笑顔の君に会いたくて
誰にも笑顔を見せることなく、いつも冷たくあしらいます。
きらきーちゃんはいつも明るい女の子。
みんなに優しく、いつも周囲に笑顔を振りまきます。
そんな二人がある日出会って。
きらきーちゃんは兎美ちゃんに言いました。
「もし兎美ちゃんが死んだとしても、自分は絶対悲しみません」
兎美ちゃんは喜びました。
なぜ?
過去の実際のやりとりです。質問されたら参考に答えてください。
兎美ちゃんは死期が迫っているので同情なんてしませんか?
YesNo!兎美ちゃんに死期が迫っているのは正解です。あれぇ、瞬殺?
兎美ちゃんは、もうすぐ自分が死ぬかも知れないと思っていましたか?
Yes!思っているのです。
兎美ちゃん
No!この言葉の時点では、友達ではありません。
きらきーちゃんは死神さんなのでこれからもずっと一緒ですか?
No!きらきーちゃんは普通の女の子ですw
きらきーちゃんの言葉は、本心から出たものですか?
Yes!間違いなく本心です。
兎美ちゃんは気遣う大人たちに強がって見せますがきらきーちゃんはそんな本音を分かっていますか?
Yes!あなたは私か!?
「私は兎美ちゃんがいなくなっても大丈夫だからね」「ありがとうきらきーちゃん」でFAですか?
うーん……No!そういう理由ではありません!
きらきーちゃんの言いたかったことは「兎美ちゃんが死んでも悲しんであげないから、治りなさいよ」ですか?
No!きらきーちゃんは、兎美ちゃんが死んでも本当に悲しみません!
兎美ちゃんはどこかのお金持ちのお嬢様で皆よそよそしいのですか?
No!兎美ちゃんも普通の女の子です。
きらきーちゃんも死期が迫っていますか?
Yes! なぜわかった!?
兎美ちゃんは、死後、きらきーちゃんのドナーになりますか?
No!今回は移植ません。
同じ悩みを持つ者同士仲良くなれそうですか?
Yes? 兎美ちゃんはツンデレなのでわかりません。
きらきーちゃんの方が、先に死にそうですか?
Yes!きらきーちゃんの方が先に死にます!
死ぬのは誰だって怖いますか?
Yes。誰だって怖いよね。強がってるだけです。
「あの世で先に待ってるね」ですか?
No、かな?あの世のことは気にしていません。
きらきーちゃん「天国で待ってるからね」ますか?
No、ですね。ご結婚おめでとうございます。
核心兎美ちゃんが自暴自棄になっているときらきーちゃんが私のほうが先に死んじゃうから悲しめないね。貴方はそんな私を悲しんでくれる?残された時間がわずかならその時間を懸命に生きなきゃきっと哀しいよ・・と言いましたか?
Yes!そして要点は大体抑えているので正解とします!
答え
性別:女
年齢:15歳
血液型:AB型
余命:1年
生まれた時から体の弱く、ずっと入院を続けてきた私だけれど、流石に余命1年と告げられた時は愕然とした。
薄々覚悟はしていた。
15年間も付き合ってきた体だから、いまさらドラマみたいに奇跡が起こって普通の日常に戻れる…なんてことがありえないのは分かっていた。
それでも…これは堪える。
自分の可能性がことごとく摘み取られるような、先に広がっているはずのレールが全部外されるような、そんな喪失感。
馬鹿みたいに熱い、夏の日のことだった。
それから私は、笑うことが無くなった。
より正確にいうなら、笑えなくなってしまった。
足しげく通ってくれる両親、祖父母、妹に数少ない友人。
彼らに会いたくない。
言葉を交わしたくない。
…生きていくみんなに、弱音を吐きたくない。
そんな気持ちばかりが先走りして、みんなを避けるようになった。
体調が悪い、といって面会を拒否して。
薬で朦朧としているフリをしてやり過ごし。
避けられない時は、ずっと視線を合わせずに無視して。
また来るね、といって帰っていく姿を見るのが辛い。
本音をいうなら、ずっと一緒にいてほしい。
泣きごとを聞いてほしい。
叫び散らしたい。
どうして私だけ死ななきゃいけないのか。
どうして私は普通に生きることもできないのか。
それが言えたらきっと楽になるだろう。
…でもそれは、逆にみんなに重荷を背負わせることになる。
だから私は…これでいいんだ。
嫌われよう。
困ったやつになろう。
無口なお人形になろう。
何を言われても返事をしなければ、みんなそのうち愛想を尽かすだろう。
大丈夫。
我慢できる。
だって、たったの1年だから。
…月日は流れて、冬。
病院の窓から見える景色は、どんよりと淀んだ曇り空。
いっそ雪でも降れば少しはロマンがあるというのに、空気はじっとりと湿って、むしろ雨でも降りそうな気配。
思わず気が滅入るような、そんな日に…あの子と出会った。
ずっと一人だった私の病室。
そこに相部屋として入ってきた、あの騒がしい子に。
「どうもっ!海亀きらきーっす、よろしくおねがいしゃーっす!」
「…………」
なんだこいつは、と思った。
見たところ、私とそう変わらない年に見える少女。
さっぱりしたショートカットに、すらっとした長身。私服だと男の子と間違われそうな中性的な子。
しかしそのテンションは、何かおかしい…というかヤバイ。
体育会系というか、遠足当日の小学生というか、十代半ばで保っていいテンションではない。
…いや、辛うじてそれは認めるとしても、病院で保っていいテンションでは断じてない。
「いやー、同室は同い年の女の子って聞いてたから、チョー楽しみだったっす。あ、兎美ちゃんっていうんですよね。名前で呼んでもいいですか?というか呼びますね。仲良くしてください!」
「…………」
「無視された!?なーんてね、ふっふっふ。ちゃんと看護師さんから噂は聞いてるんですよ。全然口を開いてくれないこの病棟のプリンセス。ひと呼んで【沈黙の姫君】の噂は!」
いや、これは無視とかそんなのじゃなくて、唖然としているだけというか。
…っていうかなんだその噂は!
人にそんな恥ずかしいあだ名をつけているのかあの看護師たちは!
中二か!!
久しぶりに心の中で総ツッコミだ。
「でも兎美ちゃん。それ、疲れるでしょ?」
突然。
真面目な声で問いただされた。
一瞬、違う人が部屋に来たのかと思った。
でも、ここにいるのは私と彼女だけだ。
さっきまでと同じ…にこにこと笑みを浮かべた彼女だけ。
「………」
「噂は聞いたっす。ええ。もう半年もずっと、口を開いてないんですよね。嫌われたくて、ずっと黙ってるんですよね」
「………っ!」
見透かしたように。
見通したように。
笑顔で、彼女は。
「死ぬのが怖くて心を閉ざした…なんて思う人もいますけど、違いますよね。死ぬのが分かってるから、いなくなるのが分かってるから、せめてその時に負担を軽くしようと…みんなの中から、自分を減らそうと頑張ってる」
「………」
「死んだ後に悲しませたくないから、生きてる間に冷たくするんっすよね」
「………れ」
「でもそれって…本末転倒だと思うっす」
「五月蠅い黙れぇ!!」
久しぶりに出した声は、どこか他人のようで。
正体不明の痛みが胸を襲う。
ギリギリ、ギリギリ。刺すような痛みに顔が歪む。
くそ。なんだこいつは。こいつのせいだ。
唇をかみしめて睨みつける…しかしきらきーと名乗った女の顔には、変わらず笑顔。
「当たり…みたいっすね」
「…だったらなんだっていうの」
「それ、疲れるだけっすよ」
また。
同じことをこいつは。
「…なにを、知ったようなことを…アンタに関係ないでしょ!」
「そうっすね。関係ないです…でも、素直にすごいとは思ってるっす」
「何を…」
「自分は一月、我慢できませんでした」
「…ぇ?」
「自分も、突き離そうって頑張ってみたんですけどね…付き合ってた彼氏振ったり、他の友達をくっつけようとしたり、家で大暴れしてみたり…でも一月で我慢できなくなって、泣きついちゃいました」
そうだ。
ここにいるということは、彼女もそうのはずなのだ。
この子の馬鹿みたいな笑顔に騙されていた。
ここは終末期の人間が訪れる特別病棟。
退院の見込みがなくなった患者の流刑地。
ただ死を待つだけの場所。
「兎美ちゃんは、いつまでっすか?」
誕生日でも聞くような、自然な問いかけ。
茫然としていた私は思わず答えてしまう。
「…次の蝉の声は、聞けないわ。血液の癌よ」
「それなら自分の勝ちっすね!」
そう言って、彼女は自分の頭を軽く叩き。
「ここに腫瘍が出来ちゃいまして。自分は、次の桜を見れません。あと3ヶ月っす」
「……っ!」
この子は。
私よりずっと早く、死ぬことが決められている。
それなのに、こんな風に笑みを浮かべている。
楽しそうに笑っている。
「…なんで笑えるのよ。3ヶ月なんですぐじゃない」
「そっすね。アニメ1クール分っす」
「じゃあなんでへらへら笑ってるのよ!」
「だって、いつ死ぬかわかんねーですし」
きらきーは。
悪戯っこのように笑って。
「最後の顔が笑顔って、サイコーじゃないっすか」
「………ぁ」
唖然とした。
この子は現実から逃げてるわけでもなく、やけになったわけでもなく。
いつ死んでも悔いを残さないように。
いつ死んでも残された人が安心できるように。
ずっと笑顔を保っているんだ。
死の恐怖も、喪失の痛みも堪えてずっと。
「兎美ちゃんは、大事な人を悲しませたくないから、突き放すんですよね」
「…そうよ」
「悪いとは言いません。でもそれってやっぱり、けっこー辛いと思うんっすよ」
「じゃあ何?いまさらあんたみたいにへらへらしろっていうの?」
「そっすねー。それも素敵っすけど、いきなりは恥ずかしいでしょう?」
経験者だからだろうか。
なんだか妙に子供扱いされている気分だ。
「とりあえず、自分には本音でぶつかってくれて平気っすよ」
「平気…?」
「自分、兎美ちゃんより先に死にますから」
「……っ」
「もし兎美ちゃんが死んだとしても、自分は絶対悲しみません」
この子は。
どうしてこんな見透かした風に言うんだ。
どうして私に逃げ道を与えるようなことばかり言うんだ。
死の間際に、なんで他人のことなんかに気を使って…。
…ああ。そうか。
結局この子も私と同じなんだ。
私は残される人の悲しみを減らしたくて。
この子は残される人の笑顔を増やしたくて。
方法は違うけど、やりたいことは一緒で。
つまりは今も…。
「…お断りよ」
「えええぇ!?そ、そんな!完璧な口説き文句だと思ったのに!?」
「どこが。『貴方より先に死にます』って、プロポーズだとしても最低よ」
「そんなぁ~…」
気が抜けたように床にへたり込むきらきー。
いちいちリアクションがオーバーな子だ。
見ているだけで疲れるし、相手をするのはもっと疲れる。
でも…。
「…3ヶ月だけなら、付き合ってあげるわ」
「ぇ…ま、マジっすか!」
「勘違いしないで。断って毎日しつこく言われてもうっとうしいからよ」
「むはー!生で『勘違いしないで』いただきましたー!」
「あ、どうしよう。いらっとする。やっぱり3ヶ月って言わずに今すぐ死んでちょうだい」
「冗談きついっすよ兎美ちゃん!?」
「本音よ」
本当に、いちいち反応が鬱陶しい子だ。
見ているだけで疲れるし、相手にするのはもっと疲れる。
でも…他に疲れることもないここなら、丁度いいかもしれない。
「兎美ちゃんー。ツンだけじゃなくてデレ見せてくださいよー。ツンデレは配分が大事なんっすよー?」
「しねばいいのに」
眩しいほどの笑顔を浮かべる彼女を罵倒して。
半年後に、こんな顔で死んでいる自分を妄想し、苦笑した。
— 17作目です。女の子同士の友情は大好きです。
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