【ラテクエ囲碁】霜降る早朝に

「雪だるまとかｗ遊びすぎｗｗｗ」

みんなはそういうかもしれないけれど、僕は本当に感動したんだ。



初日の出が創りだした、真っ赤な雪だるまを。



午前4時、父親のワンボックスカーを借り、友達を拾って走りだす。

寒いねーと白い息を吐きながら、自販機の缶コーヒーで手の感覚を取り戻した。

渋滞気味のバイパスを抜け、遠回りして海沿いを走る。



車載MDで流れるのは90年代のドラマの主題歌。

口ずさみはしない。

鼻歌でなつかしむ。



到着したのは寂れた海岸。

まだ暗くて何も見えやしない。

ピクニック用レジャーシートを砂に敷き、腹に仕込んでいたカイロで寒さを凌ぐ。



あまりの寒さにちょっと後悔。

でも本当に何もありゃしないんだけど、ちょっと楽しい。

ただ朝日を見るだけなんだけどな。



少し気温が上がり、遠くの景色も見え始めた。

高鳴る期待。

後悔なんてすっ飛んだ。



6時47分、日の出。



僕は今日初日の出を見に来たつもりだった。

でもそこにあったのは雪だるまだった。

陽の光が海面に反射して、2つの円が重なって見える雪だるまだった。



誰も何も言わない。

ただ馬鹿みたいに口を開けて、ほーとか唸ってる。

持ってきたカメラも出すのを忘れ、じっと眺めているだけで時間が過ぎていった。



帰り道。

MDはかけない。

僕以外はみんな寝てしまっている。



さっきまで誰もいなかった道。

今では振袖を着た女性や家族連れがちらほらいる。

年が変わったなあとしみじみ思いながら、皆を家に送り届け帰宅する。



さてこれから寝正月だ。

家族に今日見た雪だるまを自慢して、雑煮食って寝よう。