと思った。



演奏が終わるのを待ち、僕は彼に話しかけた。

ヤクザ風の男に話しかけられた彼は最初は驚いていたが、僕が不器用ながら、彼の演奏に感動した旨を伝えると、彼は笑顔で受け入れてくれた。



僕と彼が友人になるのに、そう時間はかからなかった。



高校を卒業して以来ずっと、独り路上ライブを続けてきた彼は、今度小さな規模ではあるがライブハウスでの演奏が決まったらしい。



僕は彼が羨ましくなった。僕が捨てた全てを彼は持っていて、なんだかそれがとても大事な物であるように思えてならなかった。





僕は祝福の言葉のあとに、自分もミュージシャンを目指した時期があったという話を、自虐調に語った。



すると彼は、諭すでも笑うでもなく、まっすぐ僕の目を見てこう言った。



「君は今幾つだ？25？まだまだ若いじゃないか、『目指していた』なんて言うな。妥協するな。人生は一度きりだ、最期に後悔することがないよう行動する事こそが俺達が『今』出来る全てなんだよ。」





その日彼と別れてから、僕は学生時代に使っていた黒いエレキギターを押入れの奥から引っ張り出し、狂ったように掻き鳴らした。



そして翌朝、僕は組を抜ける決心をした。





ミュージシャンになりたいから組を抜ける、と言うと、仲間たちは皆笑い、僕を馬鹿にした。



それでも僕は構わなかった、彼だけが笑わず真摯に向き合ってくれるならそれで十分だ。





「出ていきてえなら結構だ、こっちも続ける気のねえ奴に任せる仕事はねえ。ただし、ケジメはつけさせてもらう。お前の入った世界はそんなに甘くねえんだ。」



組長がそういうと、僕は数人の男に取り押さえられた。そして…







数時間後、僕は組を抜けることができた。左手の小指と引き換えにして。





…これで晴れて僕も堅気になった。



僕は自宅に戻ると止血もそこそこに、黒いエレキギターを抱き寄せ、一つずつ、音を奏でる、が、しかし、



"F"の音が出せない！"B"も"G"も押さえ方次第では小指を使わなくて済むが、"F"のコードだけは小指がないとどうしようもなかった。





なんてこった、ミュージシャンになる夢を追うために仕事を辞めたのに、そのせいでギターが弾けなくなるとは笑い種だな…







僕は皮肉に笑い、一度諦めた夢を、もう一度諦めた。











=====後日談=====





あれから1年後、僕はとある工場で働いていた。



小指のことは、以前働いていた工場で機械に巻き込まれ、切断したという事にした。





彼はあの後、偶然ライブハウスに来ていたレーベルのプロデューサーにスカウトされメジャーデビューを果たし、なかなか売れているらしい。



最後に彼に会ったのはもう半年前になるか。手袋をはずし小指の欠けた左手を見せると、彼は「そうか…」とだけ言った。





僕は仕事が休みの日は自宅でギターで"F"コードを使わない曲を弾いて過ごす。

7年のブランクがあったものの、ここ1年だいぶ上達した。なにより、ギターを弾いている時はライブに明け暮れていた青春時代を思い出し、気分が良くなった。



これだけでも、彼に感謝しなくちゃあな



そんなことを考えていると玄関のチャイムが鳴り、一つの小包が届いた。

差出人を見るとそこにはなんと彼の名前が…



僕は驚いて中身を確認した。

箱には手紙が同封されており、彼の書いたいびつな文字が並んでいた。



「遅くなってすまない、最近やっとまとまった金が出来たんだ。夢を追って行動した君を俺は尊敬する。後悔はさせない。－君の友人より－」



ずしりと重みのあるその箱の中には、金属製の義指が入っていた。





僕は震える手でその義指を取り付けると、長い間聞きたくて仕方なかったその音を弾いた。



"F"





====================









甘☆党「こんなストーリーでどうですかね？タイトルはずばり『復活のF』これは売れますよ！（^w^）」



監督「え～、なんかありがちなストーリーだしなぁ、それにお前『復活のF』ってそれ、今度やるドラゴソボールのパクリじゃん」



甘☆党「ダメですかね？一生懸命考えたんですが・・・（´・w・‵）」



監督「それより『復活のF』上映まであと1ヶ月ちょいじゃん、一緒に観に行こうぜ！」



甘☆党「うっす（^w^）」













まとめ！



・カメオはミュージシャンになりたいヤクザだった。

・ヤクザ（仕事）を辞めるために指を詰めなきゃならないカメオは、どっちにしろギターで食っていくことは出来ない体になってしまった。







ここまで全部読んでくれた人は本当にありがとうございます！



マイナーコード？知るかボケェェェェェェェ！（^w^）