海亀骨董店【最愛の人を映す鏡】
少しくすんだ骨董品が、ほこりのかぶったままに、雑然と並んでいる。
透明な人体模型、神様のタロットカード、とめどない水を湛える甕、小さなカラスが住む盆栽……などなど。
曰く付きの品からガラクタまで、所狭しとひしめいていた。
今日売れたのは【最愛の人を映す鏡】。
買った男は、鏡のおかげで最愛の女性に出会い、両想いになったあと、姿を消してしまったそうな。
いったい何があったのかねぇ?
過去の実際のやりとりです。質問されたら参考に答えてください。
姿を消したのは買った男の自主的な意思によるものですか?
no
買った男は死にましたか?
no
最愛の人は現実(あの世含まず)にいますか?
yes
両想いになったとき,男と最愛の女性は物理的なコンタクトができましたか?
no しかし、しようとはしたでしょう。
最愛の人を映す、とは一生のうちで最愛の人(既に出会っている出会っていない、愛している愛していない問わず)を映すということですか?
no 出会っている、いないにかかわらず、最愛の人となる人物を映すようです。
鏡が最愛の人を映すこと以外の非現実要素はありますか?
no? 限りなくno
男は最愛の人と幸せな結末を迎えることは出来ましたか?
no
姿を消したとは、失踪したということですか?
no
最愛の人は女装した自分→性転換して男の彼は姿を消しましたか?
now 衝撃の別解w ネタ良質?進呈
姿を消した、とは失踪ではなく、物理的に消えたことを表していますか?
yes!
最愛の人がその魔法の鏡を見た結果を、男は知ってしまいましたか?
no
鏡には自分の姿が映りましたか?
no 最愛の相手が映るのです
最愛の人が鏡をみたとき、男が鏡の中に取り込まれてしまいましたか?
no しかし、鏡には男が映っていました
鏡を見ると、自分の最愛の人に自分本体が変わってしまいますか?
no
映るけど、時代も土地も違うのでどう足掻いても会えませんか?
yes! キーワードでました! 時代が違います
鏡の中の世界は関係ありますか?
no
その鏡に映るのは、最愛の人だけですか?
yesno 人物は彼女だけです。あまり掘り下げなくていいかもです。
男は整形手術を受けましたか?
no
最愛の人も海亀骨董店で鏡を買っていましたか?
no どうやら、男の鏡の不思議な力で、映るようになったようです
核心15 過去の女性に会い、過去の女性が本来結婚するはずだった人と結婚しなくなったため、未来で男が生まれなくなり、存在ごと消滅しましたか?
yes!
コールドスリープしましたか?
no
核心15 実は先祖の関係にあるので、互いに恋しちゃうと本来の配偶者とうまく行かずに子孫側が消えちゃいますか?
yes!
最愛=恋愛感情ですか?
yes
答え
観光地化した表の通りから外れると、途端に方向感覚がなくなってしまった。男は案内板などがないか、小道を歩きながら探している。
しかし、見つからない。それどころか、人っ子一人いなかった。
「海亀骨董店?」
男は仕方なく、偶然目に止まった古びた商店に入り、道を尋ねることにした。
中に入ると、目の前に自分がいた。
「?!」
鏡だった。明るい外から暗い店内に入ったので、一瞬わからなかったのだ。
それは姿見でも、手鏡でもない。縁も何もない、丸い鏡が台座に据え付けられていた。直径30センチ程か。
「ご神体か何かみたいだな」
男はマジマジと鏡を見つめた。鏡に映った自分が、笑ったような気がした。
「うん?」
よく見ると、鏡の表面に微妙な凹凸があった。そのせいで、見方によっては表情が変わって見えるらしい。
値札には、随分安い値段と、【最愛の人を映す鏡】という商品名が書かれていた。
男は周囲を見回した。
透明な人体模型、神様のタロットカード、とめどない水を湛える甕、小さなカラスが住む盆栽……不思議なものが並んでいる。
そのガラクタの奥に店主らしい、起きているのかも怪しい老婆がいた。
「道を尋ねるだけというのも、失礼かもしれない。変わった鏡だし、値段も手頃なようだ。買ってみようか」
城下町まで観光に来るような男だ。古いものや変わったものが好きだった。男は支払いついでに老婆に道を尋ねた。
老婆は鏡を梱包しながら、指で行き先を示した。どうやら真っ直ぐ行けばいいらしい。男は店の外に出て、言われた通り真っ直ぐ歩いて行った。すると、程なくして表の通りに出た。今までどうして気づかなかったのだろう、と思うほどに、車や商店の呼び込みが、騒がしかった。
男は旅先から帰ると、早速家に鏡を置いた。台座に据え付けて、布で表面を磨いてやる。
その時、偶然にも手が鏡に触れ、鏡が妖しく輝いた。
「誰だ?」
男が気付いた時には、鏡には見知らぬ女性が映っていた。女性も首をかしげていた。そして驚いたことに、男の問いかけに答えてくれた。声は届かないが、紙に書いた文字で意思疎通が出来たのだ。
女性から見ると、男は手鏡に映って見えるらしかった。どうやら、この【最愛の人を映す鏡】は、他の鏡に映ったものを映す鏡らしい。
「これは面白いものを手に入れた!」
男はそう言ってよろこんだ。何より、映し出された女性は美しかった。
男と女性はそれから暇さえあれば話をした。不思議と気が合ったし、価値観も似ていた。何より、お互いがどこの誰ともわからないため、隠し事をする必要がなく、気楽になんて話も相談することができた。
二人が両想いになるのに、時間はかからなかった。
「最近、とある男性に言い寄られているんです。どうしたらいいものか……」
いつものように悩みを相談する女性に、男は簡単にこう答えた。
「そんな人、気にすることはありません。僕がいるじゃないですか」
「……はい!」
しかしその瞬間、男はこの世界から消えて無くなった。
男は気づいていなかったが、女性は男の母親の過去の姿だったのだ。男の父親となる男性との出会いを男が邪魔したため、この世に男が生まれたという事実がなくなってしまった。
そして、そのことによって【最愛の人を映す鏡】が買われたという事実も、なくなった。
【最愛の人を映す鏡】は今日も、海亀骨董店の片隅に鎮座していた。
要約
男は【最愛の人を映す鏡】が映し出す、美しい女性に恋をした。しかし、その相手は過去の実の母親であり、両想いになった結果、男の父親と結婚したという過去が消失し、同時に男の存在はこの世から消えてしまった。
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