探偵からの挑戦状 【Ⅰ】
この間、面白い事件に出くわしたんだ。いや、一応殺人事件。面白い、なんて言ったら駄目かな。
まあ、聞いてくれ。
大学生の女性が、自宅で殺されていた。
事件が起きた日に女性の家に訪れていた人、つまり容疑者は複数いた。
困ったことに、彼ら全員にアリバイが無い。その上、凶器や指紋なども見つかっていない。
捜査は難航すると思われた。そこで僕が現場に呼ばれたワケだけど・・・
僕が家の中に入ろうとドアノブに手を掛けた時、中から物音がして。
急いで中に入ると、もう犯人が特定されていたんだ。
何が面白いのかって?それは、犯人が特定された理由さ。
それがなんだか、君たちには分かるかな?
過去の実際のやりとりです。質問されたら参考に答えてください。
部屋の中にあった何かで犯人を特定したのですか?
yes!
犯人は現場に戻っていましたか?
yesかな? ただし戻ったのは、警察に呼ばれて、しかも他の容疑者たちも一緒に。
そして、「あっ、犯人さんでしたか。どうしたんですか?」 「はい、ちょっと用事があって… しまったああああ!?」 ますか?
noだよw 犯人はそこまで抜けてはいなかったみたい。
探偵が現場に来た時点で、まだ遺体は現場に保持されていましたか?
no! すでに片付けられていて、容疑者全員が集まっていたよ!
犯人は人間ですか?
yes! もちろん!
「もう犯人が特定されていた」ということは、探偵ではなく中にいた警察が犯人を特定しましたか?
yes! ただし、警察だけではなく、多分その場にいた全員が特定できていただろうね。
犯人は凶器を始末し忘れましたか?
no! そのあたり、犯人はきっちりとしていたみたいだね。
殺害方法は重要ですか?
no! 後から聞いた話、持ち込んだ凶器による撲殺らしいよ!
容疑者の人数は重要ですか?
no! 僕が見た限り、犯人を含め6~7人だったかな?
部屋に入るときの物音は、犯人が立てたものですか?
yes! 犯人が何かをしたせいで出た音だね!
ロスさんは中に人がいるのを知らなかったから物音がしたときに急いで開けた?
no! ただ驚いたから、急いで開けただけだよ。
その物音で犯人を特定しましたか?
no! むしろ、特定されたからその物音がした、というカンジかな?
その物音は、警察が居たから起こったのですか?
no…だね。 警察がいなくても、この状況ならこうなっていたと思うよ。
犯人は一人ですか?
yes! 一人だね。
音は声ではないですか?
no! 声ではなかったよ!
その日はパーティでしたか?
no! 実は事件が起きた日、パーティーなどは行われていなかったんだよね。
容疑者達は皆顔見知りですか?
yes! 実は、容疑者たちも殺害された女性も、大学で同じサークルに入っていたらしいよ!
犯人は他の容疑者たちに自分がやったことを伝えていた?
no! やったこと、とは殺人のことだよね? 犯人はそういうことはまったく口外していないよ!
警察「それでは皆さん目を閉じて下さい …はい、この殺人を犯した人は正直に手を挙げて下さい」 ですか?
noだよ! 確かにそれで捕まっちゃうのも、面白い事件かもねw
犯人はボクですか?
まさかのwだがno! 僕はまったく関係ないよw
「家」の中に入ろうとしたのは、自宅に入る場面。つまり家宅捜査を受けていたのだった!
no! 完全に↑前提だね! まさか僕が疑われるとは・・・( ´_ゝ`)
犯人が女性を殺した理由はその「あるもの」に関係しますか?
no! 殺した理由は関係ないよ!
犯人とその他容疑者たちは、女の家に同じ目的で訪れましたか?(何かを取りにくる、とか)
yes!! そう、彼らは女の家に「あるもの」を取りに言っていたんだ!
ズバリ、犯行予告状ですね?
no! 犯行予告は出していないねw でも、カッとなって殺したのではなく、きちんと計画が練られていたようだね。
それは持ち運び可能なサイズ、例えばポケットに収まるくらい?
no! どう頑張っても、ポケットには入らない大きさだね。
家の中には入ってますよね。家電とか?
no! 機械類でもないね。 持ち運べて、しかも彼らはそれを、女から「貰っていたんだ。そこまで高いものは配れないよね。
サークルは関係ありますか?
うーん、yes! それが分かれば、答えが出やすくなると思うよ!
「あるもの」は被害者のサークルと関係する物ですか?
yes! 関係するね!
彼らはスポーツサークルに所属していた?
no! スポーツ系ではないよ!
音楽に関するサークル?
no! 音楽でもないよ!
「あるもの」は印刷物ですか?
no! 「あるもの」は、ポケットなどには収まりきらないサイズだよ!
「あるもの」を最後に貰ったのが犯人でしたか?
yes! でも、「貰う」というより「持って行く」の方が正しいな。犯人は女を殺し、疑われないように「あるもの」を持ち去ったんだ。
犯人にとって「あるもの」を持ち去る事は重要だった?
yes! 持ち去らないと、「では何の目的で家に訪れたのか」と、一番に疑われてしまう。他の人は皆、「あるもの」を貰うことを目的として訪れていたからね!
「あるもの」はすべて完成品でしたか?
yesno…だな。 確かにそのものとしては完成しているかもしれない。けど・・・
「あるもの」は道具?
no! 道具とは言わないよ!
あるものとは、動物ですか?
no! ただし、考え方は良いね!殺された女性は「あるもの」にすごく愛情を注いでいたよ!
美術系のサークルですか?
no! 美術系でもないよ!
犯人は、男ですか。
no! 犯人は女性だったなあ。
容疑者たちは全員「あるもの」を持って現場へ来ていましたか?
yes! 重要なポイントだね!
あるものとは、植物/花ですね?
yes!! そう!「あるもの」は「花」だったんだ!
きれいなバラができたから取りにおいで、と言われていたのに、犯人は慌てていたため誤って食虫植物を持って帰ってしまった?
no! しかし考え方はすごくいいね! 犯人が持ち去ったものは、他の人が貰ったものと、ある「違い」があったんだ。
犯人は、犯人が来る前に来た人の花を持って行きましたか?
no! 殺された女性は、1つ1つが誰の花、ということは決めていなかったみたい! だからこそ出来た違い、かな?
花とは鉢植えの花ですか?
yes! そう、女が庭で育て、鉢植えに移した花だったんだ! つまり僕が聞いた物音は、犯人だとバレて鉢植えを落とした音だったんだ。
もらったときは蕾だったけれど、その場へ集まったときに犯人の花だけ色が違った、ですか?
no! だけど凄く近い!
白いバラが血を吸って真っ赤に!! ですか?
no! それだったら現場に持って来れないねえ・・・
花の種類は重要ですか?
no! 種類は特定の原因にはなっていないね!
犯人だけすっげー地味な鉢植えでしたか?
no! 確か、鉢自体はみんな同じだったな・・・
犯人以外は全員好みの花をもらったが、犯人だけば普段から嫌いと公言してる花だった、?
no! 44の方が近いな!
その花には毒がある?
no! そんな恐ろしいものじゃないよ!
犯人の花だけ枯れてましたか?
no! しかし、これまた近い。 明日までに答えが出なかったら、44番と一緒に正解にするね!
犯人の花だけプリザーブドフラワーでしたか?
no! 犯人の花も、ちゃんとした花だったよ!
核心他の人はこれから咲く蕾がたくさんの花をもらい、犯人の花はもう既に開ききった花でしたか?
yes!! 完璧だね!解説に行こう!
答え
正解、おめでとう!
そう、犯人が特定された理由、それは「鉢植え」にあったんだ。
被害者の女性は、大学でガーデニングサークルに所属していた。
彼女は花や植物が大好きで、自宅の庭で花を育てては、友達たちに配っていたらしい。
そして犯人の女性、およびその他の者たちは、サークルの仲間たち。
「サークルの皆様。ネリネという花が、沢山元気に育ってくれました。欲しい方に差し上げます!植木鉢で用意していますから、いつでも来てくださいね!」
というメールをもらった彼らは、各自バラバラの時間に、被害者の家に訪れていたというワケだ。
さて、被害者を殺し、証拠となるものを全て処理した彼女は、何をしたか。
そりゃあもちろん、貰うはずだった、そして仲間が既にもらっているであろう、植木鉢の一つ選んで持ち去ったのさ。
これが無いと、「なぜ被害者の家に訪れたのか」と真っ先に疑われてしまうだろうからね。
しかし、これが仇となってしまったんだ。
女を殺害し、「早く逃げなければ」と思った彼女は、並んだ植木鉢の中でも一際目をひく、美しく見事に咲いたネリネを選んでしまった。
そう、「見事に咲いた」ね。
次の日、鉢植えを貰いに来た仲間たちが集められた。
彼らの手には、既に形見となってしまった植木鉢。
皆ショックを受けているようで、暗い顔で俯いていた。
ふと、仲間の一人の視線が、彼女の手元に留まる。
視線は1人のものから、2人、3人、と増えていく。
それを感じて、彼女は顔をあげた。その時には刑事も仲間も、皆彼女を見つめていた。
「…アドバイス、されなかった?」
遠慮がちに仲間の一人が問う。
彼女はみんなの花を見た。蕾が綻び始めている。もうすぐに見頃になるだろう。
そして手にする自分の花を見た。見事に咲いて、たぶん今日が一番見頃だ。明日には枯れ始めてしまうに違いな…
そこまで考え、彼女は鉢をガシャンと取り落とした。
そう、これが僕の聞いた「物音」さ。
僕が家の中に入ると、そこには鉢を落とし、肩をふるふると震わせる者が一人。
他の皆は呆気にとられて、刑事は哀れみの目を向けた。
【植物をプレゼントする時には、咲き始めを。決して咲ききってしまっているものではなくて。】
空になった彼女の両手に、手錠がかかった。
これが真相さ。楽しんでもらえたかな?
この物語には、実はまだ続きがあるんだ。
だけど今度は、君たちにも手伝ってもらいたい。
よろしく頼むよ!
〔 探偵からの挑戦状 【Ⅱ】へ続く。〕
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