ウミガメのスープ

私の話を聞いて頂戴

作者: 藤萩

へぇ、ここがラテシンなのね。
なんだか頭の良さそうな人達ばかりいるわ。

私?藤萩って人に言われてきたのよ。「ここでなら話を聞いてもらえるから」って……早速お願いして良いかしら?
ああ、もちろん此処の流儀に乗っ取るわ。私は事の顛末を全て知っているし、質問には「はい」か「いいえ」でしか答えない。じゃ、早速お願いするわね。


一歳、私は父に見捨てられた。
しかし母は、父が長年私を育ててきたと主張した。
その結果、日本中の人々が私の美しさを讃えることとなった。


さて、一体これはどういう事なのかしら?
状況説明をお願いするわ。

出題者が、解き手の進み具合に応じて上から順に出すためのヒントです。

ヒントはまだありません。

過去の実際のやりとりです。質問されたら参考に答えてください。

はい

一歳は私の年齢ですか?

Yes。私の年齢で合ってるわ(ミスリード有り)

いいえ

「私」「父」「母」は全員、人間ですか?

Noよ。ふふっ、さすがね

はい

私は人間ですか?

Yes。やっぱりすぐ来ちゃったか

いいえ

私は父母と血のつながりがありますか?

No。ないのよそれが

いいえ

日本中の人が「私」の美しさを讃えたのは、外見のことですか?

No。外堀が埋まってきたわ

いいえ

美しさとは外見上のことですか?

No。結婚おめでとう!

いいえ

私は富士山ですか?

No。誰よりも高く聳え立つ……そんな問題になりたかったけど難しいものね?

はい

重要人物は 私、父、母ですか?

Yes。重要人物はその三人よ

いいえ

父が育てたとは、金銭的な面でですか?

Noね。

いいえ

私は父母の飼っているペットの類ですか?

No。

いいえ

僕たちも私を知っているでしょうか?

no。私個人は知らないわ

いいえ

「私」は、父に見捨てられた後、母と一緒にいましたか?

No。だって私が母と会ったのは……・

いいえ

母も私を見捨てましたか?

No!母が私を見出したの!

はい

6行目の私を見捨てた父と7行目の私を育てた父は同一人物ですか?

Yes。ただし……

いいえ

私は数式?

No。でも近くなってきてるわ

私は小さい時(昔)は醜かったですか?

ちょっと難しいけど、Noよ。父には気に入らなかったんじゃないかしら

いいえ

父が長年私を育ててきたと主張したのと母が主張したのは私が1歳のとき?

No!赤ちゃんが成人式を迎えるくらいには月日が経ってるわ

いいえ

私は生物ですか?

No。ここも重要よね

いいえ

長年とは一年のことですか?

No。結構月日が経ってるの

はい

「日本中」とは「日本人」と解釈して良いですか?

Yes、それで相違無いわ。でも人種はあまり重要じゃなくて、大勢なのが重要なの。

はい

「父」と「母」は人間ですか?

Yes。私は違うけれど

いいえ

「父」と「母」は夫婦の関係ですか?

No!ふふっ、気付いてくれてよかった

いいえ

私はアニメ等のキャラクターですか?

No、だけどかなり近いわ。キャラクターじゃなくて・・・・・

はい

私は日本で生まれた?

Yes、父母が日本人だから必然的にね

いいえ

父と母は結婚していますか?

No! でも例えても良い関係だわ

いいえ

父と母の性別は関係しますか?

No。実は関係しないの。でも私を生んだのは間違いなく二人よ

はい

母と父は出会ったことがありますか?

Yes。ほぼ毎週会ってるわ

いいえ

「私」は、プログラム・ソフトなどのデータですか?

No。近いわ。私は「美しい」と褒め称えられたから……

いいえ

私はPCのデータですか?

No。23をちょっと変えて!

はい

母の主張がきっかけで日本中が美しさをたたえた?

Yes。結果的にだけれど……父が私を見出したのは母の主張があったからだから

いいえ

私はボーカロイドのようなものですか?

NO。本来意思あるものではないの

いいえ

私はひらがなですか?

No。ひらがな、漢字、かたかな、色々使うわ……あっ

いいえ

私は字幕ですか?

No。

いいえ

私は色ですか?

No。ちょっと遠ざかっちゃったわ

いいえ

私の美しさは滑らかな動きですか?

No。人の手を借りれば滑らかに動くことはできる……かしら?

いいえ

私はコピー機ですか?

No!

いいえ

私は鉛筆ですか?

NO

いいえ

私はスーパーコンピューターですか?

NO

いいえ

私はPCですか?

No

いいえ

私が見捨てられたのが「一歳」である(と考えた)のは重要ですか?

No? 父に捨てられた時と母に見出された時の間に、年月がたっていれば良いの。二歳でも三歳でも成立するわ

はい

「私」は「物語」ですか?

Yes! 信じてたわ……!

いいえ

No。アニメ化してほしいわね

いいえ

音声は関係しますか?

No

はい

父は作者ですか?

Yes! 一度私を見捨てた作者様よ!

はい

父と母はまだ存命?

Yes。バリバリ現役ね

はい

「母」は出版社の人間ですか?

Yes。編集者さんね

はい

母が没?になった私を見つけた?

Yesと言っていいわ! 父が面白半分で見せたものを気に入ってくれたの

私は官能小説ですか?

父なら鼻血を出しながら書くわねw Noよ

二十年経ってやっと私の良さに時代が追いついたのですか?

い、YesNo? 父が気に入らなかったってことはそうなのかしら……・?

いいえ

小説では冴えなかったが、ドラマやアニメにすることで成功しましたか?

NO! しょ、小説でも冴えてるわ……多分! あと誰かアニメ化してほしいわ

核心父が私を生む→没→20年後母が見つける→これ面白いよと父にはっぱをかける→よ~し、パパがんばっちゃうぞ~→ヒット!みないな感じですか?

ふふっ、Yes。大まかな流れは合ってるわ。ただ補足だけど……父だけ知らなかったことがあるの……

いいえ

母が改変して世に出したのが有名になった?

No? 編集者としての仕事はしたけど、母は改変してないの

いいえ

まさか出版されるとは思ってませんでしたか?

No。母に言われて出版することにしたから

いいえ

まさか、作者が母の名前になっていて、父「印税来ないじゃん!」と叫びましたか?

Noww さすがの私も怒るわww

いいえ

著作権は重要ですか?

No。母は父のことを大切にしているの

いいえ

父は純文学のつもりで書いたのに、出版されてみたらラノベになっていましたか?

No。え、もしかして私のキャラがラノベっぽいから……?

はい

父は私がこんなにかわいい口調だということを知りませんでしたね。もったいない・・・

Yes! ありがとう、そんなこと言ってもらえるなんて私は幸福ね

いいえ

昔に執筆した作品なのに、「最新作」と銘打って売り出されましたか?

No! でも考え方は良いわ! 銘打たれた内容が……

はい

核心20年間作者が考えてきた作品!

Yes! よくぞここまでたどり着いたわ! 解説に行くわね

いいえ

「隠れた名作」と銘打たてましたか?

NO……! 惜しかった、でも貴方も素晴らしいわ!

答え

「先生!」
「うわっ!?」

パソコンの前で文章を練る父の前に現れたのは担当の編集者だった。
彼女はいつも父が成功するようにと一生懸命尽くしてくれている。そんな彼女に心を許した父は、二十年前に考えてボツにした小説の断片を彼女に見せた。
その断片を何を血迷ったか気に入ってしまった彼女は「本にしましょう!」とノリノリで父に主張し始めた。父は初めはしぶしぶ筆を走らせていたのだけど、気がつくと一年も執筆に熱中していたわ。心血注いで一冊の本を作ったの。
結果――

「すごいですよあの本!絶賛の嵐です!」
「そうみたいだな……」
「『文章が美しい』ってあの偏屈な批評家が褒めてましたよ! 評判でもやっぱり『表現が綺麗』ってのが多くて……私びっくりしちゃいました!」

頬を紅潮させ叫ぶ彼女に父は溜息を吐いた。煙草を灰皿に置きぼりぼりと頭をかく。

「いや嬉しいけどさ……嘘のアオリ文はどうかと……」
「嘘? 嘘なんてありましたっけ?」
「『構想二十年、ついに成る!』って……俺あの小説を書いてたのは最初の一年位、それも作家になる前だし。二十年はまるっと忘れてたし、今や黒歴史認定だよって笑いながら君に見せたのに……どうしてこうなった」
「物は言いようってヤツです。いいじゃないですか、二十年ほったらかしっていうのも……ほら、ネタを寝かせてたんですって! 今もよくやるでしょう?」
「随分と長いおねんねだなオイ……」
「でも結果バカ売れです! 発掘した私を褒めて下さいよー!」

……仕事の打ち合わせが終わり彼女が帰った後、パソコンを閉じながら父は言った。

「まぁ、あれだ。中々良い出来だったよな」


……うん、私がその本なの。父って言うのは私を生んだ小説家ってことね。
呆れちゃうでしょ?二十年間ほったらかしておいていきなり引っ張り出すんだから。その上褒められたら満更でもないなんて現金。
でも……一年は愛してくれたから構わないわ。これからはもっと沢山の人に愛してもらえるだろうしね。


ねぇ、あなたも寝かせてるネタあるんじゃない?
起こしてあげるのも一興よ?

— 初出題です。SPはディダムズさんです。ありがとうございました。

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