校長の話を聞き流しながら、牛削りは3年間の中学校生活を思い返していた。
1年生。クラスメイトの芽訪れさんに恋をした。放課後におしゃべりをするのが楽しくて仕方なかった。
2年生。クラスが別々になり、話す機会もなくなった。もう一度仲良くなろうと奮起するも実らず。
3年生。もはや奮起することさえ諦めて、恋心を鎮火しようと無駄な努力をした。
そして高校は別々になってしまった。
今までも会う機会は少なかったが、来春を迎えればもっと会えなくなる。
このままでいいのか?
長い自問自答の末、式典の終わり頃になって、ようやく牛削りは決意した。
よくない。芽訪れさんに気持ちを伝えたい。
するともう居ても立ってもいられなくなり、最後のホームルームを終えるとすぐに、
学校を飛び出し全力で駆け出した。
……ってなんで? 芽訪れさん放っとくの?
芽訪れさんは海外留学のためすでに空港にいますか?
no!
芽訪れさんはホームルーム後、学校内にいますか?
yesno わかりません。 [良い質問]
芽訪れさんの進路は重要ですか?
yesno 解説では重要なポイントになっていますが、問題を解く上では必要ありません。
恋は実りましたか?
no!
駆け出してどこに向かったか特定は重要ですか?
yes! [良い質問]
←卒業式後告白してふられたひと(ノД`)
ご愁傷様です……
芽訪れさんには会えましたか?
yes! [良い質問]
1、2、3年生の甘酸っぱいエピソードのくだりは重要ですか?
yesnoとだけ
涙を見られたくないので雨の中をわざと飛び出しますか?
no!
学校の教室にいる芽訪れさんの位置からよく見えるように、学校傍のビルに、告白の言葉を書いた幕をたらしますか?
no! そんな気障な男ではないですw
海に走って行って、太陽のばかやろーと叫びますか?
no!
在校生は重要ですか?
no!
伝えたい気持ちとは、愛の告白のことですか?
yes! [良い質問]
芽訪れさんは転校していますか?
no!
学校を飛び出し正門前に陣取った牛削りさん。こうすれば少なくとも、芽訪れさんがまだ学校内にいる場合、すれ違わずに合うことが可能ですか?
no! 学校の敷地内からはだいぶ離れます。
帰宅して何かカッコいい衣装に着替えますか?
no! 既にカッコいいです。
えねこー☆さんが卒業式にフラれたことは重要ですね?
yes! とてつもなく重要です。
芽訪れさんは実在しますか?
yes! 一応実話ですからね。
牛削りさんが飛び出していったとき、芽訪れさんはまだ校内にいますか?
yesno わかりません。 [良い質問]
芽訪れさんにあったのは駆け出していった目的地でのことですか?
yes! [良い質問]
5より 向かった先に芽訪れさんがいますか?
yes! [良い質問]
牛削りさんはどこかへ向かって走って行ったあと、学校に戻りますか?
no!
準備が必要なので急いでいましたか?
no!
17は嘘ですね?w
本当です。残念ながら。
牛削りさんは、芽訪れさんがその目的地に行くことをわかっていましたか?
yesno 芽訪れさんが「行く」というよりは、「いる」ことを知っていました。 [良い質問]
牛削りさんはメールや手紙で芽訪れさんを呼び出しますか?
no!
比喩表現はありますか?
no!
卒業式前日の話でも成り立ちますか?
yes! まあ成り立つっちゃ成り立ちます。
芽訪れさんの進学する高校にいきましたか?
yes! でも「進学する」というよりは……
芽訪れさんの自宅に行きましたか?
no! 自宅を知りません。
芽訪れさんは卒業式の日、出席しましたか?
yes!
芽訪れさんとは、犬の名前ですか?
no! ここに来て設定ひっくり返さないよさすがにw
実に牛削り18才。高校の卒業式の日の出来事であった……ますか?
yes! 素晴らしい!!! 正解です!!! [正解]
芽訪れさんは卒業式に出席していましたか?
yes!
牛削りさんが駆け出して向かった先は屋外ですか?
yes!
芽訪れさんは星野君と付き合うことになりましたか?
no!
駆けずに歩いては成立しませんか?
no!
気持ちを告げたとき、芽訪れさんは高校生ですか?
yes! これも正解! [正解]
芽訪れさんは3年生の春、交通事故で亡くなっていたのでお墓で告白しますか?
no! 殺すなw
芽訪れさんがえねこー☆さんから告白されるという噂を聞きつけ、芽訪れさんが呼び出されたという場所に駆け付けた牛削りさん。まさにえねこー☆さんが振られているところでしたが、牛削りさんは気にせず自分も芽訪れさんが好きだと伝えます! ……しかし芽訪れさんは牛削りさんをも振りました。彼女が選んだのはそう、とかげさんだったのです……ますね?
今気づいた。長文おつw でもぜんぜんちげーからwwwwww
「うしけずりのはつこいのはなし 〜その1・あくしゅ〜」
http://sui-hei.net/mondai/show/12288
「うしけずりのはつこいのはなし 〜その2・せなか〜」
http://sui-hei.net/mondai/show/12440
粉雪のちらつく3月吉日。
市内の高校はほぼすべて、今日卒業式を迎えている。
芽訪れさんも今頃、寒さに手を擦り合わせながら校長の話を聞いているのかな。
壇上でいろんな人が話をしたが、僕の耳には残らなかった。
思えば高校時代、僕はいつもどこか上の空だったかもしれない。
初恋の人、芽訪れさんと過ごした中学時代のわずかな時間を、四六時中思い返していたのだ。
高校では新しい友達もできたし、部活にも打ち込んだ。
それなりに楽しいこともあったはずなのに、卒業式の今日、思い出してしまうのはやはり中学校の3年間の思い出ばかりだ。
芽訪れさんの進路は風の噂で聞いている。関西の大学に行くらしい。
どんなことを勉強するのかはわからない。いつか、作曲家になるのが夢だと言っていた。そっち方面の大学だったらいいなと、なんとなく思う。
僕は関東のつまらない大学に進学が決まっていた。
もう下宿先も決めてきた。
今までは同じ地域に住んでいたから、たまに見かけることもあったけれど、来春からそう簡単には会えなくなる。
いいのか、このままで。
僕は式の間中自問し、そして決意した。
故郷を離れる前に、彼女に気持ちを伝えようと。
式が終わると僕は、芽訪れさんの高校に向かって一目散に走り出した。
1秒でも早く、彼女に会いたかった。
跳ね返る雪解け水がスーツのズボンを濡らしても、気にならなかった。
最後の曲がり角に差し掛かった時だった。
「あ」
思わず声が出た。
真っ赤な振袖姿の芽訪れさんが、小さな傘を差して歩いていた。
「あ」
彼女も僕に気づいたようだった。
「もしかして、牛削り君? どうしたの、こんなところで」
「あー、えーと」
何も考えていなかったことに気づく。
感情だけで走ってきたのだ。
「でも久しぶりだねー。そっちも卒業式?」
芽訪れさんが話題を変えてくれた。
「ねえ、ちょっと話す時間ある?」
「え? うん、クラス会始まるの、夕方だから。……あ、入る?」
傘を差し出してくれた。
「いや、小雪だから」
粉雪の降る中、僕たちは中学時代の話をした。
あの頃は話しかけられずにいたのに、話してみれば、話題はすらすらと出てくる。
雑談の合間に、いつ思いを告げようかとタイミングを伺っていた。
「そういえば関西の大学に行くって聞いたけど」
「うん、音大に行くんだ」
「おお、前に作曲家になりたいって言ってたもんね」
「よく覚えてるね。……あのね、星野さんのいる大学なんだ」
「え?」
「星野さん。覚えてるでしょ?」
覚えている。芽訪れさんの好きだった人だ。
「星野さん、指揮者になりたくて勉強中なんだって」
憧れの人のことを語る彼女の顔は、いつか見たのと同じように、すごく嬉しそうで、眩しかった。
──そっか。
「私も星野さんと同じ環境で勉強して、一緒に夢を叶えられたらいいなって」
不思議に、悔しくも悲しくもなかった。
僕は、好きな人のことを語るときの笑顔も含めて、芽訪れさんのことが好きなんだ。
「ねえ」
語り続ける芽訪れさんを制した。
「なに?」
芽訪れさんが僕の方をまじまじと見る。
「あのさ」
初恋は──
「時々、星野さんとの話聞かせてね。応援してるよ」
──初恋は、粉雪のように静かに。
静かに、散っていく。
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簡易解説
高校の卒業式で、中学時代を思い返していた。
高校は別々だから、芽訪れさんに会いに行くため学校を飛び出した。
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