ウミガメのスープ

仲間はずれなんて存在しないという水平思考

作者: ししゃも

カメコは勉強をよくしていたせいで、宿題の答えが分からなかった。
野球部のカメオに尋ねてみると、カメオはあっさり答えを教えてくれた。

どうしてカメコはカメオよりも勉強していたのに、答えが分からなかったのだろうか?

出題者が、解き手の進み具合に応じて上から順に出すためのヒントです。

ヒントはまだありません。

過去の実際のやりとりです。質問されたら参考に答えてください。

野球部ではなくサッカー部であっても成立しますか?

イエス!  カメオが何部でも成立します!

家で夜遅くまで勉強していたので学校の授業では寝ていましたか?

ノー カメコは家でも学校でもしっかり勉強しています

部屋にこもっていたため、宿題の天気の観測を忘れましたか?

ノー! しかし、宿題は似た系統のものです!

視力は重要ですか?

イエス!!! 重要です!

カメオはカメコより年上なので、カメコのやっていた宿題の中身なんて余裕で理解できましたか?

ノー 二人は同い年という設定です

宿題は、学校の勉強の宿題でしたか?

イエス 学校の宿題でした

1 カメオが部活に所属していなくても成立しますか?

イエス! カメオを野球部にしたのは解説を書きやすかっただけで、FAにはあまり関係ありません。

カメオは野球部の顧問であり、教師なのでカメコに勉強を教えてくれましたか?

ノー カメオも学生です

カメコは眼鏡をかけていますか?

イエス! 普段はかけています

核心カメコが目が悪くて星がよく見えなかったので、星座の観測ができなかったのですか?

正解! その通りです!

勉強のしすぎでメガネっこなカメコは視力がよくないため宿題の問題がよく読めず、逆にカメオは視力がよかったので宿題の問題を普通に読めて解くことが出来ましか?

ノー でも状況が違うだけで筋は同じですね

答え

簡易解説

カメコがしていた宿題は実際に夜空の星座を目で見て書き写してくるというもの。
カメコは勉強をよくしていたせいで視力が低下しており、星を発見することができなかった。
一方、野球部のカメオは勉強をしたり本を読む時間が少なかったので視力が良く、あっさり星を発見することができた。

以下、駄文蛇足


「あれ、こんなところで何やってんの?」

学校近くの空き地で星空を眺めていると、部活帰りのカメオが通りかかった。

「何って、学校の宿題。ちゃんと夜空の星座を見て、ノートに書き写してきなさいってやつ。そっちは今帰り?」

「ああ、自主練してた。最後の夏だからな悔いは残したくない」

「……あっそ、ふーん、こんな時間まで大変だね。ねえこれって分かる?」

私は星座表を渡した。
三つの恒星を結んで描かれる『夏の大三角』と、その周りの星々をちゃんと目視して正確に写生してくるというのが出された宿題だった。

「ちょっと待って」

星座表を受け取った彼は、親猫を探す迷子の子猫のように空地をうろつくとやがて定まった方向に向かって手を伸ばした。

「ほら、あれが白鳥座。十字で大きいから分かりやすいだろ? そのすこし上にあるのがこと座。で、二つの星座から右に離れてるのがわし座だ」

「えっ? どれとどれがどれ?」

まったく分からない。
幼いころから無趣味だった私は暇な時間を勉強に費やしてきた。
そのおかげで学校の成績はいつも上位だったが、同世代の人たちと比べて視力が低下してしまった。
普段ならばさすがに星座くらい見えるのだが、今日はいつもと状況が違う。

「あれ? 眼鏡はどうした?」

「色々あって」

そう、私は今コンタクトレンズをつけているのだ。
普段使っている眼鏡ならば日常生活に支障はないのだが、装着しているコンタクトレンズは数年前の視力を参考にして作ったものだったので、ちゃんと度が合っていなかった。

「なんだ、壊れたのか? まあ、あんな牛乳瓶の底みたいなダサい眼鏡をかけるくらいだったら壊れちまった方がマシかもな」

「いつもそんな風に思っていたの?」

「あれ? 暗くて分からなかったけどリボンつけてるのか? 髪短いから意味ないだろ。なんでそんな無駄なことしてるんだ?」

「…………」

親友のカメミから彼が部活帰りにここを通ると教えてもらったので待っていたのだが、早くも私はその労力を後悔し始めていた。

「目いいんだね。街灯があるのにすぐ発見できるなんて」

「おう。視力には自信があるからな」

やる気を失ったのでいい加減に発した言葉だったが、カメオは予想以上に私の言葉を喜んだ。

「打球を追ったりストライクかボールか見極めるために視力が落ちないよう気を遣ってるんだ。いつも遠くを見るように心掛けてるし、小さい文字も出来るだけ読まないようにしてる。テレビゲームなんて絶対にしないんだ」

野球の話になった途端、カメオは真面目になる。
さっきもそうだ。
そして私はドギマギして素直に言葉を出せなくなる。
普通に話している最中、真面目になるのは止めてほしい。
卑怯なのだ、普段とのギャップが激しすぎる。

「だから成績悪いんだね。教科書読まないから」

「おいおい、それは言わないでくれよ。でも、まあ、そういうことだな」

カメオは可笑しそうに笑った。

「ほら、あれが白鳥座だ。分かるか?」

彼が、星座表を私の前に掲げた。
二人で覗きこむ形になったので、お互いの顔の距離がグッと近づいた。
言葉と言葉の間の、普段は聞こえない彼の息遣いが、耳元で聞こえた。

「あ、あの、白鳥座の『デネブ』って可哀想だと思わない? 一人ぼっちで」

私は慌てて彼から距離を取った。
不意打ちで近づくのも卑怯だ。
こちらは心の準備が出来ていない。

「うん? どういう意味?」

「夏の大三角を形成している星は白鳥座の『デネブ』、こと座の『ベガ』、わし座の『アルタイル』だけど、この中で『アルタイル』と『ベガ』は七夕の『彦星』『織姫星』でもあるんだよね」

『アルタイル』と『ベガ』は、七夕伝説における惹かれ星同士。
つまり、夏の大三角の中で『デネブ』は一人余ってしまうのである。
カメオは私の言いたいことを理解したのか、ああと声をあげた。

「でも、そんなのって余計な心配じゃん。見てみ」

カメオは夜空を見上げた。
私もそれに倣う。

「ほら、星なんていくらでも輝いてるんだ。この中で一人ぼっちになることなんてありえねえよ。夏の大三角なんて小さい括りにこだわるからダメなんだ。星と星を線で結ぶだけで、そいつはもう一人じゃなくなるんだからさ」

『アルタイル』と『ベガ』は線と線で繋がっている。
だったら、『デネブ』も他の星と繋がればよかったのだ。

「そっか、そうだよね」

このとき、私はカメミのことを考えた。
私とカメオとカメミの三人は、昔からずっと一緒だった。
控えめな私、わんぱくだったカメオ、そしてそんな二人をいつも一歩離れたところで見守ってくれていたカメミ。
同い年だけれど、お姉ちゃんとはこういうものなのだろうなとずっと思っていた。
今日だって、カメミが背中を押してくれなかったら私はここに来ていなかっただろう。

「そう言えばカメミはどうした?」

急にカメオはそう言った。

「ほら、オマエとカメミはいつも一緒にいるイメージがあるからさ」

「そうかな」

私は複雑な心境だった。
私とカメオが同じことを考えていたのは嬉しかったが、その内容が同世代の女の子だということが不満だった。
我ながら我儘なものだ。

そのとき、私の携帯電話が震えた。
ごめんと断りを入れて確認すると、カメミからのメッセージが届いていた。
『結果どうだった? 教えて』
短くてシンプルで、カメミらしいメッセージだった。

「誰から?」

「あ、えっとカメミから。ちょっと夏風邪ひいたみたい」

正直に言うわけにもいかなかったので、適当に誤魔化そうとした。

「マジで? そりゃ大変じゃん」

カメオの反応を見て、私は自分のミスに気がついた。
しっかり者のカメミが体調を崩すなんて、余程のことだ。
そんな報告を受けたら、私だってカメオと同じ反応をするだろう。

「よし、お見舞いに行こうぜ」

「ちょ、ちょっと待って。今から行ってもいいかカメミに聞いてみるから」

私はカメミにメッセージを送信して現状を伝えた。
返事はすぐに来た。
ただ一言、『意気地なし』とだけ。

うん、やっぱりカメミらしいシンプルなメッセージだった。

「カメミ、何だって?」

カメオはもうカメミのところへ行く気になっている。
どうすればいいのか悩んでいると、カメオの携帯電話も震えた。

「おっ、カメミからだ。なになに、『来るな鈍感』? なんだこりゃ、ふざけんな」

カメオは携帯電話を地面に叩きつけるような素振りをした。
さすが野球部だ、風きり音が違う。

「なんで見舞いに行こうとして鈍感扱いされなくちゃいけないんだ。アッタマきた。もうカメミのことは放っといてここでその宿題終わらせようぜ」

「うん」

星座表は一枚しかなかったので、私たちは再び顔を近づけ覗きこむ形になった。
しかし、私は動揺しなかった。
あらかじめ覚悟が出来ていれば、カメオの接近くらいどうってことないのだ。
あらかじめ覚悟が出来ていればだけれど。

私はカメオの隣でノートに描いた『アルタイル』と『ベガ』に線を引きながら考えた。
もし、カメミが私たち以外と線を結ぶときが来たならば、そのときは全力で手伝おうことにしようと。
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