【最終的に倒れるナヨ男】

今日はいよいよ結婚申し込みの日。



細井亀美の父・細井ナヨ男は物凄く緊張していた。

27年間も娘の亀美と交際しておきながら

なかなか結婚に踏みきろうとせず、

亀美としょっちゅう喧嘩ばかりしていた岩熊虎十郎君は、

本当に亀美と結婚出来るのだろうか………



当日、緊張して険しい表情の岩熊虎十郎と向かい合い、

普段から改まって正座などしないので痺れて震えながら正座をするナヨ男。

別に普通に足を崩してて良いのだが、

せっかく虎十郎君が亀美との正式な結婚申し込みに来てくれたのだ、

こういう日ぐらいはビシッとしておこう。

だが正座はとても辛い………







庭のししおどしがカコーンと鳴った時、



（………やっぱワシには正座なんぞ無理だ！！！！！

ぐおおおおお痺れたあああああーーーーー！！！！！！！！！！）



ナヨ男は正座の痺れに我慢出来ず、

遂に前方に倒れ込む様に身を乗り出した。







虎十郎『むっ、娘さんを、ぼぼぼ僕にくださいっ！！！！！』







（………今このタイミングでかよっ！！！！！

ってゆーかそれどころじゃねえええんだよおおおおお痛えええええ………）



ナヨ男は痺れＭＡＸでそのまま深々とうなだれる様に頭を下げる。



虎十郎『だっ、大丈夫ですか！？ お父さん！！！！！』



虎十郎は悶え続けるナヨ男を抱き起こしてあげた。



（むっ、むやみに触るなあああああ

もっと激痛走るだろがあああああヒイイイイイ！！！！！！！！！！）



ナヨ男『ﾊｧﾊｧ………よかろう、娘との結婚を許そう。

どうか亀美を、幸せにしてやってくれ………ﾊｧﾊｧ痛ぇ………』



父・ナヨ男のあたたかい言葉に、

亀美は感極まって涙を流した。



亀美『ありがとう…お父さん………

こんな私を…長年育ててくれて………

本当に…本当にありがとう……………』







号泣する亀美を抱きながら、

ナヨ男に結婚を認めてもらえた虎十郎は可愛い彼女である亀美と過ごした27年の長い歳月を思い出して男泣きした。

遂に結婚という新たな門出なのだ。



ナヨ男もまた娘との結婚を決意してくれた虎十郎に深々と頭を下げる。



虎十郎『本当にありがとうございます！！！！！

絶対に、絶対に、亀美さんを幸せにしてみせます！！！！！』







そして結婚式の準備も着々と進み、

結婚式の前夜になって………







【案の定、大喧嘩をして別れ話がエスカレートし、

本気と書いてマジで別れる事になったふたり。】







長年連れ添った彼氏の虎十郎に涙ながらに交際歴27年間の感謝と別れの言葉を告げる亀美を見て、







父・ナヨ男が激怒するのも当然である。







結婚式の準備、費用、土壇場キャンセル、

親族、友人、知人、招待した全ての方々への謝罪、

周囲の目、今後への不安……………







細井ナヨ男は倒れた。