ウミガメのスープ

不要な称賛

作者: QQS

これまで数々の文学賞を総嘗めにし輝かしいキャリアを築き上げてきた、ベテラン作家の野箆伊豆男。しかしある日、心血を注いで書き上げた小説を彼の大ファンだという読者に大絶賛されるや否や、彼は「やめてくれ!」と叫び耳を塞いでしまった。一体なぜだろうか?

出題者が、解き手の進み具合に応じて上から順に出すためのヒントです。

ヒントはまだありません。

過去の実際のやりとりです。質問されたら参考に答えてください。

はい

自分の耳を塞ぎましたか?

YES

いいえ

ゴーストライターは重要ですか?

NO

はい

耳を塞いだのは大絶賛を聞かないようにするためですか?

YES

核心昔に書いた黒歴史的な内容でしたか?

御明察!

いいえ

それを聞くことでノベライズ男の小説家人生にとって不都合がありますか?

NO

いいえ

作中に読者が虐殺されるシーンがありますか?

NO

はい

どのような場で絶賛されたのかは重要ですか?

YES!

大ファンだという読者の掘り下げは必須ですか?

そのつもりでしたw

答え

「ねぇ、伊豆男」
「うん?何だい、母さん」
「今日ねぇ、押し入れを整理してたらこんなのが出てきたのよ」

伊豆男が出版社との打ち合わせを終えて帰宅すると、まるで待ち構えていたかのように、年老いた母が一冊のノートを取り出して見せた。見覚えのあるノートであることには気付きながらもそれが何なのか咄嗟に思い出せず伊豆男が考えあぐねていると、おもむろに母がそのノートを広げ、中身を読み上げ始めた。

青い空に浮かぶのは、真っ白な雲と羽ばたく竜。
蒼い海に泳ぐのは、小さな魚と人魚達。
碧い草木と戯れるのは、獣と虫と妖精達。
世界は光と闇に包まれ、マナと呼ばれる命の粒子がそれらの狭間をやわらかく満たす。
神々が創りし古の世界、人々はこの地を「ラテラリア」と呼んだ……。

「ちょっ、ちょっと待ってくれ!」

母が読み上げたストーリー、それは「魔導水平世界ラテラリア -光竜に導かれし運命の少年-」。三十数年前、伊豆男がまだ中学生の頃、一生懸命ノートに書き綴っていた小説である。その概要は、ある日突然現れた女神によって異世界に飛ばされた少年が、体内に眠っていた光竜の血に目覚め、人々を襲う邪悪な魔竜族と戦って世界に平和を取り戻す、というものだ。夢の溢れる内容と言えば聞こえは良いが、ファンタジー、SF、ラブコメ、果ては中途半端にグルメやミステリー要素まで詰め込んだ、多感な少年時代の妄想爆発ストーリーである。当時こそ自宅でも学校でも空いた時間さえ見つければノートに向かって小説の執筆に勤しんだものだったが、今となっては誰にも知られたくない所謂「黒歴史」である。しかしそんな駄作ですら、小説家の息子の大ファンを自称する母親の目には良作に映るらしい。赤面する伊豆男を意に介さず、母が続ける。

「ほら、この魔法の呪文なんて本格的でカッコイイじゃないの。『我が血に宿りし光竜よ!血の契約に従って今ここに顕現し、その灼熱の炎を以って、すべての敵を焼き尽くせ!!!超究極爆裂火焔魔法・ファイナルドラゴンブレイジングフレイムファイヤーーー!!!』」

「うわー!!!やめてくれ!!!やーめーてー!!!あーあーあー!!!聞こえない聞こえない!!!」
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