まずい特産品

ラテラル茸が採れるのはラテラル村の山。そこは熊が出没する場所である。ラテラル茸は熊にとっても貴重な食糧らしい。

美味しいと噂のラテラル茸は地元では人気で、慣れた人はよく収穫しに山に入っていた。その噂は村の外でも広がり、中には「高く売れる」ということで県外からも人が集まるようになった。専用の買い取りする人まで待ち構えているそうだ。

その結果、山で熊に襲われる人が急増したのだ。それでも山に入る人が後を絶たず、中には生活費の足しにしている人もいる。立入禁止区域に指定しても、入る人は入るものだ。



そんなわけで、テレビでは「美味しい」「高く売れる」というイメージを払拭すべく、「マズイ」「おいしくない」「こんなのにお金を払いたくない」と酷評したのだ。マイナスのイメージを植え付けると、食べる人が少なくなり、取りに行く人も少なくなる。また、いくら買い取っても売れなければ意味が無いため、買う人が少なくなる→買い取りする人も少なくなる→買い取り値段が安くなり、採る人が少なくなる、という流れになるため、熊の被害が防げる。



村の人々がどう思っているのか知らないが、熊の被害を減らすためにはまず山に入る人を減らさなければならない。テレビのスタッフはそう考えたのだ。



要約：ラテラル茸がある山には熊が生息しており、ラテラル茸を採るために山に入る人が被害に遭うことが多かった。そのため、ラテラル村の山にラテラル茸を採りに行く人を減らすためにネガティブなイメージを視聴者に植え付けようと考えたため



【カメコの豆知識】

秋田県鹿角市では、「ネマガリダケ」というたけのこを取りに行って、熊に襲われる被害が後を絶たないらしいわ。ネマガリダケはよく味噌汁や煮つけにして食べられるたけのこなのだけれど、これを取りに多くの人が山に入るらしいの。近くには買取をする人もいて、中には数万円稼ぐ人もいるらしいわ。

こんなに沢山の人が採りに行くほど美味しいのか、と思うと、私も採りに行きたいと思ってしまうわね。実際に「マズイ」とか「お金払いたくない」なんて、影響力の強いテレビで言うといろいろ問題が起こりそうだけれど、命を懸けてまで採りに行く価値があるのか……というのは考えてほしいわね。