ウミガメのスープ

アミルスタン羊のナムヌモ・ソースがけ

作者: 長串望

ステイガーは酒も煙草もやらないが、うまい料理にはとんと目がない。
家族や町の人は食に厳しく、そんな環境だからこそ食道楽に育ったのかもしれない。

ある日食道楽の友人に紹介されたレストラン。
一見さんお断りの会員制なのだが、これがまた実にうまい料理を出す。
其処でご馳走された世間に秘密の特別料理。
アミルスタン羊のナムヌモ・ソースがけ。

他で食えないこの料理のため、密かに通い詰めるステイガー。
しかしある日とうとう特別料理が父親にばれてしまう。

すると父親は大いに動揺し、家族たちも大騒ぎ。
話を聞いた街の人の中には、ステイガーを非難するものまで出た。
結果、なんとステイガーは勘当され、家からも追い出されてしまった。

更に(ステイガーにとって最も悲惨なことに)この騒ぎでレストランも潰れてしまった。

「なんてこった、何もかも失って、しかもアミルスタン羊も食べられない」


一体どういうことなのだろう? 状況を補完してください。


※初出題となります。
色々と至らないこともあると思いますが、ご容赦ください。

出題者が、解き手の進み具合に応じて上から順に出すためのヒントです。

ヒントはまだありません。

過去の実際のやりとりです。質問されたら参考に答えてください。

はい

宗教・民族・部族等のタブー(禁忌)は関係ありますか?

YES

はい

ステイガーの住んでいる地域(アミルスタン?)以外でその料理を食べることはできますか?

YES

いいえ

アミルスタン羊は、羊肉ですか?

NO

はい

街の人たちがステイガーを非難したのは食に厳しいことが関係してますか?

YES

いいえ

人肉オチが濃厚なような・・・その料理は一般的な倫理観に反しますか?

NO 少なくとも日本の「一般」においては倫理的に問題のない食材と言えるでしょう。

はい

そのレストランでは宗教で禁止されている食材をアミルスタン羊として提供していましたか?

YES その通りです。

はい

町の人が食に厳しいとは、味にうるさいのではなく、食の戒律に厳しいという意味?

YES その通りです。

はい

宗教的禁忌に触れる食物を食べたから・・・後は何を答えれば?『羊』の正体ですか?蛙やら鯨やらと無限の選択肢があるような?

YES 羊の正体を当てたところで解説に参りましょう。

いいえ

アミルスタン羊とされる肉は豚肉でしたか?

NO アミルスタン羊の肉は豚肉ではありませんでした。

いいえ

ヒンドゥー教徒と牛肉の話ですか?

NO ヒンドゥー教徒でも牛肉でもありません。

いいえ

せっかくだから「人肉ですか?」って聞いてみるぜ!…人肉でつか?

NO ニンニクではありませんでした。

いいえ

羊でないけど、ヤギとかアルパカとか羊っぽい動物ですか?

NO ヤギでもアルパカでもありませんでした。

いいえ

これは日本でも起こりうることですか?

NO 私の知る限りは日本では起こりそうにありません。

いいえ

象ですか?

NO 象ではありませんでした。

いいえ

ソースは関係ありますか?

NO ソースは関係ありませんでした。

はい

ユダヤ教ですか?

YES ステイガーはユダヤ教社会で生活するユダヤ教徒でした。まあ彼自身はさほど真面目ではなかったようですが。

はい

海の生き物ですか?

YES その通りです。

いいえ

陸の生き物ですか?

NO 陸の生き物ではありませんでした。

いいえ

タコですか?

NO タコではありませんでしたが…。

カニですか?

カニではありませんでした。

海棲哺乳類ですか?

海生哺乳類ではありませんでした。

はい

核心じゃあイカですか?

YES 答えはイカでした。それでは回答に参ります。

いいえ

鯨(クジラ)ですか?

NO 鯨ではありませんでした。

答え

ユダヤ教徒のステイガー。
彼は酒も煙草もやらないが、うまい料理にはとんと目がない。
彼自身はさほど熱心な教徒でもないが、彼の家族はみな正統派。
ついでに言うならばまわりはしっかりユダヤ教社会。
胸を張って戒律を破れるものでなし、そもそも食材が手に入らない。
禁じられているからだろうか、なおさらに食べたくなる。
いっそ外国に引っ越せたらよいのだが、そんなお金もありはしない。

ある日食道楽の友人に紹介されたレストラン。
一見さんお断りの会員制なのだが、これがまた実にうまい料理を出す。
其処でご馳走された世間に秘密の特別料理。
アミルスタン羊のナムヌモ・ソースがけである。

なんということはない、般若湯や赤マグロと言った言い換えの一種で、
その正体は戒律で禁止されているイカの料理である。
他所では食べられない珍味にさしものステイガーも舌鼓を打った。

ステイガーに言わせれば禁止されていようと、うまいものは仕方がない。
他で食えないこの料理を逃してなるかと通い詰めるステイガー。
しかしある日とうとう厳格なユダヤ教徒である父親にばれてしまう。

食道楽のために戒律を破る息子に怒るやら呆れるやら、
いい加減頭にきて勘当を言い渡してしまった。
正統派ユダヤ教徒である家族もお父さんの言葉に頷くばかり。
家からも追い出されてしまった。

そして最悪なことに、戒律で禁じられた食材を出すとして、
レストランは経営悪化、潰れてしまった。

「なんてこった、何もかも失って、しかもアミルスタン羊も食べられない」
「なに、また食べられる日も来るさ」
友人は殆ど慈しむように肩に手を置いて慰めてくれたが、
いつかあの香ばしいイカの香りをかぐ日はあるのだろうか。


__________________
お疲れ様でした。
アミルスタン羊のナムヌモ・ソースがけ、如何でしたでしょうか?

問題自体はシンプルに、そこにミスリードを和えて仕上げました。

第一のミスリードは「食堂楽と食に厳しい人々」。
食に厳しいという言葉の真実は「食べるものが戒律で厳しく決められている」こと。
「食道楽」のステイガーに惑わされないように。

第二のミスリードは「アミルスタン羊」。
これは二重のミスリード。
スタンリイ・エリン氏をご存じであれば、きっと人肉とお疑いでしょう。
人肉の疑いを退けた方に襲いくるミスリードは「羊」。
肉と思っていた方には、イカという答えは意外だったでしょうか?

第一のミスリードを退けた後の食べ方はいたって簡単。
「大きな分類」→「小さな分類」。
すなわち「どの戒律(宗教)か?」→「いかなる類の生き物か?」

失敗したところとしては、後半のぐだぐだをふせぐため、
もうすこし「羊」の特徴を述べておくべきだったかもしれません。

食べ慣れた皆様には、むしろあっさりしすぎだったでしょうか?

それではまたお会いいたしましょう。

— 人を食った話。難易度は中~上。

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