『 三月ウサギ の ”二重” の扉 』　（第 １２ 回目！）

１２年毎のこの周期…　再び戦いが起きようとしていた。争いあうのは「十二神」と呼ばれる複数のグループ。

１２の時を司る「クロノス」、月を司る「マンスリー」、干支を司る「エトセトラ」、黄道星座を司る「ゾディアック」…

既に水面下では、お互いの動向を探りあう静かな戦いが始まっていた。



魚「おや？アリエス（おひつじ座）、久し振り。今日は何の用事だい？」

羊「やあ、ピスケス（うお座）、元気かい？いや、ちょっと顔を見ようと思ってね」

魚「なんだ、ボクたちは隣同士だろ？いつだって会えるじゃないか」

羊「まぁ、そうだけどね…他のみんなは、どうしてるかな？」

世間話をしながら、羊は魚の背後に回る。後ろ手に隠した網を広げ、魚を捕まえようとするが…



？「フ…アリエスよ、何をしてる？」

羊「うおっ！？…何ィ、バカな！ピスケスがもう一人（匹？）…？」

魚「何をギョっとしている？ピスケスは２匹で１対。”双魚”とも呼ばれているではないか」

羊「…そ、そうだったな、いやスマン（まさかナカマがいるとは…）」



魚「…お主の国で使う”木魚”も、二匹の魚が彫りこまれているだろう？」

羊「！くっ…！貴様…気づいてたのか…！」

魚「干支の戦士め。羊の皮を被っても、私の眼は誤魔化せんぞ！その化けの皮、剥いでやる！」

羊「あっ！やめっ…！」



魚「…あれ？皮をはいでも、中身は羊…」

羊「…だってボク、干支の羊だもん」

魚「変装の意味ないだろそれ…いや、羊同士だと違って見えるのか。しかし…ふふふ、おいしそうな子羊だな」

羊「ギクっ！魚に食われちゃうの？ボク」



魚「おっと、逃がさないぞ。息子よ、挟み撃ちだ！」　「はい！母上」

二匹の魚は正体を現します。美と愛の女神アフロディーテ（ヴィーナス）と、その息子、愛と情欲の神エロス（キューピット）です。

二人「ふふ、たっぷり可愛がってあげよう…愛と欲望の狭間で翻弄されるがよい。貴様はもうマナ板の上の鯉だ」

羊「キャー！別の意味でピンチ？！」



しかし、羊が二人に挟まれると、その姿はピチピチと跳ねる「鮮魚」に変わってしまいます。

二人「どうだ？魚になった気分は。…ふむ、新鮮なマグロだな」

羊（うっ…ダメだ、これ以上動けないし、何も感じない…ピチピチ、ピーンチ…！）

二人「それでは、別れの言葉を贈ろう…”いただきまーす”」



そして、干支の戦士が一人、この世を去った…



一方、双児宮にて。

双子「やあ、タウラス（おうし座）。干支の戦士の様子はどうだった？」

雄牛「ああ、ジェミニ（ふたご座）。奴らはまだ誰も覚醒していない。焦る必要はないだろう」

双子「…本当にそうかな？先ほどピスケスからアリエスに化けた干支の羊が迷い込んだと報告があったぞ」

雄牛「！くっ、あのドジ…！」



双子「生憎だったな。どちらも２対１では勝ち目はあるまい。観念しろ、この二重（ダブル）スパイめ」

この時点で、干支の牛は完全に勝機をうしなった…



その様子を、十二宮の中央に位置するバルゴ（おとめ座）の女神、正義を司るアストライアーは厳かに眺めていた。

乙女「どうやら、”これ”の出番ね…」



おとめ座の隣の天秤宮は、図書館（ライブラリー）」となっている。ライブラ（てんびん座）はその中に安置されていた。

乙女「マグロ肉も牛肉も、全部で100kg以上あるわね。大トロ・赤身。ロース・ヒレ。部位で分けて測らなきゃ」



哀れ、干支の戦士二人は、正義の女神が剣で捌き、天秤で重さを測った後、グラム○円で売リ捌かれた…

「さー、ラオックスで買うよりも安いよー！」



【補足】



今回は「第１２回」ということで、１２星座と十二支をテーマにした内容でした。



１２星座の先頭二つ、おひつじとおうしは、どちらも干支にも出てくる動物です。

しかも、牛は干支でも２番目。いつも惜しいところで一番になれないのですね（20への回答はそういう意味でした）

「皮をかぶった」というのは「化けの皮をかぶる」「羊の皮をかぶる」という言葉の連想でした。



そして、うお座。占星術で「双魚宮」と呼ばれるように、二つの魚がリボンで結ばれた形をしています。

魚の正体は、愛と美の女神アフロディーテ（ヴィーナス）と、その息子、情愛と性愛を司るエロス（キューピット）。

怪物から逃げるため、二柱一緒に魚になって川に飛び込んだのがうお座になった、とされています。



さて、二匹の魚に挟まれた羊くん…どんなかんじ（漢字）？やって見ると「魚羊魚」…　鮮魚になっちゃった！

新鮮ピチピチ、ピッチピチと跳ねる魚になったのでした。（前回の「触角」と似た構成ですね）



あとＣのヒント　つぶやき：ダブルでスパイスを買うチャンス失う？

⇒　ついったーなう：「ダ”ブル”（雄牛）でスパイすを買う（ＣＯＷ＝牛）チャンス　をウシ　なう」でした！



Ｅの図書館は英語でライブラリー（library）。天秤座はライブラ（Libra）。つづりも似ています。

が、libraryの由来はラテン語のliber（リベル、木の樹皮）。当時は、木の樹皮の裏側に文字を書いていた。

そこから「本」という意味が出て、「本屋」・「図書館」となったわけです。

てんびん座のLibraの意味は「”本”とは違う」のでした！



元々てんびん座は、おとめ座の「正義の女神」アストライアーの持つ司法の象徴だったと伝えられています。

アストライアーは、右手の天秤で罪の重さを量り、左手の剣で罪人を断罪する「法による裁きの神」です。

魚を剣で「捌いて」、天秤で重さを量る。肉屋さんや魚屋さんにも向いてそうですね！