デリート！

ジ

ャックとミラは、ジャックの友人トレスが経営するレストランでデートをしていた。



ミラは、トイレに行ったジャックの携帯を何の気なしに見た。

すると、ご丁寧にロックがかかった女性からのメールが残っていた。

３年前に亡くなった、ジャックの母・エイミィからのメールだった。



「まだ残してるの？未練たらしい。どうせ死んだ人間なのに。」

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マザコンというほどでもないが、確かに彼は母親を大切にしていた。

ミラは少なからず嫉妬を覚えていた。

エイミィが体調を崩したとき、病院に付き添うためにデートを取りやめることもしばしば。

同時期に二人の誕生日があるのだが、そのプレゼントの値段もちょっとだけエイミィへのものが高いのだ。

７年ほどの付き合いだが、わずかな不満が積もっていった。



そこにきて、何の気なしに見たこのメール。

以前にも、独占欲が強いミラはジャックのメールや電話帳の女性の項目を消したりしたことがあった。





ミラは腹に据えかねて、エイミィからのメールを削除した。



トイレから戻ってきたジャックは、いつもの癖でメールをチェックした。



あるはずの、母からのメールが無い。

そういえば携帯の位置も、さっきと違ったような…。



「なぁ、携帯触った？」

「ええ。未練がましいわよ、他愛も無いお母さんからのメールなんて保存しとくなんて。確か、スマホに変えないのもそのメールのせいなんでしょ？いい加減かっこ悪いから機種変しにいこうよ。」

「メール消したのか？」

「･･･え？」

「消したのか？」

「ええ。」



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消されたメールは、エイミィが亡くなる前日に届いたものだった。



タイトル　re:



本文：元気かい？

忙しいだろうから、何があっても仕事優先しなさいね？

約束だよ。





死期を予感していたのだろう、最期の最期まで、エイミィは息子を気遣っていた。

それを死後理解したジャックは、メールを消せずにいた。



ジャックはその場を立ち上がり、コップにまだ並々と入っていた水をミラに掛けた。



「二度と連絡するな。」



「永遠に引きずってればいいのよ！マザコンめ！」



一部始終を見ていたトレスが、使っていた牛刀（大型の包丁）を手に、残されたミラに声を掛けた。

「おいあばずれ、金はいらねぇから出て行け。二度とくるな。お前の薄汚れた脳みそン中ばらされたくなけりゃな。胸糞悪い。」





＊生前、母親を大切にしていたジャック。それに対して不毛な嫉妬を覚えたミラが、母の最期の言葉であるメールを消されて、別れた。