ウミガメのスープ

お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?

作者: とかげ

飛行機の乗客が大怪我をした。
「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?」
そんな客室乗務員の呼びかけを聞き、怪我人を助けたいと思っていた機内の医者達は全員、手をあげるのをやめた。

どういう状況だろう?

出題者が、解き手の進み具合に応じて上から順に出すためのヒントです。

ヒントはまだありません。

過去の実際のやりとりです。質問されたら参考に答えてください。

いいえ

患者を助けたくなくなりましたか?

NO! 医者達は患者を助けたいです

いいえ

機長が大怪我したのですぐに飛行機から逃げ出しましたか?

NOw 怪我したのは乗客です!

いいえ

手の代わりに足をあげますか?

NOw なぜだw

いいえ

手をあげるのをやめたとは怪我人を助けなかったということですか?

NO! 怪我人は助けます

はい

医者たちはもともと手をあげている状態でしたか?

YES! どういうことでしょうか?

はい

大怪我をした原因は重要ですか?

YES! 怪我の原因重要です!

はい

飛行機の中での出来事ですか?

YES すべての飛行機の中の話です

いいえ

医者たちには他にすべきことがありましたか?

NO 患者を助けるのが最優先です

はい

核心ハイジャックされている機内で初めから手を挙げていた(=犯人に服従していた)医者たちは手を降ろして治療を始めようとしましたか?

YES! 正解です!

その飛行機の中では、「善きサマリア人の法」は適用されますか?

YESNO 重要ではありません

はい

飛行機はフライト中ですか?

YES 飛んでます

いいえ

ドイツ人なので日本語を急に言われても訳わからへんですか?

NOw みんな日本人でした

いいえ

「手をあげる」とは「挙手して自分が医者であると名乗り出る」という意味ですか?

NO! 文中の「手をあげる」の意味は違います!

いいえ

挙手をする暇があったらさっさと手を動かしますか?

NO 患者は目の前にはいません

いいえ

飛行機の目的地は重要ですか?

NO 目的地は関係しません

いいえ

医者たちはすでに怪我人を助けている最中ですか?

NO これから助けにいくところです

怪我人は医者ですか?

YESNO 怪我人の職業は関係しません

いいえ

医者たちは「お手上げ」と思っていたけど、あきらめたらそこで試合終了だと思って頑張って治療することにしましたか?

NOw 座布団1枚!

いいえ

地球を救うためにどこぞの猿に元気を分けるよりも目の前の患者を救うことにしましたか?

NOw 元気わけませんw

はい

医者たちは手をあげたままずっと立っていたので自分たちの出番を察し手を下ろしましたか?

YES! ある理由で手をあげていました!

いいえ

行列ができる名医監修のエコノミークラス症候群を予防するためのストレッチ体操を医師たち全員でしていたところ、「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?」と呼びかけられたので、腕と脇を伸ばす運動を一時中止しましたか?

NOw なんだそれw そんな状況当てさせるのひどいじゃないですかw

答え

「あの、なんかハイジャックされたそうですよ」
前の席に座っていた女性が座席の隙間から急に声をかけてきたと思ったら、突然そんなことを言い出した。
「ハイジャック?」
新手のナンパかと思いきや、女性は比較的真面目な顔つきで、こう続けた。
「はい。この飛行機。それで、拳銃持った犯人が手をあげろって……あ、立たないでくださいね」
背伸びして女性の頭越しに前を見てみると、確かに乗客達が手をあげている。機内前方のファーストクラスの方は、間にスクリーンや柱があって、ここからは確認できない。
「前の方からそう伝わってきたんです。人質がいるそうで、犯人を刺激しないように指示に従えと」
「犯人は何人いるんですか?」
「わかりません、私からも前は見えませんし……」
よくわからないが、ひとまず僕も手をあげた。しかしこちらから見えていない犯人が、手をあげているかどうかなんて確認できないような気もするが。
「あと、後ろの方にも教えてあげてください」
言われた通り、僕も座席の隙間から後ろの席の人へ、今聞いたことを伝える。横で居眠りしていたおっさんも起こして、とりあえず状況を教え、やはり手をあげてもらった。
「犯人はゴリラみたいな体格の超強そうな男達らしいです」
数分後、また前の女性がそう話しかけてきた。もちろん手をあげたままである。
「何人いるんでしょうか」
「わかりません。でもみんなすごく屈強な感じだそうで、人質になっている客室乗務員の方は今にも死にそうって」
「死にそう? 人質を締め上げたりしてるんですかね」
「さぁ……私は聞いたことを伝えているだけなので」
話し声が聞こえたのか、隣のおっさんも会話に加わってきた。
「ゴリラみたいでも、何人かで飛びかかれば勝てるんじゃないですかね」
「でも拳銃を持ってて人質もいるなら、そう簡単にはいかないんじゃ……」
「あ、ゴリラの倒し方、僕知ってますよ。まず足元を……」
僕の素晴らしい知識を教えてあげようとしたのだが、そのとき後ろから急につつかれ、驚いて振り返った。後ろの席の若い男だ。
「何か新しいこと、わかりましたか?」
仕方ないので、今女性から聞いた話を彼に教えてあげた。彼もやはり人質がいるなら危険だという意見だったので、僕がゴリラの倒し方を説明しようと口を開いた。途端、バンッ――とドラマで聞いたことのあるような銃声が響き渡った。
きゃあ、と女性の甲高い悲鳴がいくつもあがる。前の席の女性も叫んだようだった。どうやら、拳銃は確かに持っているらしい。誰か撃たれたのだろうか?
更に前方から、ドンッと何かがぶつかる音、ガラスが割れる音、うめき声などが折り重なって響いてくる。時折また銃声が聞こえ、そのたびに悲鳴があがる。状況は相変わらず不明である。その場を動いて犯人グループを刺激してもいけないし、流れ弾に当たるのも嫌なので、ただ手をあげて待つしかない。

「お客さんが何人かで、犯人達に飛びかかったそうです! それで乱闘状態になっているとか……」

前の女性がそう伝えてくれていた最中に、別の声が前方から響いてきた。

「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?」

客室乗務員だ。焦った様子で、そう呼びかけながら前方から走ってくる。

客室乗務員がこうして後方まで声をかけにやってこられるということは。
犯人達は取り押さえられたのだろう。そして誰かが撃たれたのだろう。勇敢な乗客かもしれないし、近くにいた客室乗務員かもしれないし、犯人のゴリラかもしれないが、とにかく怪我人がいるのは確かだ。

僕は手をあげるのをやめ、自前の医療道具を持って、機内前方へ向かって走り出した。

END


ハイジャックされた飛行機内で、犯人が「手をあげろ!」と乗客に命令した。勇敢な乗客達がそんな犯人に立ち向かい、撃たれた人はいたものの、取り押さえることに成功。客室乗務員が怪我人の手当を呼び掛けたので、犯人を取り押さえたのだとわかった医者達は、安心して手をあげるのをやめたのだった。

— 善きサマリア人のスープ

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