ウミガメのスープ

お利口さんだよ!兎美ちゃん!

作者: 彩蓮燈

お兄ちゃんが大好きな兎美ちゃんは、とってもお利口な10歳の女の子。
テストはいつでも百点満点!
お兄ちゃんの亀夫くんも「お前は自慢の妹だ」と褒めてくれます。
その日も兎美ちゃんはみんなが間違えるような問題にひとりだけ正解してお家に帰りました。
その夜、兎美ちゃんは死んでしまいました。
なぜ?

出題者が、解き手の進み具合に応じて上から順に出すためのヒントです。

ヒントはまだありません。

過去の実際のやりとりです。質問されたら参考に答えてください。

いいえ

兎美ちゃんは殺されましたか?

No!彼女は自殺しました!

いいえ

正解すると死ぬという状況を理解していた登場人物はいますか?

No!正解しても兎美ちゃんが死ぬとは、誰も思っていませんでした!

いいえ

みんなが間違えるような問題とはテストにあったものですか?

No!この問題はテストに掲載されたものではありません!

兎美ちゃんは亀夫君のために自殺しましたか?

YesNo!そうとも言えますが、自分のために自殺しました!

10歳という年齢は重要ですか?

YesNo! 重要度は低いですが、彼女がもう少し大人なら、死ぬことはなかったかもしれません。

いいえ

みんなが間違えるような問題に正解できたのは、正解に至るのに必要な情報を得たためですか?

No!情報は皆平等でした。彼女は自力で正解を導きました。

はい

みんなが間違えるような問題に正解できたのは、正解に至るのに必要な情報を得たためですか?

Yes!兎美は自分の愚かさに絶望しました。

はい

兎美は亀夫が兄として好きでしたか?

Yes!あくまで家族として愛していました。非攻略対象です。

はい

みんなが間違えるような問題に正解したことで、自らの愚かさにきっきましたか?

Yes!正解した結果、彼女は自分が馬鹿だったことに気付きました。

いいえ

妄想は関係しますか?

No!妄想は関係しません。彼女は現実的な女の子です。

はい

テストは学校のテストですか?

Yes!ミスリード注意です!

いいえ

亀夫は先生ですか?

No!教職についているわけではありません!

いいえ

兎美ちゃんは色盲ですか?

No!彼女は目に見えるものを信じるリアリストです!

いいえ

サイコパス診断で、殺人鬼しか分からない様な答えが分かってしまい、将来人を殺さない為自殺しましたか?

No!兎美ちゃんは常識的な倫理観の持ち主です!

いいえ

亀夫はテストの採点や問題の答えに介入できる人物ですか?

No!亀夫くんは介入できません。

いいえ

不正行為は関係ありますか?

No!関係ありません。兎美ちゃんは本当に実力で問題に正解しました。

テストは学校の教科(国語、算数、理科、社会)のテストですか?

YesNo!その中には問題の教科はありません。その中には。

いいえ

テストの教科は保健体育ですか?

No!保健体育で満点ってなんだかやらしいです。

いいえ

テストの教科は音楽ですか?

No!音楽ではありません!実技重視のテストで満点って難しそうですよね。

はい

みんなが間違えるような問題は、小学生以外にも目に触れる問題ですか?

Yes!小学生以外でも普通に目にします!

いいえ

家庭科ですか?

No!家庭科のテストでもありません。でも兎美ちゃんはお料理は上手です。

いいえ

テストの教科は英語ですか?

No!しかし英語でもありません?あれ、出尽くした…?

はい

テストの教科は、算数ではなく数学ですか?

Yes!兎美ちゃんはが解いたのは数学です!

兎美ちゃんと同じ状況下で、自殺する人は多数派ですか?

YesNo!問題を正解する、という意味なら少数派でしょう。

はい

例えばフェルマーの定理のように、過去に正答の見つかっていなかった問題に兎美は解を見出しましたか?

Yes!!その通りです!今回は架空の定理としております。

いいえ

兎美は計算中毒ともいうべき症状であったにも関わらず、解くべき問題を全て解きつくしてしまったために絶望して自殺しましたか?

No!まだ世界に謎はたくさんあります。でもちょっと掠ってます!

いいえ

兎美ちゃんが自分を愚かだと思ったのは間違いですか?

No!少なくとも、彼女の中では間違いなく愚かでした。周囲の反応はさまざまでしょう。

はい

兎美が正解したことで、誰かが傷ついたり、死んだりしましたか?

Yes!人が亡くなっています!!

いいえ

兎美ちゃんにとってはその問題を解くことが生きる目的でしたか?

No!彼女はその問題に特にこだわってはいませんでした。しかし…。

いいえ

兎美ちゃんはプライドと名声を守る為に自殺しましたか?

No!兎美ちゃんはプライドや名誉に興味はありませんでした。

はい

核心数学者の亀夫が妹に先を越されて自殺、兎美は大好きだった兄の後を追って自殺しましたか?

Yes!!その通りです!やられました!!

はい

死んだのは亀夫くんですか?

Yes!亀夫くんが失意の中で自殺しました!

はい

兎美が答えを出した未解決問題はキラキーの定理ですか?

Yes!!なぜわかった!?

いいえ

ウホウホ言ってますか?

No!亀夫くんは言ってるかもしれません。ウホっ、いい筋肉…!

いいえ

「いつもいつも亀夫くんに褒められて・・・頭までなでてもらえるなんてウラヤマシイ・・・。妹だからって許されることじゃないわよね?ね?腹の中では何をカンガエテイルノカわからないしネ?だって亀夫くんは私のダモンネ?」というヤンデレきらきーちゃんにずっと執拗な嫌がらせを受けていて、兎美「この問題が解けたら・・・もう死んでいいかな?ゴメンね、おにいちゃん・・・」と精神を病んで自殺しましたか?

No!兎美ちゃんは死ぬぐらいならきらきーを殺す行動力の持ち主です。お兄ちゃんどいて!そいつ殺せない!

彩蓮燈さん、出題お疲れ様でした。セルスさん、FAおめでとうございます。カルアさん、ナイスアシストお見事です。

Yeah!ありがとうございます!

はい

核心改めまして キラキーの定理ですね?

Yes! 亀夫くんを夢中にさせた定理です。さすがきらきー!

アハハ

ウルサイ!と手首を切ります。

答え

学ぶことが好き。
新しいことを知るのが好き。
理解を広げるのが好き。
先人の残した知識が私を蕩けさせる。
先人の遺した謎が私を魅了する。
未知が既知になった時のあの感覚が私の心を放さない。
記憶はないけど、生まれた時から私はこうだったに違いない。
学ぶことが好き。
だけど、一番大好きなのは…お兄ちゃん。

亀夫お兄ちゃんは私より20歳以上歳上で、少しだらしない所のある数学者。
一人じゃご飯も作れなくて、子供みたいに笑って泣いて、何かやりだすと周りのことなんて全然見えない。
だけど、誰よりも一生懸命で、私に真摯に向き合ってくれた人。
未知が我慢できなくて、どんなことでも質問攻めにして、両親からも辟易されていた私にずっと付き合ってくれた…私の世界を広げてくれた人。
小学校に馴染めず、邪魔者扱いされていた私に海外の飛び級制度を勧めてくれたのも、異国の地について来てくれたのも、全部お兄ちゃんだった。
大学の試験で満点を取った時、私の論文が認められた時、お兄ちゃんは「お前は自慢の妹だ」って頭を撫でてくれた。
そのたびに私は、もっと頑張ろうって思えた。

ある時から、お兄ちゃんはひとつの問題に囚われた。
それは過去の数学者が遺した「きらきー定理」と呼ばれる未解決の命題。
今までにも多くの数学者を虜にした魔性。
一度でも興味を持った者を逃さず、絡め取り、一生かけて夢中にさせる。
お兄ちゃんはその闇に飲まれてしまった。
盲目的に恋人を愛するように、食べるものも食べず、寝る間も惜しみ、定理の全てを暴こうと努力した。
試験で満点をとっても、博士号を取得しても…頭を撫でてくれなくなった。

だから私は、定理(カノジョ)を明(コロ)した。

矛盾を引裂いた。概念を屠殺した。虚を一片残らず解体した。
僅かな魅力(ナゾ)も残らぬほどに、凡人ですらも容易に理解できるほどに、噛み砕いて噛み砕いて噛み砕いて噛み砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて咀嚼して咀嚼して咀嚼して咀嚼咀嚼咀嚼咀嚼咀嚼咀嚼――――!

定理の全てを明かし、学会に提出して、認められて。
これでお兄ちゃんは私を見てくれる。
また、褒めてくれる。
今までの分も、いっぱいいっぱい撫でてくれる。
期待を込めて、扉を開いて。

お兄ちゃんは首を吊って死んでいた。

私は気付くべきだった。
お兄ちゃんも私を同じで、知識を求め続けないと耐えられない人だということに。
数式ばかりを見て、歴史ばかりを識って、人の心をまったく学んでいなかった。
一番大切にしていたものを、見ようとしなかった。

お兄ちゃんの足下には、遺書が残されていた。
それには定理への思いと無念。失ったことへの絶望がつらつらと綴られていて。
私の名前は、書かれていなかった。
一度も…書かれていなかった。

ぶら下がったお兄ちゃんの手を取ると、ひんやりした死の感触が伝わってくる。
初めての感覚。未知の感覚。しかし私の心は凍りついてしまったようになにも感じない。
手を、そっと自分の頭に添える。
以前よくやってくれたように、撫でるように動かしてみる。
やはり何も感じない。

「…ああ、そっか」

お兄ちゃんは、こんな気持ちを味わったんだね。
ごめんね。
こんなの生きていけないよね。
私、ひどい妹だね。

テーブルに残ったロープを手に取り、お兄ちゃんの隣にぶら下げる。
冷たいお兄ちゃんの手を握る。こうすればせめて同じ場所にいけるような気がした。
不思議と恐怖はなかった。
何もなかった。
空っぽだった。

私は台を蹴る。
次は人に優しく出来る馬鹿な子に生まれることを願って――。

— 四作目です。妙に悟った妹って可愛いと思います。

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