愛しているわ

苦慮の末、自然分娩を選択した。

「双子出産はリスクが高いから、帝王切開がいいよ」

と、友人には何度も忠告された。でも、できることなら自分の力で二人をこの世界に出してあげたかった。

主人のカメオは、血を見るのが苦手なのに、立会いを希望した。

夫婦二人の、念願の子供だった。

名前はすでに決めていた。



陣痛の間隔が短くなって、分娩台に乗せられた。

いつでも帝王切開に移れるようにと、分娩室には専門医が待機していた。絶対に産んでやるんだと、私は少しムキになった。

医師の指示に従い、息む。何度も。

瞬間、ものすごい激痛が走る。

意識の端でカメオの声が聞こえた。



「倫子、頑張れ！！」



あなた、その瞬間を見て失神しないでよ。

ちょっとだけ心の中で微笑んだ。



「んぎゃー……」



生まれた。私たちの最初の子。



「お母さん、頑張りましたね」

そう言って看護師が子供を見せてくれた。

ピンク色の愛しい物体がそこにあった。



それを見たとき、初対面の彼に、私は言わずにはいられなかった。



「ヒサシ、愛しているわ」



その向こうに、涙ぐみながら顔を引きつらせるカメオの姿が見えた。ほら、言ったでしょう。



感動に浸る間もなく、二人目の出産が始まった。

今度はそれほどの激痛もなく、二回息んだだけでするりと出てきてくれた。



当然、私は彼にも告げた。



「ヒサヤス、愛しているわ」



看護師は私とカメオを交互に見て、言った。



「おめでとうございます。二人とも元気に生まれましたよ、田中さん」



田中久司と田中久保。二つの命の誕生の瞬間だった。





私の主人、田中カメオは失神した。