ウミガメのスープ

ブス?否、美人!

作者: 野生のキャベツ

ある晩のこと。
二人の兄弟が車を走らせていると、前方に女の後ろ姿が見えた。

「兄者僥倖じゃあwwあれは絶対美人だでw」
「ほぉwじゃあこうしようww」

車は兄が運転しており、追い越しざまに弟が女の顔を確認することにした。

「美人だったらこの先のコンビニで待ち伏せしたらいいだでww」

さて、車はぐんぐん女に近づいていき、ついに追いついた。

(ほぁぁ......)

弟は絶句した。
それは本当に美しい女性であったのだ。
弟は周りがスローモーションになったように感じ、その中で彼と女は見つめ合った。

そして車は勢いよくコンビニを通過した。


なぜか。

出題者が、解き手の進み具合に応じて上から順に出すためのヒントです。

ヒントはまだありません。

過去の実際のやりとりです。質問されたら参考に答えてください。

体育さんは関係ありますか?

当然NOさあ![タイトル回収記念良質]

いいえ

女も車を運転してる場合、二つの車のスピードの相対によってスローモーションに感じましたか?

NO ですが着眼点は見事です。

いいえ

「コンビニを通過した」とは、コンビニに車で突っ込んで突き当たりの壁をブチ抜いたという認識で良いですか?

NO 普通に前を通過してください。

はい

女は幽霊だったので怖くなって逃げましたか?

YES

いいえ

弟は車の窓から身を乗り出して女性の幽霊を見ていたら車から振り落とされたので周囲の景色に対して相対的に移動がスローになり、運転していた兄は幽霊を怖がってスピードを上げてコンビニ前を通過しましたか?

NO 兄は弟を見捨てたりしません。

いいえ

女の幽霊は車に乗っている状態でしたか?

NO です。

はい

核心車を追い越した瞬間に、それまで歩いていた幽霊が急に車と同じ速さで追ってきたのでコンビニなんて無視して逃げますか?

YES 正解とします!

はい

弟は女の幽霊の顔をみましたか?

YES 顔は見たのです。とても美人だったのです。

はい

核心幽霊が車に負けじとダッシュしたので、車の速度に近づいたためスローモーションの感覚になって、ヤバいと思って更にアクセルを踏んだせいでコンビニを通り過ぎてしまいましたか?

YES 正解とします!

はい

兄は女が幽霊だと認識できましたか?

YES 兄は運転してましたからね。微妙なところですが最終的にはそうだと気付きました。

はい

核心女の霊がテケテケさながらの猛スピードで追いかけてきたので感覚的にスローモーションに感じ、アクセル全開で逃げ切ろうとコンビニの前をぶっちぎりましたか?

YES お見事!

答え

【解説】

スローモーションのように感じたのは女が車と同じ速度で移動し始めたからで、兄弟はそれに気付いた。
二人は女がこの世の者ではないことを悟り、逃げることにした。



【以下、ストーリー】

80km/h

一般道ではあるものの人通りはなく、兄弟は野放図に車をとばしていた。

「兄者w前に女がおるでw」
「後ろ姿が眩しいのぅww」

兄弟は女の顔を確認することにした。
追い越しざまに助手席の弟が振り返って顔を確かめるのだ。
本当に美人だったら、この先のコンビニで待ち伏せしてナンパでもしよう、と。

「兄者wちょっとはスピード落とさんとよう見えんじゃろww」
「阿呆がwそんなことしたら警戒されるべw」

そのまま車はぐんぐん女へ接近し、ヘッドライトがその背中を照らす。
そしてついに追い越すその時、弟は女の方を振り返る......はずだった。

(ほぁぁ......なんじゃこりゃあ)

その一瞬、弟の視界がスローモーションのようになった。
女は大変美しかった。まるでこの世の者ではないかのように。
車は女を追い越すことなく、女は助手席の窓の外に留まり続けた。
それどころかこちらを見て微笑みさえ浮かべているようである。
弟は恍惚とした。
兄の声を聞くまでは。

「どうだったww」

兄が弟に聞く。
弟の耳にその声は届いた。
それはスローモーションではなく、現実味を持ったいつもの兄の声であった。
しかし窓の外では女が微笑みを湛えている。

「どうだったかと聞いておろうwwそんなに美人だったかwww」

街灯がすごい勢いで目の前を通過して行く。
しかし女はそこにいた。
車の速度計を見る。80km/h。
周りは暗い夜道だったが、確かに車はその速度で走っている。
もう一度窓の外を見る。

女はやはりそこにいた。

「さっきから何ずっと窓の外見とるんだwwもっと美人がおったか?ww俺にも見せぃw」
「兄者見るな!」

兄は見た。
それはさっき追い越したはずの女であった。
さっき追い越したはずの女が、まだ窓の外におり、こちらを見て、

ニタニタ笑っていた。

「......どういうことや」
「兄者、逃げろ」

80km/h......100km/h......120km/h......
車の速度はどんどん上がっていく。

「兄者だめじゃぁあ!まだおる!」
「じゃかあしぃ!わかっとる!!」

兄はアクセルをいっぱいに踏み込んだ。



その夜、人気のないコンビニの前を、一台の車が猛スピードで通過して行ったそうだ。
車はその先の急カーブを曲がり切れずにガードレールに衝突したらしい。
中には二人の兄弟が乗っていて、残念ながら即死とのことだった。
しかし現場を見た警察関係者には不可解なことがあった。
車の外にも血液がべったりと付着していたのだ。
ちょうど車とガードレールの間に、挟まれた人物でもいたかのように。
調べてみても兄弟の血液とは異なるものだった。

それが誰の血痕だったのか。未だに判明していない。



【元ネタ】

小野不由美『鬼談百景』(角川文庫)の中から、『追い越し』より。

— 元ネタありんす。

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