歯車
被告は、通行人を車ではねてそのまま逃走したという若い男。男は罪を認めており、証拠も問題なく揃っている。
少なくとも有罪は間違いないだろう……そう思っていた裁判官だが、事件の経緯を調べるうち、自分はこの男を裁くべきではないのかもしれないという不安に駆られ始めた。
いったい何故だろう?
過去の実際のやりとりです。質問されたら参考に答えてください。
被告の職業は重要ですか?
No
男を裁くことで、裁判官に不利益はありますか?
No
よく思い出したら知ってる人っぽかったですか?
No
被害者が被告を裁くことは中立の立場の維持に不都合だと思いましたか?
No
「自分はこの男を裁くべきではない」とは、「この男は裁かれるべきではない」と同じ意味ですか?
No
裁判官は事件関係者ですか?
No
裁判官は仕事を離れていた理由は重要ですか?
Yes
5 自分ではない別の人が裁くべきだと思いましたか?
Yes 自分が裁くには不都合があると考えました。
ひき逃げは事故ではなく、男は誰かを故意にひき殺しましたか?
No
7 同じ理由で仕事を離れることは一般的と言えますか?
Yes
裁判官と男に何か繋がりがありましたか?
No
8 それは裁判官としての信念による判断ですか?
Yes? そういう言い方もできるかもしれません。
6 事件関係者が知り合いにいますか?
No
裁判官が仕事を離れていなければ、ひき逃げは起こりませんでしたか?
No
7 問題を起こしたからですか?
No
裁判官は産休か育休で休んでいましたか?
No
10 出産を経験した裁判官は、身重の妻を病院に連れていくためにひき逃げを引き起こした被告に同情してしまい、裁判官としての中立を維持できないと考えましたか?
No しかし、中立を維持できないと考えました。
しばらく仕事を離れている間に道交法が代わり、それを詳しく把握していない自分ではきちんと裁けないと思いましたか?
No
17 それは感情的な理由からですか?
Yes
17 裁判官は自分は被告側を贔屓してしまうと考えましたか?
Yes その可能性があると考えました。
裁判官は入院もしくは療養していましたか?
Yes!
17 被告がひき逃げを起こしたことによって、結果的に裁判官は利益を得ている立場ですか?
Yes!
強盗事件でも成立しますか?
Noかな? イメージしづらいと思います。
裁判官は同じ犯罪に手を染めたことがありますか?
No
職務を離れいてた理由と、事件の経緯に、心情的な部分も含めて何かの共通点を見出しましたか?
No
仕事を休んでいた期間は三日間で成立しますか?
No
ひき逃げをした男には何かしらの事情がありましたか?
関係ありません
裁判官とひき逃げは同じ病気を患っていますか?
No
被告がひき逃げをした理由と裁判官が職務を休んでいた理由は同じですか?
No
アルコールは関係ありますか?
No
ひき逃げ事件の被害者について掘り下げることは必要ですか?
Yes
轢き殺された被害者から裁判官は臓器提供を受けましたか?
Yes!!! (厳密には、そうかもそれないと思い至りました)
20 刑を軽くしてしまう恐れがありましたか?
Yes
男も何かしらの病気を患っていましたか?
No
裁判官と轢かれた通行人に接点はありますか?
Yes
被告がひき逃げをした場所は関係ありますか?
No
核心32 そしてその考えに至った結果、ひき逃げ犯が命の恩人であるかもしれないと考え、中立を維持できないかもと判断したのですね?
お見事‼
核心32 ひき逃げの被害者は死んでおり、その事故が自分の臓器提供者が突然現れて手術した日と同日であったことに思い至った裁判官は、ひき逃げ事故のおかげで自分の命があるかもしれないという考えが判決に影響するかもしれないので、自分以外が裁くべきだと思いましたか?
その通り!
35 ひかれた通行人は裁判官の肉親ですか?
No
核心35 被害者は死後臓器を提供する意思を示しており、死後その意志は尊重された。裁判官はそれと同時期に臓器移植を受けたが、誰の臓器かは明かされなかった。裁判官は被害者の血液型が自分と同じだったので、被告のおかげで自分は職務に復帰できたのでは?と考え、自分はこの事件を裁くべきではないと考えた。ですか?
Yes
核心裁判官がひき逃げ事件の調査をする中で、自分はひき逃げに遭った通行人の臓器を提供されたことに気付いた。結果的に男がひき逃げしたことで自分の命が救われたようなものなので、裁判官は公平に裁けないと思いましたか?
Yes
答え
そして今。
裁判官の目の前には、担当する轢き逃げ事件の経緯をまとめた資料がある。
資料によると、被告の男は車で通行人の女性をはね、適切な措置を取ることなく現場から逃走。女性は病院に搬送されたが、処置が遅れたことも災いし、程なくして脳死の判定がなされたという。
その後……女性が事前に意思表示をしていたこともあり、いくつかの臓器が移植に使われたそうだ。
どの臓器が誰に移植されたのか、それは資料には記されていない。調べる術もない。だが……。
裁判官は考える。
タイミング的には、自分が手術を受けた時期とちょうど一致するのではないか?つまり……移植に使われた肝臓は、この女性のものだったのではないか?
裁判官はさらに考える。
では……もし男が事件を起こさなければ、自分はどうなっていたのだろう? あるいは事故を起こしても、その場ですぐに救急車を呼んでいれば? 女性に何事もなければ、無事に助かっていれば……自分はどうなっていたのだ? 未だ病院のベッドの上か、あるいは……。
つまりこの被告の男は、結果的に自分にとって命の恩人なのではないか?
確かめる術はない。まったくの思い過ごしかもしれない。だが、思い過ごしだと言い切ることもできない。裁判官の脳裏を、苦しい闘病の記憶がよぎる。己の体はいつまで持ちこたえるのか、果たして明日の朝は来るのか、不安に震えて眠る夜……。
命の恩人かもしれないと思いながら、男を、男の罪を、客観的に裁くことができるだろうか? 冷静に、公正に裁判を進められるだろうか? 事件を起こしてくれてありがとうなどと思わないでいられるだろうか?
それとこれとは別だと、頭ではわかっている。だが、そう割り切って考えられるか、裁判官は自分に自信が持てなかった。客観的に裁判を進められる自信が持てない以上、自分はこの被告を裁くべきではないのかもしれない……。裁判官は頭を抱えた。
【要約】
臓器移植によって病気療養から復帰した裁判官。轢き逃げ事件の経緯を調べるうち、この事件の被害者が自分に臓器を提供したドナーである可能性に思い至る。結果的には、ある意味で被告の男によって命を救われたとも言えるかもしれない。そう考えた裁判官は、自分が冷静に、客観的に被告を裁くことができるか、自信が持てなくなった。
— SpMR
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