ウミガメのスープ

ある探検家の手記

作者: 黒井由紀

転がる大岩を避け、そこかしこから湧き続ける蛇や蜘蛛や百足を退け、人ひとりやっと通れるような狭い通路を抜けて、ぼろぼろになりながらもたどり着いたそこは、どうやら小さな部屋になっているようだった。
薄暗い中でかろうじて見えたランタンに、つま先立ちでマッチの火を灯すと、部屋中が美しい輝きを放ちだした。
部屋中に散らばる貴金属たちが反射した光を、宝石が色とりどりに拡散して、まるで夢のような光景であった。
それを見た私は、財布を持ってくるべきだった、と後悔した。
ここに何かがあるということは知っていたから、ここにあるすべてのお宝を十分詰められる大きさの袋を持ってきていたし、いざとなれば服のポケットにだって入れられるというのに、一体なぜだろうか?

出題者が、解き手の進み具合に応じて上から順に出すためのヒントです。

ヒントはまだありません。

過去の実際のやりとりです。質問されたら参考に答えてください。

いいえ

財布に入っている何かが重要ですか?

NO. 財布の中身は重要ではありません。

いいえ

財布の、お金を収納する以外の機能が必要でしたか?

NO! 重要なのは、財布のお金を収納する機能です。

はい

宝石や貴金属の反射光といった、目に見えている光景は重要ですか?

YES. 割と重要ですが、「反射光」については掘り下げなくて大丈夫です。

何かをすることで、財宝が財布に収納できるようになりますか?

YESNO. 「何か」をせずとも、財宝の一部は財布に収納可能です。

はい

目に見えている財宝は、映像とかではなくて本物ですか?

YES. 本物の財宝です。

財布を持ってきていれば、財宝をすべて我がものにできましたか?

YESNO! 「すべて」我がものにすることはできませんが……

服のポケットには入れられないが、財布になら入れられる、というものがあるのですか?

YESNO! 服のポケットにも、入ることには入るのです。が…… そろそろまとめられますか?

財布とはガマ口のことですか?

財布の形状はあまり関係ありません。ガマ口なら問題なく成立します。

いいえ

帰り道が通って行けなくなるため、金でヘリを呼びますか?

NO. 帰り道は袋を薄くなるように持つなどして通れたものとお考えください。

いいえ

財布がお弁当箱でも成立しますか?

NO! お弁当箱ではダメです!

財宝の中に現金が含まれていたので、他の財宝と別にした方が使用するとき便利だと思ったのですか?

前半はYES!ですが、後半はNOです。

核心財布に入れたかったのは、小さいか薄い上に、もともと自分が持っていたもののように見せかけることができるからですか?

「もともと自分が持っていたもののように見せかけることができる」YES! ここが核心です。

はい

11 現金とは小銭ですか?

YES. 金貨や銀貨です。

いいえ

さらなる財宝の地図を発見しましたか?

NO. むしろ宝の地図だと、財布に入っていても言い逃れができなさそうです。

はい

指示した人間に上納すべき宝を少しでも減らしたかったのですか?

YES! 解説では一緒にダンジョンに入った仲間たちですが、大体そんな感じです。

いいえ

現金だけ財布に入れて持って出れば、誰かに見つかっても財宝泥棒だと言われずに済むと思いましたか?

NO. 15の通り、宝の一部を渡すべき人間の取り分を減らし、ひいては自分の取り分を増やしたかったのです。

いいえ

現金と一緒にポイントが貯まるシステムだったのに、ポイントカードを忘れてしまいましたか?

NO. 新宿駅やショッピングモールではなく、昔ながらのダンジョンでのお話です。

答え

忙しい人のための三行解説:狭い通路だったので、パーティーを代表して宝部屋へ行った小柄な盗賊。宝をネコババしたいと思ったものの、持ってきた袋はネコババには使えないし、ポケットに入れても、ポケットに何か入っていると分かった瞬間ネコババがばれてしまう。財布があれば、宝の中にあった金貨や銀貨を入れて、最初から自分が持っていたお金であるかのように偽装できたのに……。

「おーい、どうだった?」
宝を持って狭い通路を戻ると、勇者のよく通る声が響いた。
「……あんたたちの予想通り、宝部屋だったよ」
私は、そう言って宝の詰まった袋を掲げて見せた。
「シィフ、どうしたの? 機嫌が悪そうに見えるけど。回復魔法かける?」
「疲れただろ、肉食うか?」
魔法使いと格闘家が声を掛けてきたけど、私の不機嫌の理由は、そんなところにはなかった。
「あの細道は、ただ細いだけで特に罠とかは無かったよ。まあ、私でもキツいくらいには狭かったけど」
宝部屋への道は狭すぎて、重装備の勇者や、筋肉の塊の格闘家には通れなかったし、魔法使いも長い杖が引っかかるということで、一番小柄な盗賊の私が一人で先に進むことになっていたのだ。
狭い通路を一人で抜けたし、宝部屋の全貌を見たのは私一人だし、何といっても私は盗賊なのだ。宝部屋を見た瞬間、ネコババしたい欲がむくむくと頭をもたげてきた。
だけどそこで、私は致命的なミスを犯してしまった。できるだけ身軽な方がいいと思って、鍵開けの道具以外のすべての持ち物を、勇者たちに預けてしまったのだ。
持ってきた袋に詰めた宝石は、どうせパーティーの全員で山分けだし、ポケットに入れても、
「そうだ、シィフ。ポケットになんか入れてない?」
「い、入れてる訳ないでしょ? ほら」
「じゃあ、ちょっとそこで跳んでみてよ」
「勇者の癖になんて欲深いんだコイツは……(ぴょんぴょん)ほら、何もないってば!」
こんな風に、業突く張りで疑い深い勇者に見抜かれてしまう。
でも、財布さえあれば、宝部屋の金貨や銀貨を詰められるだけ詰めて、「これは元々私が持ってたお金なんだけど?」としらばっくれられたって言うのに! 私のドジ! バカバカ!
「まあまあシィフ、いいじゃない、これだけあれば今日は沢山飲めるわよ?」
「私、別に飲みたい訳じゃないし……ていうかウィッチ、心読まないでよ!」
「あらあらうふふ、顔に書いてあったわよ? まあそれはともかく、帰りましょうか。デスルーラ!」
「ちょっと待った、その呪文違……」
私たちの視界は暗転した。その後のことは……語ってもしょうがないので伏せさせてもらうことにする。
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