彼はずっと、笑ったままだった。
私はたまらず泣き出した。
一体なぜ?
【ウミガメ】


彼は死んで私が謝っているのは彼の遺影だからですか?

no

彼は私に殺されましたか?

no

他に重要な登場人物はいますか?

no

1より、彼は「イエ~イ!」と言っていますか?

no

私はこれから自分の身に起きる事で泣いておりますか?

no

彼は笑いたくて笑っていたのですか?

no [良い質問]

二人は健康な状態ですか?

yesno [良い質問]

二人の精神は安定していますか?

no?

死んでいる登場人物はいますか?

no

彼が笑いを止めることは可能ですか?

no [良い質問]

彼は表情を変えることはできますか?

no [良い質問]

私と彼の関係が赤の他人でも成立しますか?

血のつながりがなくてもという意味ならyes

二人とも人間ですか?

yes

私は彼に謝らなければならないようなことをしましたか?

yes

私が泣き出したのは悲しみからですか?

no

この女は男を何かの事故に巻き込みましたか?

yes! [良い質問]

彼はいわゆる植物人間ですか?

no

私は何か犯罪を犯しましたか?

yesno [良い質問]

彼は何らかの病気を抱えていますか? [編集済]

no

その男が笑えないのは精神的に障害を受けたからですか?

no

その男が笑えないのは表情筋に障害を受けたからですか?

yes! [正解]

16 交通事故ですか?

no

彼は手足を自由に動かせますか?

yes

私は感情から泣いているのですか?

yes

毒は関係ありますか?

no
「うん」
いつもの部活動。
いつもの化学室。
いつもの友達。
私は怠慢を犯した。
瓶の蓋をきつく閉めてからそれを運ばなければならなかったのだ。
でも、そうしなかった。
悪気があったわけじゃない。
私は、自分が薬品を計っていたテーブルを離れ、彼が実験を行っているテーブルの横を通って、薬品棚に向かおうとした。
瓶の蓋を閉めかけながら。
かくん、と突然体が揺らいだ。
「きゃっ……!」
「え?」
視界の隅には黒い通学バッグ。
私が置いたものだ。
瓶が手から離れる。
彼が反応してこちらを向く。
瓶の中の液体がこぼれ、ぱしゃん、と少年の顔にかかった。
「ア」
私は、すぐに動くべきだった。
けれど恐怖心が私の脚を床に縛り付けた。
「あ、アァ、ァアアアアアアア"ッ!!!!!」
耳をつんざくような悲鳴。
ガタン、と大きな音を立てて、彼が椅子ごと倒れた。
「ア"ッ……ア……ッ」
「あ……」
床に飛び散った液体とガラス片。
肉が焼けるにおい。
硫酸が彼の肉を焼くにおい。
彼は手で顔をおさえるようにしてのたうちまわった。
彼がやっとの事で立ち上がり、テーブルに備え付けられた蛇口へ手を伸ばした時になってようやく私の体は動いた。
化学室から飛び出し、先生を呼びに行った。
彼は、私が呼んできた先生や悲鳴を聞いてやってきた先生によって車で病院に運ばれた。
私は、床にへたりこみながら、それを遠巻きに見ていることしかできなかった。
そして私は、今病院の病室にいる。
目の前には、右頬に大きなガーゼをつけた少年。
「私の不注意で……ごめんなさい」
私は深く頭を下げ謝った。
「顔あげなよ」
「……」
ゆっくり体を起こした。
「ごめんなさい……」
視線が、自分の足元と彼の顔を行ったり来たりする。
彼の顔、というより……。
「……気になる?」
「え……」
「ガーゼの下」
「……」
彼は少し間を置いた。
「……見る?」
「……う、うん……」
わたしのやったことだ。
逃げたらだめだ。逃げたら……。
そして、ガーゼの下から現れた顔を見て、私は息を呑んだ。
彼の右頬は赤く爛れ、引きつっていた。
まるで、片頬を吊り上げ笑ってるみたいに。
「……ほ、本当にごめんなさい……!」
私はまた、バッと頭を下げた。
「いいってそんなに謝んなくて。目にはかからなかったし、男の顔だからさ」
「ごめんなさい、ごめんなさい……!」
「だからほら、頭あげなってば」
「……」
言われた通りにした。
やはり彼の口許は笑ったままだ。
「……ごめんなさい……」
声が震える。
「なんで泣くの?」
「……」
彼の声は平坦で、怒りも悲しみもうかがえない。恨みも。
しかし私は、彼の冷たい目から逃げるように、また頭を下げてしまった。
【要約 不注意で「彼」に硫酸をかけてしまった私は、そのことについて謝罪をしていたが、酷いケロイドで常に笑っているような口許になった「彼」への申し訳なさといたたまれなさに耐えられなかったから。】