サクラサク

とある神社にて。

深々と雪が降り続ける中、今年も初詣客で賑わっていた。



神主は悩んでいた。

毎年多くの初詣客が来ては、おみくじを引き、そのおみくじを木の枝に結びつけて帰っていく。

神主は、その神社にある一本の桜の木に、

「おみくじは結び付けないで下さい」

という貼り紙をしているのだが、それでも沢山のおみくじが結びつけられ、溜息をつく。



木の生育が悪くなり、完全に枯れてしまう事もあるという。

また、不規則な枝に結び付けられる事で、取り外す作業にも時間がかかり思わぬ負担を強いられるという。



神社にたった一本の木を守るためであれば、幹の周りに柵を設けて立入禁止にする事も出来た。

しかし神主の粋な計らいなのか、そういった事はしなかった。

むしろ、人間の良心に任せようと考えていた。

だが、そろそろ限界だ。

このままでは桜の木は嘆き続けるかもしれない。



そう思った神主は、翌年の初詣に向け、桜の木の横に3本の低い木を植樹し、おみくじの色を淡いピンク色に変えて、其処に結びつけてもらう様にした。

「この木におみくじを結んで桜のようにして下さい」

という貼り紙を添えて・・・



翌年、おみくじを引いた人々は、植樹された木におみくじを結んで帰るようになったという。

神主の狙いは当たった訳だ。

初詣が終わる頃には、満開となった桜のように、3本の木はピンク色に彩られた。



それでも、元々ある本当の桜の木に、おみくじを結んで帰ってしまう者もいるのだが・・・





※平安神宮などでは実際にピンク色のおみくじで桜の木の様に見立てて結んでもらっているようです。

まだ実物は見たことはないのですが、近いので今度見に行ってみようかな。