ウミガメのスープ

当たり前マジック

作者: 黒井由紀

会場が暗くなると、一条のスポットライトが男を照らした。
シルクハットの前側のつばを持ち、目深に被っているせいで、表情は読めない。
男は、シルクハットから透明な何かを取り出して見せると、観客の一人に手渡した。
観客は、折り畳まれていたそれを広げ、熱心に確認した。種も仕掛けもないビーチボールのようだ。
男がジェスチャーで促し、それに応えるように観客がビーチボールを膨らませた。
観客が膨らませたボールを返すと、男は空中でそっと、ボールから手を離した。
ボールは、一直線に床へと吸い込まれていく。
「ボールが落ちたぞ!!」
観客は驚きにどよめき、その後男に喝采を送った。
どうしてこんなことになるのだろう?

出題者が、解き手の進み具合に応じて上から順に出すためのヒントです。

ヒントはまだありません。

過去の実際のやりとりです。質問されたら参考に答えてください。

いいえ

現代日本で成立しますか?

NO! 現代日本では成立しません!

はい

男はマジックを披露していますか?

YES. 男はマジックを披露しています。

みんな重力を知らないので驚きましたか?

YESNO! 男が披露しているのはあくまでマジックですが、思考はその線で合っています!

はい

非現実要素はありますか?

YES SF要素があります。

いいえ

20年以上前の日本で成立しますか?

NO. 過去の日本では、どの時代でも成立しません。

いいえ

核心3 魔法使いの観客が息を入れることでボールが浮くようになったはずなのに落ちたからですか?

NO. 魔法は関係ありません。ですが、「浮くはずなのに落ちた」から驚いた点は合っているので、正解を付けさせていただきます。

はい

宇宙船の中ですか?

YES! 舞台は宇宙空間です!

宇宙人関係ありますか?

宇宙人は登場してもしなくても構いません。

答え

時は30XX年、イプシロン宇宙ステーションの中の球形シアターにて。
ミスター卯弾の十八番「落ちるビーチボール」に観客たちは熱狂した。
完全に無重力状態の中、種も仕掛けもないビーチボールが床へと落ちる。
言葉にしてしまえばただそれだけだが、生で目にすると驚きはひとしおだ。
ビーチボールはただのビニールだし、中の気体は観客の息。糸も見当たらないし、磁力や風があるわけでもないのに、それでも床へと落ちる不思議さは、他では類を見ない。
特に、生まれてこの方無重力、という世代にはぜひ見てほしい。
       (「月刊マジック」30XX年5月号より)
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